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ep.45 妹の異変

 第二学年 六月二十七日 土曜日

 永嶋家 居間


 外から帰宅した永嶋は、母親に空腹であることを告げ、昼食の準備を急かすと、手早くカレーライスを食卓に並べながら母が言った。

「勝、美佳を呼んで来て」


 めんどくせえと思いつつも、黙って美佳の部屋へと行き、扉を開けようしたが、どうしたことか中から鍵が掛けられている。


 仕方ないのでノックして、飯の準備ができたことを外から告げるが、返事がない。

(あ~、めんどくさいな)と思いつつも、再び声を掛けた。


「美佳、飯ができたぞ、はよ食わな、冷めてまうで」

 間をおいてからどこか弱々しい返事が返ってきた。

「今、食べたくない」と、


 普段は無駄に賑やかな妹だけに、少し気になったが、とりあえずは己の食欲を優先することにし、それ以上は何も言わず食卓へと引き返した。


 コンビニで週刊誌の立ち読み、玩具屋の入り口に置かれているゲーム機で奮戦した後、プラモ屋で戦闘ロボを視察、永嶋が家路に着いたときには、既に夕暮れ時だった。


「ただいま」と覇気の無い声をあげた時、部屋の奥からよそ行きの服装の母がやって来た。

「勝、いいときに帰って来てくれたわ。

 お母さん、今から出かけなあかんねんけど、美佳の様子がなんかおかしいんよ。

 ちょっと様子探っといて」


 めんどくせえと思いつつ黙っていると、母が続ける。

「あと、晩は昼のカレーが残ってるからそれを温めて食べといてね、じゃあ、」


 そう言って、母は玄関から出ていってしまった。

 ガタン、金属製の扉の閉じた音が耳に触れた後は、静寂だけが残された。


 兎にも角にも、腐っても兄は兄、美佳の様子が気になり部屋に向ったが、扉の鍵は堅く閉ざされている。

 ノックをしても返事はない。


「美佳、どないしてん?晩飯でも食おうや、昼も食ってへんねやろ」

「今はええわ」

 部屋の中から、昼よりも弱々しい声が返ってきた。


(これは重症やな)と思った永嶋は作戦を変えることにし、取りあえず晩飯を済ませることにした。


 昼より味が馴染んだカレーを食べ終えた永嶋が、テレビのバラエティー番組を淡々と観ていると、美佳が部屋から出てトイレに行ったようだ。

『生理現象に人は逆らえない』永嶋はこの時を待っていたのである。


 美佳がトイレから出てくるとそこには永嶋が待ち受けていた。

「お兄・・・」

「なんや美佳、なんかあったんか?」

「・・・・・・」

 問いかける永嶋から視線を外し美佳は黙り込む。


 少しでも場を和まそうと永嶋は微笑み、冗談ぽく言った。

「なんや失恋でもしたんか?何があったかお兄に言ってみ」

「・・・・・・」

 美佳が顔を上げた、その瞳には怒りの炎が爛々と揺らいでいる。


(もしかして図星・・・)


 永嶋に後悔の念が生じたのと同時だった。

「お兄になにが分かるん?」

 それは背筋が凍てつくほどに冷たく攻撃的な言葉だった。

 永嶋は思わず息を呑んだ。


「ちょっと頭いいだけで、まともに恋愛も喧嘩もできへんくせに!

 毎日、毎日、だらだら過ごしてるだけのお兄に何が分かるんよ!」

 美佳は、感情的にキレると永嶋を押しのけ、そのまま自分の部屋へと走っていった。

 永嶋は呆然と妹の背中を見送るしかなかった。


 二年程前にある人が言った、「頼れる人になっていれば・・・」と、



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