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続14 真美ちゃんのちょっとした真実

誤字が多々あります。ホントすいません。


そして微妙なところで終わります。ホントすいません。

開いた口が塞がらなかった。呼吸は止まり、心臓は止まり、全ての臓器が一時停止して思考すら機能してくれない。小学生が無邪気に正門を駆け抜けていく音も、晩秋の冷たい風が肌を強く撫でる低温の音も、何もかも音は消えて無音の世界が俺の周り四畳半を支配していた。茫然自失、その言葉が似合う状況だと、そんなまともな思考が出来たのは体内時計の感覚で一時間程経った後だった……一時間だなんて、四畳半の外では一秒にも満たないであろう数瞬のことだろう。しかし意識すらも静止してしまったこの場では、この数瞬を巡るのに果てしない時の流れを航海したかのように、長々と沈黙と気まずさと異様な鼓動の高鳴りが停止した体を激しく叩きつけられて、何が何だか分からないでいた。今……この耳に、届いた内容は……ほ、本当のこと、なのか……?


「み、美保梨っ」


場が完全停止した数時間にも及ぶ数秒の後、意識を取り戻した水川が声を荒げて妹の美保梨ちゃんを俺から引き離す。さっきまでびくともしなかった水川妹を簡単に引き離すほどの力を出した水川。それはまるで、水川妹が言ったことが事実であることを裏づけているようで……。ただなんとなく気になって水川の後を追っただけのはずが、辿り着いたのは予想だにしない心臓突き抉るような衝撃的内容だった。嘘……あの水川が俺のことを……好きだった。


「あ、あの……水川?」

「……何?」


今、目の前に立つ水川は、これまでに見たことのない顔をしていた。いつも俺だけがおちょくられて、説教されて、気を遣ってもらって、いつもいつも水川は完璧な奴だった。明るくて元気で屈託のない笑顔が眩しい小悪魔チックの女子高生。そんな水川が、顔を赤らめて目を泳がせて口をパクパクさせているではないか。完っ全にパニクってる! ここまで典型的は動揺の仕方をするなんて……しかも、あの隙一つないパーフェクト水川が動揺している、焦っている! な、なんということだ……水川もこんな風に顔を赤くして混乱することがあるんだな……いや、待て。つーか待とう。水川の妹、美保梨ちゃん、だっけ? あの子……なんて言った……? み、水川が俺のことを好き……は、はい!?


「あー……えっと、水川? あのさ……っ、上手く言えないけど……とりあえず一言だけ言わせてもらっていいかな?」

「……」

「ごめん、俺もう付き合っている人いるから」

「知っているわっ! 誰のおかげだと思ってるの!」


はい水川のおかげですよねすいませんっ!











「言っとくけど、兎月のことが好きだったのは随分前のことだからね。それも一瞬のことだったし」


七色変化したみたいにグチャグチャに場の空気が変わりまくった小学校正門から場所は変わってとあるファミレス店。昨日、矢野と米太郎と一緒に晩ご飯を食べたファミレスと同じお店である。あの場所のまま詳細について語るには居心地とか悪いので場所を変更してファミレスに来たというわけだ。小学校からここまでの移動中は一切会話なし。目も合わせず黙々と移動しただけだった。そしてファミレスに着いてドリンクバーやら注文を終えた後、開口一番で水川が言った台詞がこれである。


「……そ、そっか」

「兎月は鈍感だから分からなかっただろうし、これは佐々木にもバレてないと思う」


さっきまでの赤面で動揺していた可愛い水川は何処やら、不機嫌そうにこちらを睨んでくる。なんか俺が悪者みたい。え、これって俺が悪いの?


「……ちなみにいつ頃だったの?」

「去年の冬くらい。それが? 何か?」

「い、いえ何も……」


す、すげー淡々と質問に応じる姿はなんか怖いっす。つーか怒ってるし。何やら苛立っているようで机を指で何度も連打している。すごーく苛立っている。今にも殴りかかってきそうで怖い……。どうしよ、普通に腹減ったから和風ハンバーグセット注文したけど、下手したら奪われて熱々の鉄板で殴られそうだ。店員さんが持ってくる前になんとか水川の機嫌を直さないといけない。


「お姉ちゃんね、いつも兎月さんのことばっかり話していたよー」

「み、美保梨っ、余計なこと言わなくていいから!」


そして妹の美保梨ちゃんがドリンクバーから戻ってきた、最悪の相槌と共に。今の言葉で水川が声を荒げて顔を赤くしている。照れているようだが、それと同時に俺への怒りで沸騰しているようにも見える。ヤバイ、なんか水川の不機嫌オーラが増した。ちょ、水川妹よ、お願いだからこれ以上あなたのお姉さんを怒らせないで。なんて願いも叶わず、


「お姉ちゃん兎月さんの名前出すとデレデレしていたよね」

「お待たせしました、和風ハンバーグセットです。鉄板熱くなっておりますのでご注意を」


うおおおおおぉぉ、なんつータイミングで持ってくるんだよ店員さあぁぁん!?


「……」

「ご、ごめんごめん! たぶん俺悪くないけどなんかすいまっせん! だから鉄板をこっちに向けないで!」


熱い熱い、熱っ!? 鉄板の熱気だけで十分に熱いからこれ以上こっちに向けないでください! そしてハンバーグが美味しそうっ。


「……はぁ、だから兎月には黙っていたのに」


不機嫌そうなのは相変わらずだが、ちょっとだけ落ち着いたようで大きな溜め息をついてドリンクバー専用のコップを手に持つ。


「美保梨、私と兎月の分のジュースも取ってきて」

「えー、自分で行きなよ」

「私はちょっと兎月と話すことあるから。あ、オレンジジュースお願い。兎月のはテキトーにミックスしていいから」

「はーい、分かりました」


とんでもねぇ命令を与えやがったな。小学生とドリンクバーの組み合わせは世界最悪配合の五本の指に入るほどの危険なものだって。色んな種類を混ぜて不気味な色をした飲み物を合成するんだから。純粋な心を持ったマッドサイエンティスト水川妹は無邪気に再びドリンクバーへと向かっていった。……まあ、何味か分からない甘ったるい液になるのがオチだし我慢して飲むか。


「さて、ちょっと二人きりで話そっか」


そう言って俺の頼んだ和風ハンバーグを勝手に食べ始める水川。意義を唱えようと考えたが、どうせ睨まれて縮まってしまう未来が予想出来たので黙って食されるのを見守る。二人で話すことと言っても……うーん、なんか、なんだろ? 水川が俺のことを好きだったというのは分かった。好き、だった。そう、過去形だ。さっき本人も言っていたが、それは去年の冬頃のことであって今の態度を見る限りどー考えても俺に気がある人とは思えない。意中の人の頼んだ料理を遠慮なしに食べるのをデレるとは言わないでしょ。……あと、がっつり食べるんだね。一口だけかと思ったら全部食う勢いじゃないか。しかし文句を言おうものならキレそうなので黙って見つめるしかない。あぁ、和風~。


「確かに兎月のことは好きだったよ。ちょっと本気で付き合いたいと思ってた」

「ごめん水川、俺にはもう心に決めた人が」

「だから知っているから! つーか今はもう兎月なんか好きじゃないし」


まあ俺のことまだ好きだったら春日の応援しないよな。つまり春日と出会う前にはもう俺のことなんか好きじゃなかった、というわけか。


「兎月はさー、最初はちょっとカッコイイとか思ったけど一緒にいるうちに分かったことがあるんだ」

「何?」

「ヘタレだってこと」


……その通りだから反論の余地がない。


「それでなんとなくだけど兎月は付き合う対象じゃなくて普通の友達でいるべきだと確信を持ったの」

「確信を持つぐらい俺ってヘタレだったの!?」

「私もっと頼りになる人が良かった。だから兎月のことはすぐ諦めた」


……恐ろしいほどくらいに淡々とした口調だな。なんか俺のことなんてもう忘れましたよ的な刺々しい言い方だ。ま、まあ友達として見てくれているから別にいいけどさ。


「お姉ちゃん、持ってきたよ!」

「ありがと」

「あれ、なんか俺のやつ生温いけど……」


おかしい、ドリンクバーだけ混ぜたなら全て冷たいから温くならないはず……。つーか色がグロイ! エイリアンの血液みたいな色してるぞおい。


「スープーバーのも混ぜてきた」

「出たよマッドサイエンティスト!」


試しに一口飲んでみると……うええぇぇ、生温くて不味い……。なんだこれ、昆布茶とコーンスープの味がするぞ!? うお、普通に吐きそうだ。


「それで最近の用事というのは、両親が旅行でいないから妹のご飯を作ってあげないといけなかったの」

「え、何? 矢野のところといい夫婦で旅行に行くのが流行っているの?」

「なるほど、矢野ちゃんに聞いたのか」


あ……ごめん、矢野。なんか口滑らしてしまった。


「美保梨は私が一時的にしろ兎月のこと好きだったこと知っているの。だから兎月と美保梨を会わせたくなかったから用事のことを兎月には黙っていたわけ」

「あー、なるほど……ん? どういうことだ?」


俺のこと好きだったのが俺にバレたくないから、そのことを知っている妹を俺と会わせたくなかった。そんなニュアンスでオッケー?


「あー、こんな恥ずかしい過去は絶対に漏らさないように頑張ってきたのに……これじゃあ恵に申し訳ないよ。まぁ、もうバレたからどうでもいいや。とにかく、このこと佐々木に言ったら殴るから」

「水川が俺のこと好きだったこと?」

「殴る」

「ちょ、痛い!?」


わ、分かりました。米太郎には言わないよ。つーか米太郎の奴、水川の秘密はある程度予想がついたとか言っていたけど、まさかここまで推測は出来ないだろう。いくら勘が良いからって、水川の隠された想いに気づくなんて末恐ろしいわ。好意を向けられていた俺ですら気づかなかったのだから。ま、俺は鈍感なので普通に気づかないだろうけどね!


「兎月さん、私の作ったジュース美味しい?」

「うん不味いよ」

「えー、ひどい」


そしてもう一つ問題がある。さっきから水川妹が俺にベッタリくっついて離れようとしない。それどころか腕を組んできた。おいおい、最近の小学生は淫らだと聞いていたがまさかここまでとは……。保護者はもっと正しい指導をするべきだぞ、という目線を水川に送ったが軽くスルーされてハンバーグセットを完食された。結局俺は一口も食べてないぞチクショー。


「あと、兎月のこと色々と話したら美保梨が兎月のこと好きになった」

「なんだそれ」

「えへへ、兎月さんカッコイイ」


嬉しそうに笑いながら俺の方を見る水川妹。ちょっとちょっとぉ、水川姉妹にモテモテじゃないか~。ははっ、こりゃ参った。


「だから私はもう兎月のこと何とも思ってないから」

「人の思考を読まないでくれ」

「ね~、兎月さん、あ~んして」

「それは先週やったから!」


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