~こんな神社は嫌だ~
本日は近場の神社に行くことにした。
別に、宗教とか信じているわけではないがなんとなく願い事を聞いてくれそうな雰囲気を出しているので、一カ月に一度くらいはお参りをしている。
小高い丘の上にその神社がありそこは合格祈願や縁結びなどのおまじないをしてくれる。
そこの神主さんとちょっと顔見知りで時折世話になっている。
家は、ほぼ冥土のメイドと化した貞子さんに任せてある。
シャレではなくマジで時折、霊界からお土産を持ってきてくれる。
どんな立場の人かと疑ったが、あまり詮索はしないことにした。
ただ前に閻魔様からおまんじゅうを貞子さん経由でいただいている。
こんな僕が友達感覚でお付き合いしていいのだろうか、と思っているが、まんざらではないらしく文脈から見て結構フランクな方であった。
達筆過ぎてところどころ読めないのだが。
まぁ古文の勉強にはなっています。
ともかくその閻魔様を祀っている神社へお参りに行くのだ。
「ふぉぉお、何度も来るけど段数多いよな」
108段もある。多少きつい
だけど朝のトレーニングにしてはちょうどいい。
一ヶ月のもやもやを晴らしてくれる。
ご褒美として、最上段では街の景色が一望できる。
「あら、いらっしゃい」
最上段に到着し街を一望しながら体を伸ばしていたところで、不意に後ろから声がかかる。
後ろを振り返ると竹箒で庭掃除をしていた巫女姿をした少女がいた。
「こんにちは、美咲さん」
渚美咲、僕の幼馴染で親からの受け継ぎでこの神社の巫女兼神主をやっている。
似非京都弁をたまにしゃべるのが玉に傷だが、そのかわいい様視に年々参拝者が増加中とのこと。
近頃ここを舞台としたアニメをやるとのことで地域活性化のため市長が動き出している。
「あら、また来てくだはったん?」
「まぁ、朝の散歩がてらにちょっとね」
笑顔で聞いてきたのでこちらも笑顔で返す。
「さすがにここを散歩のルートにするにはちょっとハードだけどね」
「そうなんですよね今度、市長さんにエスカレーターでもつけてもらおうかと思いまして」
「やめてくれ景観が台無しになる」
「そうですか、じゃあここら一帯を観光地として」
「それはもう市長がやっとる」
「そうですか、ではこの坂を緩やかに」
「そしたら俺の家が無くなる」
「そうですか、では・・・・・・」
「ストップ、キリがない」
ここらで止めておかないとボケとツッコミがどんどん加速していく
「ところで、最近何かあった?」
話題を切り変えて半永久ループを絶つ
「いつも通り、毎朝、早起きしてお賽銭を確認して朝のお勤めをしてからお茶をすすって、それから境内の掃除ですが」
「お賽銭の確認が先なんだ」
「まぁ、最近困ったことがありましてね」
僕のツッコミは気にしないんだ。
「なになに?」
「奉納されるお神酒が多すぎて困っているんですよ」
「どれくらい?」
「だいたい東京ドーム二つ分くらい?」
「例えがおかしいよ!?」
それは面積の例えだよ
「私たちじゃ処理できなくて・・・私は未成年だし、うちの神様、下戸だし・・・・・・」
「初耳だよ!?」
酒の飲めない神様っているんだねぇ
「なにもまだ若い時に他の神様たちから無理やり飲まされて、それで急性アルコール中毒に」
「うわぁ」
ずいぶんとリアルな話だな。神様でも患うんだね。
「まぁそのおかげで生真面目な人柄になり今は地獄に来た魂を取り締まる閻魔の役をしなはっているわけなんですが」
「閻魔って職なんだ」
そう言えば手紙に、リストラ騒ぎがあって肝を冷やしたとか書いてあったな。
「ともかく捨てるのはもったいないし、かといって私たちが飲むわけにも」
「あれ“私たち”?」
「あぁ、すいませんこの神社少し前に新しい巫女さんが入ってきましてご紹介しようかと思っていたんですが、あの子、人見知りの激しい子で、私以外の人が来るとどこか物陰に隠れてしまうんですよ。」
「へぇ、かわいらしいじゃないか」
「そうなんですよ、とってもかわいい子で暦さんにも紹介してあげたいんですけど本人が頑として姿を現してくれないものですから」
「まぁ、無理に紹介しなくてもいいよ、本人が嫌がっているならそれはそれでいいし」
「い~や駄目です。あの子の為になりません。この神社のマスコットキャラクターになるんですから」
「いや~・・・・・・」
もうあんたがマスコットキャラクターなんだけど、と言いそうになるがあえて飲み込んだ。
「この際だから無理矢理でも引っ張り出してきます」
「いやいやいいって」
僕が制止するも振り切って彼女は林となっているところへ行ってしまった。
そして巫女装束の少女を引っ張り出して戻ってきた。
見た目はかなり年下に見えるかわいらしい子だった。
髪はきれいな長い黒い髪で、根元でくくっていた。
ただ、少し気になったのが、頭についている、
「え、角?」
「はい、この子、鬼っ子なんですよ」
いやいや待て待て神社に鬼っておかしいでしょ。
俺個人の偏見なのかな、たいてい鬼って陰陽師とかに追いかけまわされていた気がするのだが
「この子、少し前に、行き倒れてましてそこを私が保護したのですよ」
「おじいちゃんはなんて?」
「最初はびっくりしてましたけど事情を知って全面的にバックアップしてくれました」
「そうか、よくおじいちゃん腰が抜けなかったな」
「いや~あえて理由は言いません」
「うん、言わなくてもいいよ。性癖だからしょうがない」
愛は人種を超えて人を救う
「ほら、暦さんにご挨拶を」
美咲さんの陰に隠れている少女を促して自己紹介させる。
「ご紹介にあずかりました。わきちは大江金狸と申します。またの名を酒吞童子じゃ。以後よろしくお願いします」
わお、レアな一人称だ。
人前では無礼を出したくないのかしっかりと自己紹介をしてくれた。
ところどころ言語がおかしいが目をつぶろう。
「ってちょっとまて、酒呑童子?」
これだけは目をつぶるわけにもいかなかった。
だって有名人だよ。昔のだけど
「はい、わきちは、正確には子孫ということになり申す」
「それはまた、というかじゃあ酒は飲めるのでは?」
「それが困ったことに、わきちも下戸なのじゃ」
あれ鬼ってお酒大好きなのでは?
「この子も急性アルコール中毒になっていて」
「大変だねぇ」
鬼もなるんだねぇ、お大事に
「もともと嫌いなのもあるがな」
「何故に?」
「最初に飲んだのが『鬼殺し』だったからじゃ」
「それはまた不幸なことで」
「うむ、誰がやったかは知らんがビンのラベルを張り替えられていて、一緒に飲んだ者たちが皆もがいたものよ」
「やっぱり、効くんだね」
「いやどちらかというとあまりの刺激に身を捩じらせた。というのが正解なのじゃが」
「だめじゃねぇか」
麻薬みたいになっているじゃねえか
「まぁ中には幸せそうな顔をして逝っている奴もいたがな」
そして、きれいな顔だったよ、と金狸は付け加える。
「まぁここに奉納してもらっている酒も『鬼殺し』がほとんどで、里にも送れないしな」
「閻魔様涙目」
「何故かみなさん、『鬼殺し』を持ってくるんですよ、ここの特産とはいえお菓子を奉納してくださると喜びますよ、と立て札をたててあるにもかかわらずですよ?」
たぶんみんな飲兵衛だからだと思うよそれは
「ところで、金狸ちゃん里とか言っていたけど家出中なの?」
「いやなに、里の皆が私の胸についてで争いが始まってね、それで逃げてきたのだ」
「どうしてそうなった」
「皆でお祭りをしていた時のことだったのだが、あるものがわきちについて語り出したのよ。わきちは頭領の娘であるから注目されるのは仕方がないのじゃが、話題がわきちの胸についてだったのよ」
「うわぁ、どんな里だよ」
エロ親父ばっかなのか、その里は?
「そいつは、これから育つなんと言いだして、それに、バカ野郎、やっぱりツルペタだろ、と言いかえすやつが現れてそれで、里は真っ二つに分かれて言い争いになったのじゃ」
「酒が入りすぎだろ」
「うむ、半ば酔いすぎたというのが本当なのじゃが、にしてはガチでやりっておった」
「結局、どういった展開に?」
「『貧乳はステータス』派と『やっぱ巨乳でしょ』派に別れた」
どっかで聞いたことのあるフレーズだが、気にしないでおこう
「お父さんは?」
「『貧乳』派に組みしおった」
「OK一発ブン殴ってやれ」
「もちろん殴ったわ」
「お母さんは?」
「『巨乳』派組みしおった」
「なぜに!?」
参戦すんなや
「だから気味が悪くなって逃げてきたわけなのじゃ」
「それでここに生き倒れと」
「恥ずかしながら」
ちょっと頬を赤らめ俯く。
あーもう畜生その動作がかわいすぎるんだよ
「金狸ちゃんも大変だな、っともうこんな時間か僕はもう帰るよ。楽しい話が聞けてよかったよ」
腕時計を見るともう11時を回っていた。
二人と別れて階段を下る。
余談で真ん中くらいまで降りて来た時、踏み外して下まで尻もちを連続で打ちました。
家に帰ると、家がリフォームされていた。
新築同様になっていた。
部屋に入ると暖房および冷房完備
畳だった床はフローリングになり床暖房OK
ブラウン管だったテレビは、巨大スクリーンに。映画館かここは。
洗面所に行くとシンクはとてもきれいに、風呂は檜風呂になっていた。
キッチンはIHクッキングヒーターになっており火事知らず。
オーブンも揃えてあってここで高級料理ができるんじゃないかと思うくらい豪華だった。
そこでメイドの貞子さんがフランス料理を作っていた。
「ただいまー、あの貞子さんこれはいったい?」
「おかえりなさいませご主人様、これはですねちょっとミスって」
「ちょっとじゃないよね!?」
「いや、この前壊していしまったテレビの代わりになる物を買おうとしたところ間違えてリフォーム業者さんを頼んでしまいまして、それでこうなってしまいました」
「お金のほうは?」
「私のへそくりでなんとかなりました」
「へそくりでなんとかならない額だよね!?」
「まぁこんな額どおってことないんですけれど、まずかったですか?」
どんだけ成金なのこの人!?
「まぁ、暮らしが快適になったからいいか」
いろいろと問題はあるのだろうがそこは置いといて今日も勉強に勤しむとしよう。
「ところで氷羅ちゃんは?」
「冷蔵庫の中の氷羅専用の部屋にいます」
「わざわざ作ったんだ。」
「はいそこで氷の生成と食物の管理をお願いしてあります」
「すごいことになっているな」
どうなるんだろうな僕の家は。
少なくともあとで大家さんに無断で改装したことを謝りに行かないといけないだろうな。
今回は、親しい仲の人の周りにある混沌です。
巫女さんに鬼っ子というあまり見かけないペアを作ってみました。
一応モデルはいまして酒呑童子を元ネタとするシューティングゲームのキャラといえばたぶんわかるかと思います。
にしても毎回毎回キャラの口調を定めるのって難しいのよな。