天才(バカ)でも風邪をひくらしい
昨日
「明日も迎えに行くから」
そう言っていた光莉は、翌朝来なかった
いつもならアパートの前に黒い車が止まる時間だが
寝坊の可能性はな,,,いや十分あり得る!
ブーブー
メッセージの通知だ
届いたのは、小夜さんからの連絡
「お嬢様が少しお熱を出されました。本日はお休みなさいます」
珍しい去年は風邪などひいたことはなかったが
バカでも風邪になるらしい
こんなこと言ったら殺されるから言えないが
俺は「了解です」とだけ返し、いつも通り学校へ向かった。
隣に腕を組んでくるやつがいないだけで、やけに歩きやすい。
……のに、少し物足りないと思ってしまう俺はドMなのだろうか?
学校に着くと光莉のファンたちから質問攻めにあう
「九条様はどうした悠斗」
光莉様は今日一緒じゃないの?」
ええーい暑苦しい!!
「今日は風邪で休みだよ」
「そうか風邪なら仕方ないな」
「そうですね風邪ならしょうがない」
無駄に聞き分けがよく気味が悪い
光莉いつもこんなの相手にしてるの大変だな
「九条さん休みなんだ、心配だね」
心配?あんだけうるさいならきっと大丈夫と思っていたが
「そうか?どうせぐっすり寝てるぜ?」
「悠斗は心配じゃないの?いつも一緒にいるのにさみしくない?」
「逆だよ気が楽だね~自由を感じる」
どっちかというと寂しがり屋はあっちだ
「そんなこと聞かれたら九条さんに怒られるよ」
「休んでるから言ってるんだよ...蒼は先からスマホで何を取ってるんだ?」
「ええっと,,,進学してから少しsiて、とある人から
愚痴ってたら私に教えって言われてるんだ~」
「おいそれ光莉だろ!マジ勘弁してくれ」
そんなこと聞かれたら殺される
「だ、だめだよ!頼み事だししっかりしなきゃ」
蒼のめんどいところその一
無駄にお人よし
「もういいスマホよこせ消してやる!」
「きゃあ、やめてよ悠斗!乱暴しないで」
「女の子みたいに言ってうんじゃねーよ
スマホとってるだけだろ!」
ガラガラガラ
教室の扉が開いて
無精ひげが生えてて髪を
オシャレに結んでる人が入ってきた
担任の佐々木健一先生で美術を担当している
「おーいみんな座れ朝の会始めるぞ
なに暴れてるんだそこの二人」
「佐々木先生助けて悠斗に襲われる」
「何言ってんだ蒼!」
「いくら蒼が好きだからって公衆の面前で襲うなんて
恥を知ったほうがいいぞ雨宮~
それにしても男が好きだったとは今度職員室に広めといてやるよ!
他の男子生徒も気をつけろよ~」
笑いながら何言ってんだこの教師!!
「まじかよ,,,]
「俺一緒の教室で着替えるのやめるわ」
周りの男子から怖がられ始める
「何言ってんだ!ジジイ!イタい!」
「まだ三十代になんてことを言うガキ!後で生徒指導室に来なさい」
くそ!冤罪はかけられるし、怒られるし散々だ
今のうちに光莉に許してもらえるように考えとかないと
それから朝の会が終わり佐々木先生に生徒指導室に連れていかれ二人っきりだ
何言われるんだ?
「雨宮、これ九条に渡せるか?」
「,,,,,今日のプリント?なんで俺なんすか?」
「そんなのみんなの前で言ったら争いが始まるからに決まってるだろ」
「じゃあ頼んだぞ」
立ち上がって出ていく先生
そして手元にあるプリントを見て
過去一のため息が出た
「はぁーー」
――放課後――
俺は光莉が抜けた穴を埋めるため生徒会室に来ていた。
もし休んだ時は「行け」と命令されてる
「よし!こんなもんかな」
俺は資料を見直しながら一息つく
「ありがと!はるはる」
「いえいえ!命令なんで仕方なく来てるだけなんで」
「そんなこと言って~生徒会はいりたくなったらいつでも言ってね!」
「はいはい、気が向いたら入りますよ」
「めぐりんも入ったらうれしいってさ!」
「か、会長!変なこと言わないでください!」
「そうか,,,恵は俺のこと嫌いか」
「ち、違くて!うぅ~」
恵の目に涙があふれてくる
やばい!からかい過ぎた
「ご、ごめん冗談だ!恵泣かないでくれ」
俺は慌てて近寄りハンカチで涙をぬぐうが
軽く叩かれる
「先輩バカ!嫌い」
雨宮悠斗
後輩に嫌われると傷つく年ごろ
「あぁ~かわいそうなめぐりん
はるはる女の子を泣かせるなんてサイテー」
事実、泣かせてるので反論できない
「会長も嫌い!!」
「がーん」
星野のあ
後輩に慕われたい年ごろ
「じゃあ自分、光莉のところにプリント持って行かないといけないので
そろそろ帰ります」
「そうなのか、ちょうどいい」
「生徒会で配られたプリントをまとめながら坂本先輩が言う。
「雨宮、これ九条に渡せるか?」
「はい、いいっすよ!どうせ行きますし」
恵が小声で言う。
「お見舞い、喜ぶと思いますよ」
「ただの業務だって」
「じゃあお疲れ様です」
「今日もありがとね~」
――――
九条家は相変わらず広い。
門をくぐるのも、もう慣れたものだ。
最初は緊張で足が震えたけど、今は普通にインターホンを押せる。
「いらっしゃいませ、雨宮様」
小夜さんが微笑む。
「こんにちは。光莉はどうですか?」
「少しだるそうですが、元気はございます」
元気はあるのか。
それならまあ大丈夫だろう。
玄関を上がると、ちょうど階段の方から声がする。
「あら、悠斗くん」
振り向くと、光莉の母――九条美咲さん。
光莉と同じ金髪で長く美しくスタイルもとてもいい
前に光莉にスタイルお前と違っていいなというと
ガチギレされ少し怖かった
中学生なんだから当たり前なんだが
若気の至りだろう
顔も美人で40台とは思えない
柔らかい雰囲気の綺麗な人で、俺にはいつも優しい。
「こんにちは、美咲さん」
「来てくれると思ってたのよ」
「プリント係なんで」
「ふふ、そういうことにしておきましょうか」
この人はちょっとだけからかい上手だ。
「主人は今日も仕事で海外なの。相変わらず忙しい人」
「そうなんですね」
九条父には何度か会ったことはある。
挨拶はしてくれるが
じっと見られたりしてとても怖い
でも今日はいないらしい、少し安心
「光莉、部屋でふてくされてるわ」
「風邪ですよね?」
「ええ。でも退屈なのよ、あの子」
美咲さんはくすっと笑う。
「行ってあげて。きっと嬉しいから」
コン、コン。
「……入って」
ドアを開けると、ベッドの上に光莉。
髪は下ろされたままで
かわいいが薄い寝間着を着ている
目に悪い
ツインテールじゃないだけで、別人みたいだ。
俺はあまり見ないようにプリントを取り出す
「プリント持ってきてやったぞ」
光莉の部屋には数回来たことがあり
机やベットクローゼットなど高級感があるが
ベットの上や机の上には俺が取ってやった
誕プレで上げた鏡などが置かれてる
可愛い奴だ
「ありがと」
素直にお礼を言うのは珍しい体調でも悪いのか?
あ、風だったわ
「熱は下がったか?」
「まだちょっとだけ」
額に手を当てる。
「熱いぞ」
「ちょ、勝手に触らないで」
「確認しただけだろ」
「医者?」
「ただの雑用だ」
光莉はふっと笑う。
「学校どうだった?」
「平和だったな」
「どういう意味?」
光莉はにらみながら見てくる
「うるさいのがいないから」
「誰のことよ」
「心当たりあるだろ?」
少しむっとするが、元気そうだ。
ベットのの近くにある椅子に座ると、光莉がこっちを見る。
俺は光莉の目を見ながら
「……寂しかったか?」
「別に」
俺は強がってる
光莉の手を握ってやる
「そうか,,,俺は少し寂しかった感じもしてる」
「なっ何してるの?」
「妹が風邪をひいたとき手を握ったりしてやるんだ
お母さんの受けよりだが、どうだ?」
「子ども扱いしないで!」
恥ずかしいのか
つないだ手を外そうとしてくる
「病人なんだから暴れるな
中2子供なんだから甘えていいんだよ」
「早く良くなってくれ」
そういうと光莉は顔が真っ赤になり
反対方向に寝返る
「じゃあ眠くなるまで握ってて」
「命令ならしょうがないな…」
俺はため息をつきながら、握った手を少しだけ握り直す。
光莉の手は、やっぱり少し熱い。
「……あったかい」
「熱あるからな」
「そうじゃなくて」
小声で言うが
聞こえないふりをしてやる。
「なんで今日そんなに優しいの?」
「そんなのお前がしん、」
ブーブーブー
メッセージの通知音が鳴り響く
俺のスマホじゃなく光莉のスマホだろう
「誰かしら?ちょっと取ってくれるスマホ」
「あ、ああ!いいぞ」
(もし蒼からメッセージだったら終わり)
「逆だよ気が楽だね~自由を感じる」
「……」
沈黙
「……へぇ」
目が笑ってない。
「冗談だ冗談!」
「風邪が治ったら覚悟しといて」
でも手は離さない
むしろ少しだけ強く握ってくるところに怖さを感じる
――コン、コン。
「失礼いたします」
小夜さんが顔を出す。
「奥様が、お二人にお茶を、と」
「え、俺も?」
「もちろんです」
部屋に入ってきたのは、美咲さん。
俺たちが手をつないでいるのを見て微笑んでる
「仲良しね」
「ち、違う!」
「ただの雑用です」
「ふふ」
テーブルにティーカップを置きながら、にこにこしている。
「悠斗くん、今日はありがとうね」
「いえ、業務なんで」
「業務で手を握るの?」
「これは医療行為です」
「どこの資格かしら」
光莉が布団の中から足で俺を蹴る。
「母様、からかわないで」
「だって楽しそうなんだもの」
美咲さんは本当に楽しそうだ。
「主人がいたら、今ごろ眉間にしわ寄せてるでしょうね」
「やめてください怖い」
美咲さんは少しだけ真面目な顔になる。
「あなたが来ると、光莉は機嫌がいいの」
光莉が固まる。
「そ、そんなことない!」
「さっきまで退屈退屈って騒いでたのよ?」
「母様!!」
俺はちょっとだけ勝ち誇る。
「ほらな」
「うるさい」
「だからね、悠斗くん」
美咲さんは優しく笑う。
「これからも、今みたいに仲良くしてくれると嬉しいわ」
「善処します」
「政治家みたいに言わないで!」
そのあと、美咲さんは立ち上がる。
「ゆっくりしていってね。夕飯も食べていく?」
「いえ、さすがに」
「遠慮しなくていいのに」
美咲さんが出ていって、また二人きりになる
「……ねえ」
「ん?」
光莉が目を閉じながら言って来る
「……眠くなってきた」
「じゃあ寝ろ」
「手、離さないでね」
「命令か?」
「命令」
「はいはい」
数分後。
寝息が聞こえる。
やっぱり寂しかったんだろうな。
俺は天井を見上げる。
豪華なシャンデリア。
広い部屋。
俺のアパートとは天と地。
それでも今、この部屋はやけに落ち着く。
しばらくして、そっと手を抜こうとすると。
ぎゅっ。
寝ながら握り返される。
「……どんだけ寂しがり屋なんだよ」
小さく笑う。
そのまま俺は、椅子にもたれて座る
光莉が離すまで




