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続1 プロローグ

お久しぶりです。初めましての方は『へたれ犬』を読んでいただけると大変嬉しいです。前作から間が空きましたが、また書いていこうと思います。多くの方に楽しんでいただけるよう頑張っていく所存です。それでは『へたれ犬』の続編『へたれ犬じゃない』の始まりです。どうぞっ。

こんにちは、兎月将也です。呼び方は、とづきまさや。とっても良い名前だよね。え、そうでもない? いやいや、名前の中に『月』って単語が入っている時点でもう名前ランキング上位クラス確定でしょ。桐生と同レベルのカッコ良さじゃないかな。兎月、英語で言うとラビットムーン。ヤベェ、なんかの能力名みたいになったよ。とまあ、自分の名前を言うだけで百文字も消費したことですし、もっともっと詳しく自己紹介していこーと思いまーす。名前から分かる通り、性別は男性です。年齢は十七歳、高校二年生として青春を謳歌しています。んーと、趣味は………あー……思いつかない。どうしよ、こんなんじゃ将来の就活とかで自己PR出来ないよ。あっ、そうだボランティア活動。うん、部活としてボランティア部ってのに所属しているくらいボランティアが好きです。すげー印象の良い趣味だなこれ。ちょっと嘘臭く感じるくらい。いやホント好きだから。女子高生の生足の次くらいに好きだから。おおっと、今の発言で何人かブラウザバックをした音が聞こえたが、こんな発言はタブーなので控えなくちゃ。特技はレベル上げ。無心で『たたかう』のコマンドを押すのが心地良い。なんだろ、単純な作業だけど飽きないっつーか。とりあえず自己紹介はこんな感じです。そんでもってなぜ一人こんなことを呟いているのか。ちょっと今の自分の状況を整理してリラックスするために自分を見つめ直していたからだ。気持ち悪い発言だったかもしれないけど、そうでもしないと現在この事態を冷静に受け止めることが出来ないのです。


だって……


「ただ今をもって二年二組最高裁の開廷を宣言する。被告人、兎月将也。前へ出ろ!」


ムカつく顔した米太郎が教壇の前に立ち、教室の中心に座る俺を十数人の男子が囲んでいるこの状況があまりにむさ苦しいからだ。放課後、教室の中心で椅子に座る俺。それを囲むようにクラスメイトの男子が立っている。男だらけ、吐き気がする……うぇ。女子全員は帰り、男子のみが残った教室。ただの男子高じゃねーか。こんな気持ち悪い空間にいるんだから現実逃避して心を閉ざしたって不思議じゃない。えっと、これって裁判? なぜか俺が被告人扱いされているし。過ちを犯した記憶はないぞ。なぜに断罪されないといかんのだ。


「死ね……」

「爆発しろ」

「ザキ」

「この裏切り者」

「兎月のくせに生意気だ」

「くそがぁ……」


そしてこのアウェー感。ブツブツと呟く殺意がそこら中から聞こえる。机は全て後ろに下げられて中央は広々とスペースがあり、そこには教壇と向き合うように椅子が設置されてある。そこに座れと言われたので大人しく着席。その間ずっと周りから中傷の言葉の一斉砲撃を受けた。なんだよ怖ぇよ……。もれなく全員がこちらをものすごい形相で睨んでくる。こいつらクラスメイトだよな? そうだよな? ああ面倒くさい。


「静粛に。では被告人の罪状を読み上げる」

「つーかなんで米太郎が裁判長やってんだよ」

「お黙りっ!」


急にオネェになった。うわ、キモイ。このオネェな奴とはそれなりに仲の良い友達だが……まあ米太郎の紹介はしなくていいか。そして何やら紙を取り出し読み上げる米太郎。それ、今日の授業で使ったプリントの余りだろ。それっぽく持つな、それっぽく読み上げるな。なんでそんな裁判テイストにこだわっているんだよ。そしてなぜ俺が犯罪者扱いなんだ。納得いかない。


「ごほんっ、あー、えー……被告人は我ら二年生の二大アイドルの一人である春日恵と……春日さんと………付き合っています! 羨まし過ぎるので彼に死刑を求む!」

「「さんせー!」」


数秒足らずで紙を破り捨てて吠える米太郎と声を荒げる男子ども。そして何人かは箒やら定規を装備している。こ、こいつら……


「これが我々の要求だ。では弁護人、何か意見は?」


そこで少しだけ教室が落ち着きを取り戻した。数人ほどまだ死の呪文唱えている奴もいるが一応は静まり返る。そして数多の視線が横へと逸れて、窓際に置かれた机に着席する一人の男子生徒へ注がれる。そいつだけは開廷以降も一言として喋っていない。ただ、伊達眼鏡をクイッとして力強く机を叩き、ズバッと裁判長を指差してそいつは一言、


「異議あり!」


と大声を荒げた。うるせぇ、ボリューム下げろや。俺サイドの弁護士、というポジションにいたのは山倉だった。同じボランティア部の仲間、特徴は声が大きい。その山倉だけが俺の味方。さあ弁護してくれ。


「以上だ!」

「終わりかよ!?」


おいこら山倉、ただ異議ありって言いたかっただけだろ。ちゃんと弁護しやがれ。


「もう言うことは何もないね! おい誰か俺にも箒をくれい!」


お前も敵だったんかいぃぃ!


「悪いな将也、これは最初から仕組まれていたんだ。お前の死は既に決まっていたんだよ!」


口元を歪ませて高笑いする米太郎。そしてジリジリと距離を詰めてくる男子ども。主人公が敵に包囲されたような状況だな。残念ながら都合良く主人公が持っているであろう武器とか超能力はありません。もし能力があるとしたらラビットムーンくらいだ。


「まずは四肢から落とせ。簡単に殺すな、地獄の苦しみを味わらせろ」

「「了解した」」


米太郎裁判長の厳粛たる判決に満場一致のクラスメイト。あの、もう……勘弁してください。俺が何をしたんだよ。さっき自己紹介した通り、俺はごく普通の高校生だ。こいつらに恨まれることをやった覚えは何一つない。そうだなぁ、強いて挙げるとしたら………春日と付き合い始めたことくらいかな。……えへへ~。


「と、突然ニヤつきだしたぞ!?」

「ええい、総員突撃っ!」


天を仰ぐ箒、短剣の如く低空を駆ける定規、あらゆる武器が殺気を纏って襲いかかろうとしている。はぁ、なんでこんなことに……。ごめん春日、ちょっと今日は一緒に帰れないかも。春日……せめて最後にこの目で見たかった……。






「……兎月」






透き通るように綺麗で凛とした声。なのに可愛らしさも備えた小さな美声が喧騒渦巻く教室を巡り、殺戮の場を一瞬で鎮圧させた。ピタリと止まる箒(スピア)、そして定規(ナイフ)。俺を取り囲む円のうち、声のした部分がズザザァと退いて一つの道が生まれた。そこには……春日が立っていた。サラサラと流水のように輝き流れる黒髪、不機嫌そうに見えるけどキリッとしているちょっとつり目気味の瞳、端麗な小顔、そりゃもう美少女だ。三週間ほど前から交際している、俺の、彼女さん、である。


「お、おぉ。春日」

「……」


無表情……ではない。春日といえば俺の脳内検索機にかけると『春日 無表情』と出てくるくらいに彼女は無表情なのだが、今はどことなく怯えたような顔をしている。そりゃこの異質な空間を見て驚かないわけがないよね。異空間を目のあたりにした春日は恐る恐るといった感じで男子の開けた道を歩く……つーか男子全員が春日に注目しているから尚更怖いよな。小言が飛び交いざわざわする中、俺との距離が二メートルってところになって春日が走ってきて、両手で俺の手を握ってきた。え……?


「……兎月」


ぎゅ~、と握ってくる春日。軽く痛い、けどこのくらいなら全然大丈夫。ローキックを受けてきた俺にはこの程度のダメージなんてわけない。この気持ち悪い空間が怖かったのだろうけど、そんな手を握らなくてもいいでしょうに。………いや、まあ、俺は……すげー嬉しいですけどね。柔らかい彼女の手を優しく握り返す。繊細ですべすべした春日の両手はすごく熱を帯びていて、俺も両手で包みこむと……すごく、安心した。ポカポカと心が温かくなって安らいでいく。男子が苦手な春日、こんな男祭りだワッショイ!な所で、しかも全員から視線を食らったら怖いに決まってる。不安げな表情を浮かべる春日に、もう大丈夫だよとニコッと笑ってみせると、春日も安心したように小さく、僅かに、俺にしか分からないくらいに微かに微笑み返してくれた。それと同時に両手をさらにぎゅっと握ってくる。うっわ、俺の彼女超可愛い。


「「ざ、ざわざわ!」」


途端に騒ぎ出す男子ども。すごい数の殺気を四方八方から感じる……。ちょこちょこ「殺す」とか「リア充がぁ」とか「ザラキ」など、恨み妬み満ちた呪の言葉が聞こえてきたけど……気にしないでおこう、うん。いや待て、誰だザラキを唱えた奴。俺はともかく春日に危害を加えようとするなら全力で『たたかう』のコマンド連打してやるぞゴラァ。


「えっと、帰ろっか?」

「……うん」


そして手を繋いだまま男子の作りし道を歩く。何ですかこの殺気で溢れかえったウエディングロードは。祝福してくれているのかそうでないのか。間違いなくされていないだろうね。左右から恐ろしいメッセージが届いてくる。


「夜道には気をつけろよ」

「じゃあな。また、な」

「一日の猶予だ」

「明日の体育のソフトが楽しみだな……」


うん、気にしたら負けだ。とりあえず明日のことは明日考えるとして、今日はもう帰ろう。というか春日さん? まだ手繋ぐんですね。いやぁ、俺としては全然問題ないんですけど、これが原因でさらに男子達が殺気立っていると思うんですよ。いや……でも俺だって手繋ぎたいから余裕でこのまま下校するけどね!


「……お、火祭」

「まー君。恵も一緒だね」


暗黒世界の二組を脱して廊下に出れば、偶然ばったりと出会ったのは火祭。今日も赤みがかった長い髪がお綺麗で。


「今から帰るの?」

「そうだよ。ちょっと邪魔が入ったけど」

「……邪魔?」


そう言うと火祭は不機嫌そうに二組の教室を覗く。その火祭を見て男子達のテンションが上がる。おおっ、二大アイドルのもう一人だ! と嬉しげな声が上がる中、火祭は可愛い声ながらも低い声で言葉を発した。


「恵とまー君の邪魔したんだね……。それは私が許さないよ」


するとニヤニヤ男子どもが黙った。中には「はぅ、火祭さんに怒られた。気持ちいい……」なんて変態チックな発言をする重症患者もいるが大体は動きを止めて口を閉じた。そしてキョロキョロと視線を泳がしている。こいつら、さっきまで俺のこと抹殺するつもりだったくせに火祭が注意した途端にこれかよ。対して火祭はかなり怒っているみたいでギロリと教室中を睨んでいる。


「……責任は俺が取ろう」


気まずさと沈黙が数秒の空白を放浪した後、一人の勇者が静寂を切り裂いた。勇者、米太郎だ。手を高らかに挙げて火祭へと近づいていく。つーかお前が裁判長として俺をリンチしようとしていたのだから責任持つのはテメーだろ。ちょっと良い顔するなよ。


「さ、佐々木!」

「案ずるな山倉、俺に任せておけ」

「じゃあ佐々木君、廊下に出て」


もうここにいる必要はないかな。あとは火祭に任せるとして、


「春日、帰ろう」

「うん」


夕日が差しこみ、少しひんやりした廊下を二人で手を繋いで歩く。茜色の光を浴びてキラキラと反射する長髪をなびかせながら春日は微笑む。無表情に見えるかもしれないくらいの微笑だが確かに笑っている。茜色に染まった顔は夕日のせいなのだろうか……その表情はとても嬉しそうに見えて………なんだかこっちまで幸せな気持ちになった。


「昇竜烈波っ」

「ぎゃあああああぁぁぁ!」


あー、今日も平和だわぁ。



こんにちは、腹イタリアです。続編書きますとかやっぱ書かないとか色々グダってましたが、ついに自己満足パワーが膨れ上がって書きたくなってきました。色々となんかすいません。前回から時間が空きましたが、決して書き溜めているとかそーゆーことはないので更新は普通に遅いです(汗) 


クスッとニヤニヤっと笑っていただけるような作品にしたいです!


それと続編番外編希望してくれた方々、本当にありがとうございました。そのお言葉が本当に嬉しくて感動して、こうして書きたいという気持ちになりました。期待に応えられるよう頑張っていくので応援していただけると大変ありがたいです。


『へたれ犬じゃない』よろしくお願いします。

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