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続15 チャンスtoチャイム

木曜日、米太郎と一緒に行った水川追跡の翌々日、一人で水川追跡を行いバレた翌日。昨日のストーキングで水川の秘密を知ることが出来た。が、それは予想を遥かに上回るとんでもない驚きの内容だった……まさかの事実で口があんぐり状態、心臓のドキドキが止まらないといった感じだ。だって、まさか……な真実だったから。あの水川が俺のことを意識していた時期があっただなんて。友達、部活仲間として付き合ってきた水川だが実は俺のことを……とかマジかよ!?って未だ信じられない。けど事実みたいだ。そして昨日はそのまま水川姉妹にご飯を奢って解散となった。「このこと佐々木や恵に言ったら承知しないから」と水川に脅された挙句なぜか俺がご飯を奢ることに……逆口封じと言った感じだな。一昨日の矢野にも奢って、最近なんか財布からどんどんマネーさんが落ちている気がする。高校生の財布事情というものは年中厳しい状況であり、二日も続けてファミレスでご飯を奢るとか自殺行為にも程がある。俺が別荘を持つ超お金持ちなら話は別だが、こちとらザ・庶民の称号を背負いし至極普通の一般高校生だ。今日から来月までジリ貧生活を送らなくてはならない……はぁ、バイトでもしようかなー。


「で、水川の秘密とやらは分かったのか?」


学校に来れば開口一番キモイ顔の米太郎が興味ありげに近寄ってきた。今日も口からは漬け物の臭いがプンプンだ。うわ臭い、口の中に消臭剤をぶち込んでやりたいぜ。


「悪いな米太郎、実は水川に追跡がバレてな」

「マジか」

「秘密は知れたけど本人に口止めされて言えないんだわ」


もしバラしたら俺自身がバラされそうだ。物理的な意味で。


「ふーん。まあ恐らく一年前くらいに水川が将也のこと好きだったとかそーゆーことだろ?」

「なんで分かるんだよっ!?」


出たよ米太郎クオリティ。こいつの予想は予想通りかよ! って、あれ変なツッコミになった? とにかく! なんで米野郎はこんなにも勘が鋭いんだよ。どこの名探偵だコノヤロー。前々からずっと思っていたけど周りを観察する才能はピカイチだなこいつ。どうして分かるんだよ、つーか今の口ぶりからすると米太郎の奴、もしかして一年前から知っていた?


「お、その反応は。どうやら俺の推測通りだったようで」


しまった、思わずリアクションしてしまった。おかげでバレた。ヤバイ、バラされる、体を!


「くそっ、ライス太郎のくせに。どんだけ鋭いんだよ」


あれだな、お前の将来は決まったわ。農業しながら副業で探偵すればいいと思う。犯人が逃げたらキック力増強シューズでカボチャ蹴って倒せばいいし、なかなか向いているんじゃないかな。推理も収穫も新鮮さが大事! おお、キャッチコピーまで思いついたよ。とか好き勝手に米太郎の将来を思い描いていたら目の前のライス君は溜め息をつきながら肩をすくめていた。何その呆れたような態度は。もっと探偵らしくしろ。


「あのさぁ、お前さんはあの春日さん火祭といった二大美女を落とした人物なのよ。そんな奴を水川が好きになっても全然おかしくないだろ」


そう、なの? 俺ってそんなモテ男になった記憶はないですよ。去年のバレンタインも水川しかチョコくれなかったし、下駄箱にラブレターとか生涯まだ一度も体験していない。そんな俺がモテていると言えようか、いいや言えない。……ま、まあ春日と火祭については……ゴホン、今になって振り返ると、ある程度フラグを建てていたような気もする……たぶん。誘拐犯や不良と戦って恥ずかしい台詞を叫んだりした。確かに春日や火祭に関しては心当たりがある。けど水川にフラグを建てた覚えは全くない。それなのに超一時的にとはいえ水川まで俺なんかに好意を寄せてくれていたとかびっくりでしょ。こりゃもうモテ期三回使ったどころか来世の分まで前借りしたんじゃないだろうか。うわ、来世どうしよ?


「つーか米太郎やっぱ鋭いな」

「いやいや、近くで見ていればなんとなく分かるって」


随分簡単に言ってくれるじゃないか。


「将也に知られたくない水川の秘密=そーゆーこと。まあ妹ちゃんまで将也に惚れるってのは予想出来なかったけどな」


ああ、美保梨ちゃんね。なんでか俺のこと慕ってくれているんだよなー……嬉しい限りです。おまけに俺のことカッコイイとか言ってくれた。女の子にそんなこと言われたの久しぶりだわぁ。にしても自分の姉から聞いた話と見た目であんなにも親しく抱きついてくるのは小学生らしいってことなのかな? あの年頃特有の感性というか、ワイルドな高校生に憧れているみたいな感じ? ちょっとした麻痺状態になる通称『年上がカッコ良く見える症候群』だろう。おかげでファミレスで食事している時も隣でベタベタされて参ったなぁ、ははっ。


「ったくホント将也はモテまくりでいいよな。普通にムカつくわ」


眉間に十数本のシワを寄せて怪訝な顔つきで睨んでくる米太郎。モテない男の嫉妬ほど哀れなものはない。なんと可哀想な奴……醜いなぁ。


「そんなゴミ虫を見る目で見んなよ」

「はいはいごめんねゴミ虫太郎」

「名前違う!」


テンション高くツッコミを入れてくる米太郎。今日も安定のキモウザお米君で何よりだよ。さて、今日も一日寝ながら頑張りますか。


「……兎月」


ふと、誰か俺の名前を呼ぶ声がした。それはまるで、荒野を放浪する衰弱した旅人に天から女神が優しく息を吹きかけるように、癒しの息吹を送り届けるように、旅人の疲弊した心と体を熱く溶かして甘く撫でてくれるように、それはそれは綺麗で澄んだ愛しの声が聞こえた。濁った臓器を濾過酸素で洗浄された気分だ。なんつー過剰な表現、語彙力のなさが露見した微妙な表現ですが、とりあえずは声のした方へと視線をサッと向ける。声が聞こえた方向、それは教室の扉の方で、サッと見えた黒髪のサラサラな長髪……あの天女の如く清らかな天の川ヘアーは……あの人に違いない。そう、俺が見間違えるはずがない。今……ドアの近くにいたのは、今……俺の名前を呼んだのは……


「……悪い米太郎、ちょっと一組行ってくるわ」

「悪い将也、チャイム鳴ったぞ」


そんな米太郎の声もキーンコーンカーンなチャイムの音によって中途半端にしか聞こえなかった。代わりに自分の心臓の音がザワザワと怒りと苛立ちで騒ぐ音はよく聞こえた。くそぅ、いつも授業中はその軽快なメロディが奏でられるのを今か今かと心待ちしているが、今回のタイミングは相当ムカついたぞ。なんで鳴るんだよ、もうすぐ朝のホームルームじゃねぇか。会いに行けないじゃないかっ! あぁ! なんで! どうして! 畜生っ!


「……いや、関係ねぇ」

「ちょ、将也どこ行くんだ。もうすぐ先生来るぞ?」


だから関係ねぇよ。今の俺にとっては、そんなこと些細なことでしかない。それ以上に大切なことがあるんだい!


「全員、席に着け。ホームルーム始めるぞ」

「先生、腹が痛いので一組行ってきていいですか?」

「兎月、腹が痛いなら保健室に行け。いや行くな」






「……え、まだ春日さんと仲直りしてないのか?」


結局、担任に邪魔されて一組に行くことは叶わず。こうやって無駄にしか思えない朝のホームルームを米太郎とコソコソ会話しながらテキトーに受け流している。あと少し、もう少しだけ時間があれば良かったのに。そしたら一組に行けて、春日を追えて、きっと、また元通りになれたはず……。そう、先ほど俺の名前を呼んだのは間違いなく春日。つーか恋人の声を聞き間違えるはずがない。呼ばれて声の方向を振り返れば春日は踵を返してまるで逃げるように一組へ帰っていった。……恐らく、名前を呼んだだけで話しかけようとはしてなかったのだろう。ただ名前を呼んでみたかった、一瞬だけでもいいから俺に意識を向けたかった。そんなところだろ、最近の様子を見る限り。……ずっとこんな調子で二人の距離が縮まらないでいる。だからさっき名前を呼ばれた瞬間にでも春日の後を追って話しかけようとしたのに……チャイムのクソ野郎、いつか放送室に侵入してチャイム音をRPGゲームのファンファーレ音にしてやるからなっ。


「別に喧嘩はしてねーよ」

「だって最近のお前ら一緒にいるところ全然見ないぞ」


そうだ……思っていたより事態は深刻なのかもしれん。別荘での一件以来、春日が照れているようで距離を置かれていた。それは一時的なもので、すぐにいつも通りに戻ると思っていた。なのに……


「もう四日も喋っていない」

「マジでか」


マジでだ。なんて言うんだろう? 別荘で接近し過ぎた反動で春日が俺を避けていた。それは照れによるもので時間が経てばすぐに元通りになる。それが……まだ会話も出来ていないなんて……。完全にタイミングを見逃した。時間が空き過ぎてお互いどっちが先に話しかけてくるのか見計らって何も出来ない状態でいる。そして四日が経った……。通学は別々で昼休みも別々……話しかける機会を見逃しただけでこんなことになるなんて……ぐすん。ここ最近は、さっきみたいに春日がスキンシップとは到底言えない微妙なアプローチをしてくる程度だ。名前を呼んで逃げたり、目線を一瞬だけ会わせて目を逸らしたり、春日からの電話に出れば一秒で切られたり………春日、仲直りする気あるの? そして俺からは何も出来ないでいる。い、いや待って、何もしてないってわけじゃないから。ちゃんと俺なりに春日と仲直りしようと努力して何度も話しかけようとしたんだけど、俺の方から何かアプローチすると春日が徹底的に逃げるんだよ。そりゃもう無視どころの騒ぎじゃない、完全なる逃避だ。言うならば意識しての無視。なんと矛盾した無視だろうか、そして切ない……。今週はこの調子がずっと続いている……いつになったら仲直り出来るのやら。


「へいへい将也~、もう別れるんじゃないの~?」

「……」

「将也?」


わ、か、れ、る……別れる……ワカレルの? 俺と春日が……


「ちょ、将也!? 顔が真っ青だぞ。お、落ち着けって」

「はハは……俺モう駄目ダワ……シンデシマオウ」

「あかん、生気がまるでない! 将也ーっ!」


はは、モウ駄目カモシレナイ……ガアァァアぁッ……


「おい兎月と佐々木、うるさいぞ!」

「先生、将也はそれどころじゃないんです!」

「センセイ、ハラガイタイノデイチクミ逝ってイイデスカ?」

「将也、カタカナ読みにくいから普通に喋って!」


ぐ、おおぉぉおっ……俺の馬鹿野郎! 水川を追跡する暇があるなら春日と一緒に帰るべきだった仲直りするべきだった。あ、あ、ああぁぁあぁぁあぁん……今更どうしたらいいんだろう。


「なあ米太郎」

「お、おう戻ったな。どうした?」

「タイムマシンってどこで売ってるかな……中古でいいからさ」

「売ってないから! ましてや中古なんてないから!」



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