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作品

 第一学年 五月十五日 水曜日

 兵庫県篠山市今田町 立杭陶器の里


 この日の一文字達の予定は立杭の文化に触れようということで、陶器の手造り実習だった。

 丹波焼きの窯元が居並ぶ一角にある陶芸教室で粘土をこねあげ、思い思いに思いと違う作品を創りあげるのだ。


 一文字は茶碗を造ろうと奮戦したが、いつのまにか平たくなりただの歪んだ皿になっていた。

 作品の裏に自分の名を刻むのだが、それが非常に不名誉な気がしたものだ。

 一文字の作品の横には永嶋の茶碗が置いてあった。

 上出来とまでは言えないが、少なくともそれは立派な茶碗であった。

 一文字は永嶋がトイレで席を外した隙にそ~っと上げ底にしておいてあげた。


「岡君、なかなか味のあるお皿ができてるやん」


 そう声を掛けてきたのは川本だった。昨日、そして今朝の事がまるで嘘みたいに、いつもと同じ川本だった。

 不思議そうに黙っている一文字を見て川本は明るい口調で言った。


「どうしたん?それより見て、この湯呑み、なかなかの出来とちゃう?これでも造るの苦労してんよ」

「おお、上出来やんそれ!」


 ピサの斜塔のように傾いた川本の湯呑みを一文字はやけに高いテンションで賞賛した。


「でしょ、でしょ!」


 鈍感な一文字でも無邪気な笑顔の裏くらいは分かる。

 川本は強いなって少し尊敬してしまった。

 反面、その強さに甘えている俺はどないやねんと思わざるをえない・・・


「あほかお前、これレモンが絞れるわ!」


 帰って来るなり、永嶋が思いっきり一文字の頭をひっぱたいた。


「痛った~、あほ、お前、なにすんねん! 俺、ちゃうって!」

「嘘付け、お前以外に誰がこんなことすんねん!」

「いや、川本が富士山とかいいながら、なんかいらっとったで」

「いや、私、何もしてへんよ!」


 一文字の急な振りに川本は慌てて両手を振った。


「見苦しいわ!」


 再び、永嶋に頭をはたかれた。

 三人はあほみたいに大笑いをしていた。


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