EPISODE.7 暑苦しさと扱い辛さ
新年最初の更新です!12月中に一つ更新したかったのですが、ダメダメでしたorz
今年は昨年より更新頑張れたらいいな………っ←願望w
今年もよろしくお願いいたします!
あの三人組が昏睡状態にあるということ告げられ、俺はこの事件(?)からは逃れられないことがわかった。香坂生徒会長にその後言われた頼みというのも、俺が想像していた通り、「他の『底上げ』を探してほしい」というもの。そしてもう一つ。こちらは俺の想像の範囲外、「三人の昏睡状態の原因究明」だった。普通の『底上げ』ならば、俺じゃなくともいい。だが、今回は俺にしか探知出来ないというのだから億劫だ。
「どうかな。やってくれるかい?」
爽やかもどきの笑顔で生徒会長は言うが、絶対強制だろ?もう決定事項なんだろ!
「………俺しか、無理なんでしょ?億劫だけど、やらなきゃ何されるかわかんねーし。」
「人聞き悪いこと言わないでよ、大野木君。協力してくれたらいいなってだけだよ。」
「じゃあ、嫌だと言ったら。」
「んー。また玲子にお願いするよ。」
「む、会長の頼みならいつでも。」
むしろ脅迫!うがー、やっぱこの人腹黒いな。というか、百目鬼玲子が苦手なタイプだとやはり見抜かれていたのか。そして、快諾するな!百目鬼玲子!
「やればいいんだろ、やれば。でも、全校生徒は無理だぜ?どう考えていも。」
この学園はマンモス校だ。例え普通の学校であったとしても、難しいことだ。それなのに、この学園の『底上げ』を探してほしいなんて、無理難題もいいところだ。
「全校生徒が無理なのはわかっているよ。でも、彼らには共通して所属していた部活、というかサークルがあってね。そこが怪しいと僕は思ってる。それを追及する前に、彼らは昏睡状態になってしまったのだけど。」
確かにそれは怪しいな。
「どんなサークルだ?」
「『迷える子羊の会』っていうらしいよ?」
「怪しすぎるだろっ!?」
認めてやるよ、お前ら………迷ってる。すげぇよ、驚くほど迷ってる。子羊ってなんだよ。自分たちにあんなもこもこ要素があるとでも思ってんのか?もしそうなら誇っていいよ。それだけ迷えたら、いっそ誇りだよ。尊敬するよっ!
「………しねーよ。」
「ん?」
「あ、いやこっちの話。」
一瞬、驚きすぎて取り乱した気もするが気のせいだ。誰が何と言おうと気のせいなんだ。
「で?いつそこに行けばいいの。」
「あぁ、そのことで一緒に連れて行ってほしい人がいるんだ。もうすぐ来ると思うんだけど………。」
香坂生徒会長が誰かの来訪を予感してか、生徒会室の扉の方へ目線を向ける。すると、扉の向こうの廊下から、何かが全速力で走ってくる音が聞こえてきた。まるでイノシシか何か、野生の動物が駆けてくるような音だった。それはあっという間に生徒会室の―――前を横切った。そして、何かにぶつかったのであろう大きな音がして、やんだ。
「またか。」
百目鬼副会長は呆れたように手を額に当てながら、首を振った。これが日常茶飯事なのだろうか。何事かと、俺が眉を顰めていると、生徒会室の扉が壊れるのではないかと思う強さで開け放たれた。部屋の中の空気が振動するほどの衝撃に、どこからかミシッと不吉な音がしたのは幻聴だと信じたい。
「俺の力が必要だというのは真かぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
マッチョだった。半裸のマッチョがそこにはいた。学園指定のジャージの下だけ穿いて、裾を膝の下までドーナツみたいにくるくるした、半裸のマッチョがそこに!
「服を着んか!この馬鹿者がぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」
百目鬼が、どこからともなく学園指定のジャージの上着を取り出し、そいつに振りかぶって投げつけた。そして見事に、叫んでいた彼の顔へ。
「ぶふぉっ!おい、ひゃくめき行き成りなんだ!って、お?俺のジャージじゃないか。何故こんなところに?」
「お前がいつもいつも半裸でうろうろしているから、生徒会室に常備する羽目になっているのだろうが!そして、ひゃくめきではない、ど・う・め・き・だ!」
俺は、さっきまで苦手だ苦手だと思っていた、生徒会副会長百目鬼玲子の苦労の日々を想像し、ほろりと涙した。
そうだよな、大変だよな。香坂生徒会長にはいいように使われ、時兼書記はほとんど喋らず、挙句の果てに半裸のマッチョ………って、半裸のマッチョ誰だよ。
「あの、そちらのマッチョ様はどちら様?」
俺が手を挙げて発言すると、百目鬼が若干疲れたような顔で答えてくれた。
「あぁ、こいつは生徒か」
「生徒会副会長、八坂龍之助と申す!ひゃくめきと同じ役職だが、負けはせんぞっ!何でも頼ってくるがいい!俺のこの筋肉で、ばきっと解決だ!はーはっはっはっは!!!」
やばい、こいつの自己紹介云々より、疲れつつも俺の質問に答えようとしてくれた百目鬼のやつれた顔が気になる。苦手とか言ってらんねーよ、百目鬼が哀れでならん。今度から、もう少し優しくするわ………ごめんな、百目鬼。そんな瞳を向けると、百目鬼は弱弱しく笑顔を返してくれた。おうふ。
「相変わらずだね、八坂。さっき連絡した時に言ったと思うけど、彼が今回の協力者で大野木雅人君。能力はCランクの『解析』だよ。」
「あぁ。相変わらず俺の筋肉は絶好調だぞ、会長。ほほう、こいつが。よろしく頼むぞ、大野木雅人!俺の名は八坂りゅ」
「さっき、聞きましたよ。よろしくお願いします、八坂さん。」
二度もあんな暑苦しい自己紹介を聞いてたまるか。
「お、そうかそうか。だが、俺の能力は言っていなかったな?よし!よく聞け!俺の能力、それは!」
どうせ『筋力増強』とか『超人化―スーパーマン―』とか赤系なんだろ?
「Sランクの『治癒士―ヒーラー―』だ!」
「たちまち筋肉関係ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」
あ、やべ。声に出してしまった。八坂以外の生徒会全員が唖然とした顔をしている。八坂からは何か出てる。
あれ?どうしよ、これ殴られるかな。もしかしたら筋肉の一部にされるかも………あぁ、なんか混乱してきた。とりあえず、いい筋肉にしてほし………いやいや、そうじゃないだろ、俺なんか八坂さんの筋肉に相応しくないからさっ!だから………
「俺の筋肉が関係ないだと?」
いっやぁぁぁぁぁぁああ!食べないでくださぁぁぁぁぁぁああ!エマージェンシー誰か!俺を救って!この状況から救って!あぁぁぁぁぁ筋肉になるぅぅぅぅぅ………
「筋肉はっ!俺のっ!崇高なっ!趣味だっ!!!」
はい?趣味?
「結局筋肉関係ねぇじゃねーかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
なにそれ、なにそれ、紛らわしいんですけど。え、なに誇らしげにしてるの八坂さん。いや、いいよジャージ脱がなくて。そんなわくわくした目で見られても、俺絶対褒めないから。あ、すごい。胸筋動かすの速いですね。いえ、いいです。筋肉に興味ないんで、触るのとかちょっと………。
ぽんっ、と俺の両肩に手が置かれた。軽い音に反して、とても重い、そう長年の経験と諦めが詰まった、酷く悲しい重さが俺の両肩にはあった。右を見れば、百目鬼玲子が。左を見れば、時兼蘭が。縋るように生徒会長を見れば、
「すまない、大野木君」
目を逸らされた。そこで俺は気が付いてしまった。
「悪い人では、ないんですね………」
全員が頷いた。
暑苦しい=八坂
扱い辛い=八坂
でも、意外と嫌いじゃない八坂。むしろ、皆に好きになってほしい八坂。『悪い人じゃないんだけどね………』の使われる意味が少し違う八坂をどうかよろしくお願いします←