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原初の弟  作者: 浅葱
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EPISODE.4 緑色の毒と関わりたくない予感

 続けて投稿。




 ここは、先ほどの能力発動未遂の現場。野次馬はもうおらず、残されたのは生徒会の二人と、被害者であろう少年。


「やはり、わざとぶつかってきたという言葉は嘘だったか。」

「す、すみません…。」

「あぁ、いや。君が悪いのではないのだから、謝る必要などない。それに、ぶつかっただけで能力を発動しようとしたことが問題だ。奴らは後日、こちらで処分を下すから安心するといい。」

「あ、ありがとうございます…っ!」


 少年は一つ頭を下げると、軽い足取りで校舎へ向かった。それを見届けて、次は灰色の小柄な少女が声を掛ける。


「問題は、そこだけ、違う。」

「何?」


 濡れ羽色の少女は訝しげに、そちらを見た。灰色の少女は、コテンと首をかしげて、


「『底上げ』」


 とだけ言った。それだけで伝わるものがあるらしく、濡れ羽の少女は、一層顔を険しくした。


「本当か。」

「『底上げ』は、ルール違反、だって。」

「つまり、〝聴いたのか〟。誰だ?」


 灰色の少女は、その問いに首を振る。わからない、ということだろう。


「でも、声、聴けば、わかる。」


 不特定多数の声を聴くなど、誰が可能と思うだろう。しかし、ここは『異能学園』。そして彼女らは生徒会であり、六本線―――Sランクの保持者。灰色の少女の能力ならば、それは造作もないことである。いや、多少は骨が折れる作業ではあるだろうが。






 腹、減った。

 さて、所変わってここは食堂。さっきの能力事件のせいで、昼飯の時間がずれ、一番混む時間帯になってしまった。案の定、席もろくに取れやしない。


「多岐、先に行ってろ。どうせいつものだろ?」

「おう!任せたぜぇ。」


 多岐を席取り担当で、俺は飯担当。効率がすこぶるいいわけではないが、飯を片手にうろちょろすんのもいかがなものかと。


「おばちゃん、A定食と激辛DX。」

「あいよっ!」


 激辛DXは、この第二食堂名物の激辛料理だ。何が入っているのか知らないが、ラーメンどんぶりに並々注がれた汁は、マグマの如く煮え立っている。これを完食したのは、この学園でも数えるほどしかいない。というか、俺はあいつしか知らない。そう、多岐の言ういつものやつってのは、この激辛DXなわけだ。こんなもん好き好んで食うやつは、あのアホしかいまい。好奇の目をひしひしと感じつつ、俺は多岐を探す。


「おーい!雅人、こっちこっち。」

「おー。って、あれ?お前…。」

「ど、どうも…。」


 多岐と一緒にいたのは、先ほどまで騒ぎの中心にいた「緑」の少年だった。


「なんかきょろきょろしてたから、誘ってみた。」

「へー。」


 そうして俺が多岐と会話していると、少年は縮こまってしまった。


「あ、あの、すみません。お邪魔してしまったようで…。」

「あぁ、いいよ別に。お前も昼、まだなんだろ?」

「あ、はい。ここに来る途中で、あの人たちとぶつかってしまって…。」

「災難だったな。」

「はい、まったくです。低能な…あっ。」


 しまった、という顔をする少年は、意外と毒づくタイプなのかもしれない。


「す、すみません…。」


 なんと腰の低い毒舌キャラなんだ…。


「それより飯食おうぜ、飯!腹減った!俺の激辛DX!」

「ま、そうだな。ほれ、お前も食え。」

「は、はい。そうさせていただきます。…って、それ名物のやつですよね?よくそんな毒物みたいなものを口に運べますね…って、う、わ、すみませんっ!」


 なにこいつ。毒舌のレベルが半端ないよ。…素敵だ。


「よし、少年。友達になろう。」

「えぇ!?今の流れで!?どうしたんです、Mですか!?」

「…俺はどちらかといえばSだ。」


 あれ、これどっかで言った気が…。ま、いっか。


「俺はちょいM!」

「死ね。」


 てめーにゃ聞いてねぇ。


「俺は、大野木雅人。こっちは多岐朔夜。ま、好きに呼んでくれ。二人ともラインの「紫」でわかるとおり、技術系能力で今二年。お前は?」

「あ、えっと、自然系能力の井田智樹…です。一年生です…。」

「へぇ、後輩か。」

「は、はい。」

「よろしくな、智樹。」

「よっろしく~!」

「よろしくお願いします、雅人先輩、朔夜先輩。」


 ふむ。たまにはこんなこともいいもんだ。友達百人出来るかな、なんてことは言わないが、気に入ったやつとはそれなりに仲良くしたいってものだ。

 そんな感じにほのぼのしていた時だった。


「楽しそうだな。」


 ほんの少し前に聞いた、凛とした声が耳に届く。振り向いたらいけない、そんなことをしたら絶対後悔する!と、本能が告げていた。だって、智樹も目ぇまん丸くしてるし、多岐は…。


「うお、なんだこの子!」

「激辛DX、好き、ちょうだい。」

「ちょ、いきなり膝の上に乗るでないよ。危ないだろう。ちゃんと乗りますよーって言ってから乗りなさい。」

「ごめん、ね。」


 なんかちっこいのに絡まれてる。いや、懐かれてる…?そして、お前の言うべきことはそれじゃない。せ・い・ふ・く!制服を見ろ!それは…っ!


「生徒会の者だが、少し話がしたい。」

「だってよ、智樹。」

「え?お断りします。」


 お前だろ、どう考えたってお前に用だろ。だってさっきの騒ぎ、お前じゃん。断るな。


「あぁ、そちらの井田君にはもう聴取済みだ。よって、用があるのは彼じゃない。ちなみに、わかっているだろうが、そちらでうちの書記である時兼蘭とじゃれている彼でもない。」

「つ、つまり…?」


 恐る恐る振り向くと、やはり先ほど見た濡れ羽色の美人さん。彼女は、事情を知らない第三者から見ればとっておきのいい笑顔で、俺の肩に手を置きながら言った。ポンッという軽い音からは想像だにしなかった重圧に、俺の心は悲鳴を上げる。


「用があるのは、君だよ。さて、まずは名前から聞こうか。」


 無理!





 あれ、よく見りゃ黒髪さんの名前ががががが。

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