~こんな冷蔵庫は嫌だ~
「ふいーあちー」
夏真っ盛り
今年も例年どおりのあつい気温の中、僕は大学受験の勉強をするために行っていた近くの図書館から帰っ
ているところだった。
なぜ図書館に行っていたかというと
理由はただ一つ
家のクーラーがお亡くなりになりました。
あいつはよく頑張ったよ。
最後までがりがりと嫌な音を出しながらも僕に冷たい空気を送ってくれた。
そしてぷすんという音とともにあいつは動かなくなってしまったんだ。
僕は一日中泣いたよ、熱い中、黒い喪服を着て供養させに行った(toリサイクルセンター)のをよく覚えているよ。
というわけで日中はこうして図書館で一日中勉強することが日課となっているわけだ。
だが今日は二世代が来るため早めにきりあげて鉄板のように焼けた道路の上を歩く羽目となっている。
わざわざ外に出かけなくともよかったのだが、日課となってしまった。
それ以前にあそこは風通しが悪い、とにかく悪い
蒸し風呂だよあそこは。
毎年、梅雨になるとカビとの全面戦争を行わなくてはならないほど。
ともかくじりじりと肌を焼いていく外から無事帰還した僕は真っ先に冷蔵庫に飛びつく
別に、冷蔵庫を愛しているというわけではないんだぞ。
僕はただ単に中で冷えている、飲み物を取り出そうとしただけだ。
前世代のクーラーが恋しくてかわりの物にすがりつこうだなんて微塵にも思っちゃいない。
かぱっと扉を開け、中を覗き込む。
「あっ、お邪魔してまーす」
そこには見知らぬ女の子がいた。
バタンと勢いよく扉を閉め全速力で退避
ちょっとまて、ちゃんと麦茶を冷やしておいたよな
他には氷とか食べかけの宅配ピザなどなど
「ちょっと、いきなりなんですか?扉を閉めて」
にょろん、と冷蔵庫から先ほどの少女が出てくる。
「お前こそなんなんだ!?人の家つか冷蔵庫に入り込んで」
見た目は13歳といったところだろう
髪は少し長めで若干青味のかかった銀髪である。
どう見ても日本人には見えない、というかカワイイ
「おっと失礼、私は雪女の氷羅といいます」
「は?今何て言った?」
「だから雪女の氷羅です」
その台詞を聞くと僕はこめかみに手を押えた。
(ここに電波な女の子がいるよ!!)
そして、ポケットからケータイを取り出す。
「えっと、警察、警察っと、いやこの場合は救急車を呼んだ方がいいのか?」
「ま、待ってください、警察は呼ばないでください~!!」
氷羅ちゃんが涙目で訴えかけてくる。
今にもぽろぽろこぼれそうだ。
僕も鬼ではないので話ぐらいは聞いてあげよう。
「質問その一、氷羅ちゃんどこから来たの?」
「冷蔵庫を転々としてきました」
かちゃ、ケータイスタンバイOK
いつでも通報はできる。
「ま、まってくださいまずはそのケータイをしまって」
必死すがりついて懇願する。
ついに、ぽろぽろと涙がこぼれ始めてしまった。
その涙の粒は床に落ちて弾ける、のではなく氷の粒となってころころと転がる。
その光景を見せられたからには信じざるを得ない。
百聞は一見に如かずってね。
僕は頭をぽりぽり掻いてから話を聞いてあげることにした。
「はぁ、仕方ないな、もうちょっとマシな説明をしてくれないか」
「私、雪女といっても結構現代のほうに生まれた妖怪で、家を転々としてその家主を驚かす妖怪なんですよ」
「へぇ、妖怪事情もたいへんなんだな」
「そうなんですよ、だからあなたがきちんと驚いてくれなかったから私はこの家で居候をしなきゃいけなくなったんですう」
「そりゃ、悪かったな・・・・・・ってなんで僕が謝らなきゃならないのさ!?」
「ノリツッコミへの対応スキルは持ち合わせてないです。」
今度は氷羅ちゃんが引き気味になっている。
「失礼、とにかく驚かせないと他に移れないんだな?」
「というか、もうしくじったことで私のプライドはズタボロです」
しょぼんと氷羅ちゃんはうなだれてしまった。
「まあともかく僕としては、いますぐに移ってもらいたいところなのだが」
「嫌です、死んじゃいます!!こんな熱い中に放り出されたらとけちゃいますう」
必死だ、マジ必死だ。
必死にしがみついて訴えかけてくる。
これは持久戦になるだろう。
それはともかく喉が渇いた。
「わかったから離してくれって、お前のせいで飲み物、飲むの忘れていたではないか」
しがみつく氷羅ちゃんをひきはがし冷蔵庫を開ける。
だがそこにはあったはずの冷凍食品など様々なものが消え失せていた。
「おい、氷羅ちゃんどういうことか説明してもらおうか?」
「すいません、つい中にあった冷凍食品を食べてしまいました。私、主食が氷なのでこういったおいしいものを食べたのが初めてなんですよ」
「すいませんで済むと思っていないだろうね?」
「はい」
僕の問いかけに対し彼女は満面の笑みで答えてくれた。
しかも即答
「僕が楽しみにしておいた限定三十個のプリンを食べておいて許されるとでも?」
「でもあれ賞味期限切れでしたよ?」
「Oh my god!!」
しまったな、食べ物への愛しみ方を変えなければならないようだ。
過剰な愛が相手を腐らせてしまうとは
「たぶん違うと思うよ?」
「地の文を読まないでくれ」
なんださとりか?読心術でも極めているのか?
「だから私は雪女ですって」
「おまえ実はさとりだろ、でなきゃ心は読めん」
「エスパーですから」
母さん、ここに電波少女がいるよ。
「とにかくしばらくの間お世話になります」
氷羅ちゃんはそういうと、床に座り丁寧にお辞儀をする。
あらためて言われてもなぁ・・・・・・
まぁ仕方ないか
こうして僕と氷羅ちゃんは一つ屋根の下に住むことになったのであった。
前に友達から
「俺の家に美少女がやってきたのだ!」
というお題を無茶ぶりさせられまして
最初は無理無理と返してしまったのですが
改めて考えてみると出来なくもなかった。というわけです。
さてタイトルを見る限りシリーズものです。
といっても一話一話が短編ですのでご安心ください。