天才は体育祭でも一番を目指す [後編]
借り物競争が終わり、今は光莉と一緒にテントのほうに向かっている
昼休憩の合図が鳴る前から、俺は少しだけ落ち着かなかった
一緒に食べることは昨日の時点で決まっていたし今日の朝も確認されていたのでわかっていたが
それでも、いざその時間になると妙に緊張するのはなぜだろう。
家族と合流する生徒、友達同士で輪になる生徒
光莉の母と小夜さんがすでにシートを広げていてデカい弁当箱も広がっている
「悠斗くん、お疲れさま」
「お疲れさまです。今日はありがとうございます」
軽く頭を下げて靴を脱ぎシートに上がらせてもらう
「はい、これ」
差し出されたのは、二段の弁当箱。
「……あれ?」
「今日は私も作ったからこれを食べて」
その一言で、背筋にうっすら寒気が走る,,,,光莉が、作っただと?こいつに料理ができるのか?
だが、こいつのスペックを考えると何でもできてもおかしくない
「じゃあこの広がってる弁当は?」
「それは私たちの分ね!特別に作ってあげたから感謝って,,,,なによ、その顔」
「いや……ちょっと覚悟を」
「あなためっちゃ失礼ね!」
中には色鮮やかな卵焼き、ハンバーグ、きんぴら、ブロッコリー、そして丁寧に握られたおにぎり。
見た目は完璧だ
さすが光莉だが問題は味だ。
「どうぞ」
「,,,,,ありがとう」
光莉から箸を渡され震える手で受け取って、少し弁当を見て覚悟を決め
俺は卵焼きを一口
甘さと出汁のバランスが絶妙。
ハンバーグ
肉汁がちゃんと残っている。
きんぴら。
味付けがちょうどいい。
どれもこれも味付けもしっかりしていてめっちゃうまく光莉に感心するが
「あれ?」
思わず声が漏れてしまう
「なに?おいしくないとか言ったら泣かすわよ?」
「……めっちゃうまい」
「当たり前でしょ!!」
胸を張る光莉だが、俺はどこかで引っかかる。
この味なんか
莉と弁当を交換してお昼食べる時いっつも食べてる弁当に似てるような気がするんだが
使用人さんが作っているって言ってたが本当はこれ光莉作ってないんじゃ
いや逆か?
「……光莉?」
「なに?」
「いつも交換してる弁当って確か使用人が作ってるんだよな?」
「,,,,ええそう――」
光莉がが言いかけると、光莉の母が楽しそうに口を開きかけた。
「光莉ったらそんなこと言ってたの?それはね――」
「ちょ、ちょっとお母さん!やめて」
それを光莉が慌てて遮りだす
「なによ、いいじゃない」
「よくない!本当にやめて」
光莉の顔がほんのり赤かいのとさっきの慌てようを考えていくと一つの答えがあがってくるが
「……なに?」
「別に~やっぱりなんでもないわ」
こいつが変に嘘をついても何を考えてるくかわらないが弁当を作ってくれた事実は変わらない
「おいしいよ!ありがとう」
はずかしそうに光莉はそっぽを向くのを見て小夜さんが穏やかに微笑んでいる
「悠斗様、たくさん食べてあげてくださいがんばって作ってきてらっしゃったので」
「残さず食べるので大丈夫ですよ」
やっぱり食べていて気付くいているが悔しいことにかなりうまい。
「どう?」
「普通に店出せるレベルっていうかこれならいつも弁当交換しないでよくね?」
「,,,,,,,,写真撮りたいから小夜取って!」
都合が悪くなったのか急に話を変えてスマホを取り出し小夜さんに渡す
「ちょ!俺食べてる途中なんだけど」
「弁当置いたら?いじゃないさっさとピースしなさい」
こいつは本当に我ままだ!!
「はいはい」
「じゃあ取りますね」
俺はピースしながら隣にいる光莉を見て思うが「やっぱり言えないな調子乗るし」
本当は少なからずさみしい気持ちはあったし体育祭も少し楽しんでる風で本当は少し憂鬱だったが
実行委員会やこの昼ご飯に誘ってくれて感謝してるありがとう
カシャ
「ふーん!無駄に写真写りいいわね!」
「それは特別だぞ、感謝の念が入ってるからな大事にしろよ」
「?意味わかんない?どういうこと?」
「じゃあ食べ終わったし、トイレ行って来るわご馳走様」
「食べるのははや!ちょっと終わったら帰ってきなさいよ!どういう意味か聞きたいから!!」
行こうとする俺の足をつかみ離さないバカ力
「分かったから放せって!」
「そうじゃあ、行ってらっしゃい」
急に話す光莉あぶねえなこいつさっきの感謝を返してほしい
トイレを済ませ、手を洗って校舎裏を歩いていると、医療テントの横で恵とばったり会った
午前中よりも少し疲れた顔をしているが、ご飯を食べて元気そうだ
「先輩、お疲れさまです!」
「恵もなずっと動きっぱなしだろ?」
「いえ……まあそうですけどそれより学年リレーすごかったです!」
少し頬を赤くしてそう言う。どうやら見られていたらしい
真っ直ぐな目で言われると、さすがに照れる
「ありがとう、まあ二位で渡してしまったけどな」
すると恵が小さくスマホを取り出した
「あの……記念に、一枚だけ写真いいですか?」
断る理由もない。軽く並んでピース
カシャ
「午後も、がんばりましょう!」
「おう」
別れてテントへ戻ると、空気が妙に重い気がするし、小夜さんたちはいないし、なぜか光莉が腕を
組んで立っていた
「……遅い」
「恵と会ってさ。写真――」
「へぇ」
「さっきのリレーもかっこよかった、って言われた!もしかしたら知らない女子
に告白とかされるんじゃね?」
「……ふーん」
「何だよ,,,ただの冗談だって!お前と付き合ってるふりしてるんだからされるわけないだろ?」
「別に怒ってないし」
怒っている人のテンプレみたいな台詞を吐く光莉
さっきまで機嫌よかったのに
――午後の部が始まる。
最初は百メートル走。
乾いたピストル音と同時に飛び出す。
地面を蹴る感触、風を切る音、ゴールテープが近づく感覚。
結果は一位。
息を整えていると、光莉も別組で一位を取って戻ってきた。
「さすがだな!」
「当然よ」
そう言いながらも、どこか機嫌が直りきっていない、どうやったら機嫌治るかな?
その後、玉入れ、ダンスと競技は進んでいく
ちなみに黄団三年のダンスは圧巻だった。中心で踊る星野会長はキレも表情も段違いで、観客席から大きな歓声が上がり黄団に審査票がとてもはい行ったらしい
そして、最後の種目――団対抗リレー
一年四人が走り、二年へバトンが渡し最後は三年にバトンをつないでいく競技だ
各団の1年がスタ―とに立ち準備する
そして審判もピストルを持ち
「セット」
パン
一斉にスタートしていく一年そこから繋いでいき、青赤白紫黄で並んでいくが紫黄団と青赤白団に
結構な差がついている
そしてとうとう、二年の最初の走者光莉にバトンが渡される
鋭いスタートで一気に差を詰めるフォームも安定しているしすごい速さだが赤白団の人も
負けておらずほぼ互角だ
赤青白の選手がせめぎ合っているとコーナーに差し掛かっていくが
その瞬間白の走者と光莉が接触してしまい足がもつれ、転倒する
「光莉!!」
「大丈夫九条さん?」
「いたそー」
だけど光莉は俺たちの心配はよそにすぐに立ち上がった!だが痛いのか右足を少し引きずっている
それでも、歯を食いしばって走って来る光莉を見て俺はすぐさまバトンを受け取る位置を、規定ギリギリまで前にずらす。少しでも距離を縮めるためだ。
練習の時はもっと前で待っててと言って怒ってたがさすがに許してほしいな
「がんばれ」
「がんばって九条さん!」
その姿に多くの応援が聞こえる
どんどん抜かれ4位になてしまうが焦らずこっちに来る光莉を待つ
光莉が差し出したバトンを、強く握る。
「おねがい!」
俺はその言葉を聞き全力で走る。青との差はあるが絶対黄色と紫は抜かす!!
「あいつはえ~」
「陸上部あの人?」
「がんばれ~先輩」
「ぐっ頼んだ!!」
「まかせて!」
同着2位でなんとか栗木に渡し、最後最上が意地で青との差を縮め、三年へ繋ぐ
アンカー、陸上部の団長が怒涛の追い上げで青団に迫り会場が総立ちになる
だが、青団にはわずかに届かず
結果は二位で総合優勝は青団になってしまった
閉会式後、医療テントにいる、光莉を迎えに行くとベンチに座り、悔しそうに拳を握っている。
「……転ばなければ」
「それでもちゃんと走り切っただろ?」
きれいごとを言うなという顔をしてくる。どうしても結果が欲しかったようだ
「はぁ,,,,,何かしてやろうか?」
光莉は驚いて瞬きを数回してすぐにぶつくさと考え始め。
普段から命令を聞いてる、俺からいうのは初めてかもしれない。こいつは人一倍頑張ったし優勝獲れなかった変わりに何かしてあげたくなった
ご飯に誘ってもら借りを返すのにもいい機会だ
「じゃあ、ハチマキ交換」
「……そんなのでいいのか?」
俺はハチマキを外し、光莉も外してお互いに赤のハチマキをを受け取る
同じ色のハチマキを交換して意味あるのか?
「,,,,ありがとう!慰めてくれて」
さっきから機嫌が悪かったがようやく光莉が最後に笑ってくれてよかった
勝てなかった悔しさも、走り切った達成感も、全部混ざった一日を通して
体育祭は、静かに幕を閉じた。




