天才は体育祭でも一番を目指す [前編]
体育祭当日
今日もいつものように、光莉の家の車で送られているが
いつもと違うことが二つある
一つは光莉が寝ぼけていないこと
半年ほど一緒に登校したがこんなことは初めてだ
二つ目は,,,,
「悠斗君今日は頑張ってね」
「当たり前よ!頑張らなかったらグラウンド100周させるわ」
「またこの子はこんなこと言って!」
光莉の母親が来ていることだ
小学校同様、中学まではこの学校でも親は来るらしい
だけどほとんどの親は来れないことも多いだとか
なので学生同士で食べる人も多い
去年は妹と母親が来てくれたが
今年は無理らしいので一人で食べることになりそうだったが
昨日光莉に聞かれ
「明日お母さまと凛ちゃんは来るのかしら?」
「多分来れないと思うけど,,,それがどうしたんだ?」
「そう,,,,じゃあしょうがないから一緒に食べてあげる」
髪をくねりながら恥ずかしそうに言うが
「別にいいよ、気にしなくて一人で食べるよ」
「うるさいわね!黙って言うこと聞いて,,明日弁当作ってこないでいい?わかった?」
さっきとは打って変わり腕を組みながら命令してくる
優しいのか優しくないのかどっちなんだ
「わかったよ,,,すまんありがあとう」
「何のことかわからないけど,,,,さっさと頷けばいいのよ」
こいつは普段全然優しくないのに
たまに優しくなる,,,普段から優しくしてくれ
「みなさん学校に着きました」
「ありがとう小夜さん」
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい私たちも車を止めて荷物を置いたら
見に行くわね」
「はーい,,いくわよ悠斗」
「今日も腕を組むのか,,,,」
「当たり前でしょ」
こいつは母親の視線など気にならないらしい
後ろを振り向くと美咲さんがにこやかに手を振ってる
「あの二人付き合ってないよのね?」
「そのはずでございます」
「不思議ね、ふふ」
「そうですね」
,,,,,何か話しているが
嫌な予感がするのは気のせいだと思いたい
――――
まだ空気は少しひんやりしているのに、グラウンドにはもう熱があった。
校門をくぐった瞬間、目に飛び込んできたのは色の洪水だった。
赤、青、黄、白、紫。
五色のテントが一直線に並び、それぞれの前には団のイメージイラストが大きなパネルに描かれている。
俺たち赤団のテント横には、燃え上がる炎を背にした獅子の絵だ
牙をむき、前へと跳ぶ姿
「……気合い入りすぎだろ、すごいな」
思わず呟いてしまう
三年三組の美術部が中心になって描いたらしいが、迫力が違う。
布のテントの赤は朝日を浴びて鮮やかに輝き、その下には同じ色の鉢巻きを巻いた生徒たちが集まり始めていた。
その光景を見た瞬間、胸の奥がざわつく
俺は胸ポケットに入れた進行表をもう一度確認する。
タイムスケジュール、競技順、担当配置。
頭では完璧に覚えているはずなのに、なぜか何度も見てしまう。
「珍しく真顔ね」
「いつも真剣だ俺は」
光莉は
いつもの制服姿とは違い、体操服姿に赤い鉢巻きをしていて
生徒会補助の腕章もつけている。
「もしかして~緊張してるの?」
「……してないって言ったら嘘になる」
「素直ね!おもしろ」
くすっと笑う光莉
こいつは緊張とは無縁などだろう
うらやましい限りだ
「大丈夫よ。準備は完璧だった」
その言葉が、少しだけ胸を軽くした。
――――――
集合の合図が鳴る。
赤団、青団、黄団、白団、紫団。
それぞれが所定の位置へ並ぶ。
赤団団長が前に出る。
背が高く、声が通る。
「赤団!今年は優勝、取りに行くぞ!」
「おおおおお!!」
地面が震えるような声だ
その熱量に、俺の緊張が一瞬で飲み込まれる。
そして、開会式。
全校生徒が整列する。
来賓のあいさつや校長先生の無駄に長い挨拶を
熱い太陽の下で聞くとさらに長く聞こえるのは
俺だけではないはずだ
マイクの前に立ったのは、生徒会長――星野会長。
普段から少しギャルっぽい雰囲気のある人だが、今日はさらに華やかだ。
金色のアクセサリー風ヘアピン。
団長でもないのに堂々とした立ち姿
マイクを握り、にやっと笑う。
「みんな〜〜〜!!今日は待ちに待った体育祭だよね〜?」
一瞬、ざわつく
まるでアイドルのライブみたいだ
普通はもっとまじめな感じでやるものだが大丈夫なのか
周りの先生はもちろん遠い目をしていて
後ろにいる光莉と恵を見ると遠い目で会長を見ている
坂本先輩は会長に反論しないので全力応援するし
後輩の二人で、説得をしたが無駄だったのだろう
少し同情する
「でもさ、ガチでいこ?中途半端とかナシね?
やるなら本気。
負けて泣くくらい本気でやろうよ。」
「怪我だけは気をつけて!でも手は抜くな!
今日一日、最高にアツい日にしよ〜!!」
歓声が上がる。
(すごいな~会長は)
ギャルっぽいのに、すごいカリスマ性だ
その瞬間、空気が一段階熱を帯びた気がした
その熱気のまま、選手宣誓へと移る。
赤団代表の三年三組団長が前に出る。
右手を高く掲げ、空に向けて力強く宣言する。
「我々は正々堂々と戦い、仲間を信じ、全力でこの体育祭に挑むことを誓います!」
さっきとは違いまじめな声に
静まり返っていた空気が、一気に張り詰め
風邪をひきそうだ
――――――
最初の競技は団対抗綱引だ
団対抗リレーに出ない男子が出ることになり
団対抗リレーは各学年男女それぞれ4名選ばれる
総12名でリレーで走る
俺もまさか走れるとは思ってなかったが今年はギリギリ
クラスで2番目に早かったらしく選ばれた
光莉も選ばれてる
選ばれたからには頑張ろうと思う
頑張らなかったら怒られるしな
開始五分前。
俺は放送席横で進行表とストップウォッチを確認する。
「各団、入場準備お願いします!」
スピーカー越しに声を出ると、団員が一斉に動き出す。
その動きの速さに、準備期間の成果を感じる。
ロープの中央確認
ライン位置の最終チェック
審判の合図確認
よし問題ないな
ホイッスルが鳴る。
「よーい……」
ピーッ!!
掛け声とともに、赤団の体が一斉に後ろへ傾く。
土が削れ、靴底が地面を踏みしめる音が響く。
「引けぇぇぇ!!」
「うおぉおおお」
団長や団員の声が両方から発せられる
そこに
テントからの応援の声も混ざり
盛り上がっていき
赤団、一本目勝利し
歓声が上がる。
おもわず俺は胸をなでおろす
進行は順調。
時間もほぼ予定通り。
だが実行委員として気を抜くことはできない。
競技と競技の間に、次の団を素早く入れ替える必要がある。
少しでも遅れれば、午後のプログラムが押す。
「次、青団入場!」
走りながら指示を出す。
一年三組の恵も、クラスの列を整えている。
俺も頑張るか
――――――
俺は自分の競技、学年リレーだ
練習では流して行うので
団が一番かわからいので本番はみんなそわそわしていて
楽しみにしている
俺は1走目選ばれているので
バトンとビブスをほかの実行委員から受け取り
スタ―ト地点に向かう
手汗がじわりと滲み
自分でわかるほど緊張してる
「ふぅ~」
「がんばれー雨宮ー」
「赤団ファイト―!」
座ってるクラスメイトやテントから
応援の声が聞こえてくる
「がんばれ~先輩!」
思わずテントを見ると恵が珍しく大きな声を出して応援してくれてる
そして友達のかれんさんらしき人にからかわれてるのを見て
思わず笑ってしまう
「何笑ってるのよ,,,,,きも」
光莉は29走目で奇数なのでこっち側に座ってる
アンカー前だ
「応援されたらにやけちゃうのわかるだろ!」
「ふーん
がんばれ悠斗ふれふれ悠斗,,,どう?」
作り笑顔で言いその後かわい子ぶって応援てくるそして真顔になり感想を聞いてくる光莉
くやしいことに可愛いがそれと一緒に普通に怖い
「普通に」
「おい悠斗がんばれよ!」
「九条さんに応援されてるんだから一位とらなきゃ死刑だぞ」
「そうだよ雨宮君」
,,,,,,,,
「あぁ,,,当たり前だよ」
私の応援が効いたと思ってるのか
胸を張る光莉
これはにやけてるんじゃくて
苦笑いしてるだけだ
だけど緊張はほぐれたので一応感謝しよう
「準備してください」
膝をつき腰を上げ準備する
「よーい……」
パン
全力で走る。
視界が狭まる。
ただ前だけを見る。
バトンを繋ぎ、結果は二位で悔しかったが
後は走ってるクラスエイトを応援する
「すごいね悠斗!めっちゃ早かったよ!」
座りながら興奮した様子で言ってきてくれる蒼
「本当は一位とりたかったけどな~」
「青団の1走目の人陸上部人だったし」
「まぁそうだな終わったこと気にしないで、応援しないとな」
「そうだよ次僕の番だし応援してね」
ビブスを受け取り着て立ち上がりつつ
こっそり眼鏡を取って俺に渡してくる
「おい!いいのかけなくて?」
「いいよ!どうせ走ったら外れちゃうし
さやちゃんに怒らられたら助けてね」
青い顔でスタート地点に立つ蒼
あおいだけに
そのままバトンを受け取りながら走る
すると当然前髪がまくられ
持ち前の顔がさらけ出された
「だれ!あのかっこいい人」
ほんとだ!かっこいい~」
なぜか応援ではなく歓声が上がる
蒼は足がそんなには早くはないが
走るだけで盛り上がる,,,,うらやましい
2年1組にいる東條を見ると
青い顔をしながら絶望の表情が目に取れる
さっさと付き合えばいいのに
そこから順番が回ってきてとうとう光莉が走る時が来た
「がんばれ九条さん!」
「がんばれ光莉ちゃん」
「九条先輩がんばれ!」
などファンの方々から多くの応援が送られてる
光莉は立ち上がると、鉢巻きをきゅっと結び直した。
さっきまで俺に毒を吐いていたやつとは思えないほど、真剣な横顔。
ゆっくりとスタート位置に歩いていくその姿に、自然と周囲の視線が集まる。
「九条さん速いからな…」
「今年もぶっちぎるんじゃない?」
そんな声があちこちから聞こえる。
俺は腕を組みながら、見守っている
(まぁ、あいつは本番強いしな)
バトンを受け取ると同時に、赤いビブスが一気に少し前に青団女子を抜き飛び出した。
速っや!あいつ
練習で何度も見たけど、本番は一段階ギアが違う。
分かってたけど普通にすげ~
「いけぇぇぇ九条!!」
「赤団いけーー!!」
歓声が一気に膨らむ。
だけど青団も早く差はわずかしかない
コーナーに入り
一瞬、並んだ!
次の瞬間――
前に出たのは光莉
「うおおおお!!」
テントが揺れるほどの歓声。
光莉はそのままトップでバトンを渡す。
渡した瞬間、ようやく肩の力を抜いたのが遠目でもわかった。
戻ってくると、息を切らしながら俺の横に座る。
「どう?」
「…速かった」
「当然」
そう言いながらも、口元は少し緩んでいる。
悔しいが、かっこよかった。
その後のアンカーも粘り、最終的に赤団は僅差で一位。
テントはお祭り騒ぎだ。
団長が拳を突き上げる。
「いい流れだ!!」
俺はストップウォッチを確認しながら、タイムを記録係に渡す。
実行委員としての仕事も忘れない
だが胸の奥では、普通に嬉しさしかなかった
――――――
昼の空気が少し緩んだ頃、グラウンド中央に箱が置かれる。
午前最後の種目の借り物競争だ
「お楽しみ種目!借り物競争!」
得点は入らないし、完全な盛り上げ枠。各クラス五名がくじ引きで出場する。
そして先週なんと俺と蒼が選ばれた
光莉はあたりを引けなかったので出れない
今は出たかったのかしかめっ面で腕を組んだまま見学してる
ちなみに1位を取ると有名なお菓子がもらえる
最初は蒼。紙を引いて固まる。会場がざわつく中、一直線に2年1組テントへ向かい、東條の前で止まった。小声で事情を説明すると、東條は真っ赤になって首を振る。蒼が必死に頼み込み、ついに観念。
ぎこちなく指先を重ね、二人は照れながら走り出す。視線は合わず、でも手は離さない。
遅いのに妙に尊いゴールと同時に手を放し、蒼はしゃがみ込み、東條は顔を覆う完璧な青春枠だった。
爆発してくれ
そして最後は俺の番
スタート地点に立ち
笛があると同時に走り出す
箱に手を入れ紙を取り出す
(お題は,,,,,,
――
MAZIKAYO)
視線は自然と赤団テントへ向いた
そして、そのまま迷わず走り出した。
「おい雨宮!何だったんだよ!?」
テントに着いた瞬間、クラスメイトが詰め寄ってくる。だが答えている暇はない
俺は、出られなくて拗ねたようにこちらを睨んでいる光莉の前に立つ。
目が合った瞬間
そのまま――手を取った。
「えっ、なに?」
「出たいんだろ!行くぞ!」
「ちょっと!!」
ざわめきが一気に大きくなる。
俺はそのまま走り出した。後ろから光莉の足音がしっかりついてくる。
走りながら横を見ると、光莉は耳まで赤い。
恥ずかしそうにしながらも、ちゃんとついてきている。
正直、俺も恥ずかしい。
でも仕方ない。お菓子がかかっている。
蒼たちのときみたい遅くなく
お互い足が速いので
あっという間にゴールへ到着した。
(普段エスコートしたのが効いて笑ってしまう)
ラインを越えた瞬間、同時に手を離す。
……熱いな
気温のせいか、緊張のせいか。
お互い手汗でびっしょりだ。
「お題を確認しますね……はい、確認しました!商品は京都の八つ橋です!
八つ橋!?
食べたことないやつ来た!
「恥ずかしかったけど……やったな、光莉」
「本当よ!……で、お題なんだったの?」
少し視線を逸らしながら聞いてくる。
そんなに気になるなら教えてやるか。
「ツインテール」
「え?」
「だから、ツインテールだって言った――」
ぐりっ。
足を思いきり踏まれた。
「何すんだよ!」
「バカ悠斗!」
顔を真っ赤にして怒鳴る。
「ご飯食べに行くわよ!」
「はいはい」
歩き出す背中に並ぶ。
少し間があってから、
「……それ、半分ちょうだいね」
八つ橋を指差す。
「当たり前だろ。……今食べる?」
「ご飯食べたあと!行儀悪いわよ、ふふ」
さっきまで怒っていたくせに、もう笑っている。
「わかったよ」
体育祭の喧騒の中
ツインテールが揺れた。




