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続10 ちょっと変な感じ

まあ色々とあったけど無事に一泊した後、朝になれば空は快晴のキラキラお日様が眩しく輝いていました。あのまま二人抱き合って寝て、そんで起きて二人で朝ご飯を食べて、そして別荘を後にした。とても充実した別荘での休暇でございましたよー。


「って感じかな?」

「将也……それはないぜ」


波乱万丈なウィークエンドも終わり、鬱な月曜日がやって参りました。やっぱり週の初めはしんどい、とか思ってる生徒が大半であろう。また今日から学校……金曜日が遠いぜ、なんて溜め息交じりのコメントがよく飛び交うよね。そんな月曜の昼休み、級友である佐々木米太郎君に週末の休暇のことを簡単に話し終えたところだ。米太郎の反応はあまり芳しくなく、眉間にシワを寄せてこちらを残念そうに睨んでくる。


「お前さー、なぜそんな最高の状況でヤらなかったんだよ。馬鹿だろっ!」


どうやら米太郎は俺が何もしなかったことに憤慨しているようだ。いや、何もしなかったわけじゃないが、米太郎の言いたいことはそういうことじゃなくて、要はアレでしょ? お前が封筒に入れてくれた物を使ってする行為を俺がしなかったことに怒っているんだろ。いやいや……それはもっと落ち着いた時とかにするものでさ、


「はぁー、これだからヘタレ将也は困るぜ。俺ならすぐに戦闘態勢に入るね。外が嵐なら中でも嵐で騒いでやるぜっ。俺の巨大タイフーンが春日さんの中で暴れぐっはあぁぁ!?」

「俺の春日を穢すなクソお米ライス太郎野郎」

「な、なんか名前ごっちゃになってるぞ!?」


うるさい、いいから黙ってろ。正当なる怒りを拳に込めて米太郎を殴り倒す。続いてもう一発、さらに一発、おまけで蹴りも加えて、


「痛い痛い! 無言で連続攻撃とかマジやめろよ!」


さすがに米太郎が怒った。けど知らん。こいつの脳内でとはいえ最愛の純白の天使を穢されたのだから俺だってキレますよ。てことでもう一発!


「ぐっはぁ……! フッ……友よ、良い……パンチ、だったぜ」

「今日も米太郎がウザくて何よりだよ」


バトル漫画的台詞を呟いた後、米太郎は机に沈んだ。さて、適度な運動をしたことだし昼食タイムといきますかー。あんパンとサンドイッチが俺を待っているぜっ。


「おっ、愛しのマイハニーが来ましたぜ」


なんてウザイ口調で米太郎が小突いてくる。確かに、教室の入り口から顔を出して中へと入ってきたのはマイハニーこと春日恵さん。いつもながらそのサラサラな長髪には目を奪われます。そして他の男子もチラチラと見ている。毎度のことだし、まあ見るくらいだったら許すわ。けど触ったりでもしたら本気でボコボコにしてやるからな! 最愛の天使を……ゴホン、まあそれはいいとして。お弁当箱を持った春日はいつも通り、ちょいとキツめのつり目の無表情でこちらの方へと歩いてきて、


「……」


無言で俺の横を通過していった。何も言わず、一瞬こちらを見ただけで、声をかけるどころか意識もかけず、黙ったまま俺の席を過ぎて行き、水川の席へと向かって行った。一瞬だけ、俺のことをチラッと見てすぐに顔を背けた。後ろから「あっ、恵も一緒食べよー!」と元気な水川の声が聞こえる。


「あれ? 春日さん、どしたの?」

「……さあ?」


後ろから聞こえる水川のキャピキャピした声をBGMにサンドイッチを頬張る。いつもなら二人で仲良くランチを楽しむはずだが、今日は何やら様子がおかしい春日さん。そう、今日の春日は変なのだ。別荘では甘えまくりでキャラ崩壊しかけていたが今日はまた普段通りの、いや普段以上に無言だった。朝もそんな感じ、登校中いくら話しかけても黙ったまま何も言わず何も蹴らずの完全沈黙状態。それが今もこうして続いているってわけだ。原因? それが分かったら苦労はしません。


「なんか朝からああいった様子でさ、すげースルーされてる」

「……将也よ」

「何?」


この時の米太郎の顔は、いつになく真面目そうにキリッとしていた。


「別れるのか?」

「もっとオブラートに包んでコメントしろやボケェ!」


ちょっと俺が心配してる不安要素をサラリと述べてんじゃねぇよ! こちとら朝からの変なギクシャク感に戸惑いながら不気味に揺れる心臓垂らして「俺何かやらかしたかな?」的な反省会を永遠繰り返しているんだい!


「え、いやどう見てもマジで別れる五秒前じゃん」

「テメーの顔面マジで殴る五秒前」

「オーケー、あと五秒ある。とりあえず落ち着こう、な?」


……いや、俺だってわけ分からないよ。チラッと春日の方へ視線を走らせる。……水川やその他女子と普通にお喋りしながらお昼を食べている俺の彼女さん。その顔はいつも通りの無表情でクールで上品で凛としていてまさにお嬢様って感じ。そりゃお嬢様だからお嬢様だよな、あー日本語って難しい! くそっ、テンションが制御できねーよコンチクショー。あーあー、なんで春日が俺を無視するのか分からねぇー。


「思ったんだけどさ」

「はいはい黙れ」

「さ、さすがにそれはないだろ!? 自暴自棄になる気持ちは分かるけど、せめて会話というツールだけは捨てないで」


うるさい声のボリューム上げるなテンション上げるな。なんかムカつくんだよ、なんか。


「将也、別れるって言われたところから機嫌悪くなり過ぎだって」

「黙れ」

「はぁ……。あのさ、思ったんだけど春日さんはきっと照れているんだよ」


照れている?


「そりゃー、二人だけの別荘スイートワールドを満喫したんだ。しかも春日さんの方は暴走したみたくの甘えっぷりだったんだろ? そんなことがあった後で普通に接しようとするのは無理だって。ぜってー意識しちゃうさ。それこそ照れて目も合わせられない程にな」


……な、なるほど。そう言われるとそんな気がするようなそうでないような気がするようでしないようでそうであってほしいような! つまり、世界一ピュアなキスよろしく主人(召喚士)と下僕(ガード)の甘く切ない恋模様的な? やっべ、もう一回スピラ冒険したい。……話逸れたから戻す。うーんと、いつも以上に甘えて喉元に噛みついちゃう。そんな春日さんと二人特に何もしなかったけど同じベッドで一緒に寝て一夜を共にして、さあ今日からはいつもの日常ですよー、とはいかないってわけか。あんな恥ずかしいことした後なのに顔なんてまともに見れないってことなのだろう、米太郎の言いたいことは。うん、そんな気がする。確かに恥ずかしいよね、カップルがやるステップを一気に二段階ほど登った気がするもん。そんなこと普通の奴らなら大したことないだろうけど、こちとら世界一ピュアなカップルなわけでティーダもビックリなわけで! 俺達にとっては大切で重くて一生の思い出になるってくらい素敵なものだったんですよ。そんなことがあったのに普通に接するなんて出来ないよな。あんなに甘えて抱き合ったことはまだ鮮明に残っているはず、その状態で俺の顔をまともに見れるはずないし会話なんて不可能だ。お昼ご飯一緒に食べるとかマジで無理、そういうことか。


「なーるほど、春日さんってば可愛いな!」

「……黙れ」

「おっと、将也も思い出して恥ずかしがっているのか?」

「ちっ」


はいはい、そうですよ。俺だって今になって別荘での出来事思い出して赤面中だよ。悪かったね、俺ってば純情ボーイだからさ。ううぅぅ、恥ずかしっ!


「けどよ? それなら自分の教室で食べたらいいじゃん。それなのに二組に来て、しかも将也の横を通るってことは……うふふ」


米太郎が気持ち悪い。いつものことか。けど言葉の意味が気になる。


「なんだよ」

「だからさ、将也に会えないけど会いたいみたいな?」

「は?」

「相変わらず鈍いな。将也に会うのは恥ずかしい、それでも姿だけは見ておきたい、会いたいってことだよ。これってすごく矛盾してるけど……あれだよな、ニヤニヤしちゃうな」

「……」

「だろ?」

「……だ、黙れ」

「おいおい声上ずってるし、顔すげー赤いし、口元にやけてるぞ」


う、ううううううぅぅぅぅ!? ホントにそうなのか!? だとしたらすげー嬉しいんだけど!? その考察、もし本当にそうならすごくすごく幸せだわ……なんか春日らしいなぁ。


「てことで将也よ、久しぶりに男二人だけの食事を楽しもうぜ」

「マジで殴る一秒前」

「ゆ、猶予がなぃあっぎゃあああぁぁ!?」


てなことでいつもとは少し違う日常が過ぎていく。



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