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天才でも怖がるし泣きもする

「怖い,,,私死んじゃうんだ,,,,うぅ~」


「大げさだ!まだ閉じ込められて1時間もたってないだろ?」


「私の気持ちはあなたにはわからないわよ!!」


そういいながら俺の座ってる足の間でうずくまる光莉

なぜこうなってしまったのを説明するには

1時間前にさかのぼる必要がある


あれは窓の外はもう橙色に染まりかけていて、グラウンドでは運動部の掛け声が遠くに聞こえている。昼間の喧騒が嘘みたいに、校舎の中は静かだった。


「……終わらない」


書類の山を前に、俺――雨宮悠斗は机に突っ伏した。


「さっきから弱音を吐かないで」


向かいに座る光莉は、相変わらず涼しい顔でペンを走らせている。姿勢は正しく、字も整っていて、いかにも“できる人”という雰囲気だ。


……ただし性格は別問題だが。


「去年の予算報告書、抜けがあるわ」


「どこ?」


俺は立ち上がりながらプリントを覗く

「体育祭の備品費。前年度分と照合しないと」


「……それどこにあるんだよ」


光莉は一瞬だけ視線を上げ、少し考えて


「たしか資料室にまとめてるはず」


旧校舎側の、あの古臭いところにあるのか


その時、生徒会長がのんびりと椅子を回しながら言った。


「じゃあ二人で行ってきてー。私ここ片付けてるから」


「なんで俺まで,,,,光莉一人で行ってきてくれない?

俺あそこ埃っぽくて嫌いなんだよ」


「あなたも連れてくに決まってるでしょ!

はやく行くわよ」


会長はニヤニヤしている。最近この人、完全に面白がっている。


仕方なく、俺たちは並んで廊下を歩き出した。


旧校舎側は、人の気配が少なく

窓はあるが、木が多くて光が届きにくい。空気が少しひんやりしている。


「こえ~お化け出そう」


「別に怖くなくない?ビビりすぎ~」

からかってくるが


「光莉のほうが怖がりだろ?」


「合理的に考えて、ここに危険はないわ!」


一見強そうな発言だがこいつはビビりで怖がりなのを知ってる

資料室に入ったらちょっと驚かせようかな?へへへ


資料室の扉を開けると、独特の匂いが広がる。紙と埃と、少し湿った木の匂いだ

天井の蛍光灯は一本だけで棚は高く、奥までぎっしりとファイルが並んでいる。窓は小さく、ほとんど光が入らない。


「去年の体育祭、体育祭、体育祭っと」


光莉が棚を見上げる。


俺は脚立を持ってきて、上段を探すと

上に何か平たいものを見つける

なんだこれ仮面か

ちょうどいいやこれでびっくりさせよ~


ちょうど光莉は資料探してるし今のうちに装着


「ちょっと光莉これ見てくれない?」


「見つかっ,,,,,キャー!!いった~」


光莉は驚きまくって入口にぶつかるほどビビった

作戦大成功


その瞬間だった。


ガチャン。


光莉の背後で重たい音が響く


ぶつかって扉が閉まったか?内側から開けるし関係ないか


「光莉を見ると腰をついtて涙目でにらにらんでいる

お、おい泣くのはずるいぞ」


「悠斗,,,,私が怖いの嫌いなの知ってるのに最低!!

会長たちに襲われたって言いつけてやるから!」


ガチやめろ


「ちょっとまだ資料見つかってないだろ!」


俺はあわてて光莉を止めようとするが

光莉は近づいてノブを回和して出ようと


ガチャン ガチャン


「なんか開かないんだけど?」


「鍵が閉まったんじゃないか?」


もう一度、鍵を開け閉めしようとすると

なぜか鍵が開かない,,,だと


「押して」


「押してる」


「引いて」


「引いてる」


嫌な静けさが広がる。


扉を叩くがこの時間帯にこんな場所に人が来るはずない


時間は放課後。部活も終わりかけ。旧校舎側に人は少ない。


「そ、そうだスマホ!」


「あ」


「……生徒会室ののロッカー」


まさかのまさか二人とも置いてきた


さっきまで喧嘩してい空気が、さらに少しずつ重くなる。


光莉が、やけに静かだ。


さっきまで怒っていたのに、今は何も言わない。


壁際に立ち、腕を組んでいる。

……違う。


組んでいるように見せて、実際は自分の腕を握っている。

「大丈夫か?」


「何がよ」


蛍光灯が、ジジ、と小さく鳴る。

その音に、光莉の肩がわずかに揺れた。


「俺がお前を驚かせたせいだし怖いかなと思いまして,,,」


さすがに罪悪感が湧く


「……ここ、狭いわね」


「まあな」


「暗いし」


「電気ついてるけど」


「そういう意味じゃない!!」



暗い場所で閉じ込められるなんて

どこの漫画だ?

いや,,,,前にもあったな似た感じで


「なんか,,,こんなこと前にもあったな」


俺は座り込みながら言うと


「そうね、あのときは私のせいだったけど

今回はあなたのせいだから出れた覚悟しなさいよ」


光莉も怖いことを言いながら座り込む

こういう時は現実逃避だ


俺は思い出す,,,あれはまだ、光莉と出会ってばっかで

一年前の、林間学校に行ったときに起こった


あの時も、夜で

山のキャンプ場で肝試しの企画をしていた時


クラスごとにグループを組んで、森の中のコースを歩く。

光莉は、当時から目立つ存在だった。


「肝試しとか大丈夫?」


なんて心配れても、彼女は平然としていて


「怖いものなどないわ」


俺はこいつに弱点なんてないんだと思っていた

俺はお化け役で、少しでも怖がらせてやろうと

白布を被って森の中に立っていた。


その時、遠くで物音がした。


ガサッ。


誰かが足を滑らせたような音。


近づくと、木の根に座り込んでいる人影。


光莉だと気づいた瞬間日頃の恨みと思い

ビビらせてやろうと思ったが


周囲に誰もいないし

グループとはぐれたのに気づた

それに

顔は見えないが、肩が小さく震えていた。


「……誰」


声が、かすれてあげた顔は、不安にあふれていたのを

中学1年の俺にも分かった


俺はばかばかしくなり布を外す。


「俺だよ,,,なにしてんだよ


「……雨宮?」


その声は、安心と悔しさが混じっていた。

俺に安心したのが悔しいらしい


「道、こっちだよ」


不思議だが余計なことは言わなかった

怖いのか?などバカにしたりできなかった

ただ隣を歩いた。

森は暗いし、足場も悪い。正直俺も当時は怖かった


彼女が転びそうになった瞬間、無意識に手を掴んで

助けると

その手は、冷く震えて

光莉は怖くなり立てなくなった


「立てない、おいていかないで」


泣きそうな顔をみて俺も不安になったが

俺も無言で隣に座り

俺も安心するために手を握って落ち着かせた


その時、俺の手も震えてるのに気づいたのか

初めて彼女が少しだけ笑ったの見た


どんなに天才でもこいつも人だと

それを知った瞬間だった


そういえばその日からだっけ、普通にしゃべるようになったのわ


再び、蛍光灯の下で、光莉は壁にもたれている。


「……次は閉じ込められた,,,最悪ね」


「……次は閉じ込められた、、、最悪ね」


強がってはいるが、声がさっきより小さい。


蛍光灯がまた、ジジ、と鳴る。


その瞬間だった。


「怖い、、、私死んじゃうんだ、、、うぅ~」


「大げさだ!まだ閉じ込められて1時間もたってないだろ!?」


実際は三十分も経ってない。

でも光莉は俺の言葉なんて聞いていない。


ずるずると近づいてきたかと思うと、そのまま俺の足の間にうずくまった。


「ちょ、おい!?」


背中が俺の腹に当たる距離。

狭い資料室で、変に体温が伝わる


「私の気持ちはあなたにはわからないわよ!!」


涙声で叫ぶ光莉

さっきまで“合理的に危険はない”とか言ってた人はどこいった。


「わかるわけないだろ、俺閉じ込められても死ぬとは思わねえし」


「暗いのよ!狭いのよ!静かなのよ!無音って怖いの!」


必死だ。

俺はため息をつきながら、背中越しに言う。


「どうせすぐ会長たちが様子を見に来るから大丈夫だって」

「理屈じゃないの!!」


ああもう!

俺は少し迷ってから、そっと頭に手を置いた。

びくっと震える光莉


「俺が言えることじゃないが,,,俺がいるから大丈夫だ」


「だから何よ」


「一年前も似たような状況だったけど大丈夫だったろ」


小さく息を呑む光莉


「……そんなに覚えてるの?」


「忘れるかよ。お前“置いていかないで”って言ったんだぞ」


「言ってない!」


「言った」


あの時の震えた声、ちゃんと覚えている。


しばらく沈黙。


俺の足の間で丸まったまま、光莉が小さく言う。


「……あの時、あなたも怖かったでしょ」


「いーや全然怖くなかった」


「手、震えてたくせに強がって、ふふ」


「うるせえ」


「あれで安心したの私」


意外な言葉に、言葉を失う。


「……は?」


「自分だけじゃないって思えたから」


少しだけ顔を上げるて言う光莉

涙は止まりかけているが、目はまだ潤んでいる。


「あなたが強いから安心したんじゃない。強がってるのに隣にいてくれたから安心したの」


そんなこと、初めて聞いた。


俺はゆっくりと腕を回す。

抱きしめるほどじゃない。

ただ、こいつが怖がらないようにするだけ


「……ばか」


でも背中を預けてくる。


資料室の空気は相変わらず重いし薄気味悪い

でもさっきほどの恐怖はない。

俺の鼓動がうるさいのか、光莉の呼吸が少しずつ落ち着いていく。


「悠斗」


「なんだよ」


「さっき驚かせたこと、まだ許してないから」


「今それ言う?」


「出たら覚悟しなさい」


「今度は俺が怖くなってきた」


少しだけ、笑い声が混じる。

その時


ガチャガチャ、と外で音がした。


「ん?」


「……聞こえた?」


「おーい?誰かいるー?」


会長の声。


俺は立ち上がり、扉を叩く。


「います!閉じ込められてます!」


「やっぱりー?」


外から鍵が回る音。

ガチャン、と扉が開く。


廊下の光が差し込み

一気に空気が変わる。


光莉は何事もなかったかのように髪を整える。

目元は少し赤いが、もう令嬢モードだ。


会長がニヤニヤしながら覗き込む。


「大丈夫?青春してた?」


「してません!」


声が揃いながら言う俺たちに


「資料室の鍵、たまに引っかかるんだよねー。ごめんごめん」


絶対わざと様子見に来ただろ。

廊下に出た瞬間、光莉が小さく呟く。


「……助かった~」


「ほんとにな~会長様様だ 」


「そうだけど,,,違う」


一瞬だけ俺を見てくる


「何が違うんだ」


「今回も、あなたが隣にいてくれてよかった」


言い終わる前に前を向く光莉の耳は少し赤い


「でも次から驚かせたら本当に訴えるから」


「はいはい」


「本気だから私」


「わかってる」


生徒会室に戻る直前、光莉がもう一度だけ言った。


「でも……」


「ん?」


「暗いところ、前より少しだけ平気かも」


「なんでだよ」


「さあなぜかしら」


俺をちらっと見て、先に部屋へ入っていく


残された俺は、しばらく立ち尽くした。


……それはずるいだろ。


資料室の恐怖よりも、よっぽど心臓に悪い。


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