序幕 華胥の国
かつて、男神伏犧は母の故郷である華胥の国を探したと云われている。
誰も知らぬ地、誰も知らぬ国。
幻と謂れのある国は本当に存在するのか。
伏犧は母の遺した言葉を頼りに、流浪の民を引き連れながらも方々を何年、何十年と彷徨い続けた。
そして、どれだけの年月が経ったのかも数えきれなくなっていた頃、永遠の冬と呼ばれる山を乗り越えた先に、伏犧はようやく華胥の国へと辿り着いた――――この国では、そう伝えられている。
外の世界ではかつて、『華胥の国』と呼ばれていたらしいが、今はどうやら……もう忘れられてしまったのか、それとも――。
まあ、真実かどうかを探る術はないのだが。
この国――煌霞国は、只の人では到底辿り着けぬ国――反対を言えば、外界へ出ることも出来ぬ国なのである。
この国には、神々が座す。
この国には、神怪・鬼怪が跋扈する。
この国には、龍が当然のように空を舞う。
この国には、不死なる者達が存在する。
この国を統べし帝は、千年の時を生きている。
神の力が日々、傍らに感じられるほどに、厚き信仰と神の威光が共存し続けているこの国は、神話と幻想が交わり息づいている。
しかし、それが外界に知られることはないだろう。
煌霞国は、神の力によって封じられた国なのだから。




