失ったモノ
第二学年 四月十九日 日曜日
阪急梅田駅周辺
正輝は恋人の美由紀を神戸に誘ったが、学校の友人と約束があるからと断られ、
暇をもてあましていた。
仕方がないので駅の近くにある大型書店で一時間ほど立ち読みをしていたが、
それにも飽きて、あてもなく梅田界隈をぶらぶらと歩いていた。
どれくらい歩いただろうか、そろそろ日も沈み、空腹感を覚えた正輝は、
近くにあったハンバーガーショップにでも入ろうかと思った時だった。
少し離れたところに見慣れた男女を見つけた。
「はっ?」思わず呼吸が止まり、目を疑った。
それはチームのリーダーである海老沢栄司と、浅岡美由紀、正輝の彼女だった。
「な、何しとんねんあいつら」
ここ最近、自分は感情を失ったのではないかと正輝は思っていたが、
目の前にある状況に、今は、怒りと不安が激しく鼓動を叩き、グッと拳を握り込んだ。
正輝に目撃されているとは知らない二人は、
肩を並べて楽しそうに話しながら夜景スポットであるスカイビルへと向って歩いて行く。
正輝は真実を突き止めようとそっと尾行をはじめた。
普段の彼なら「コソコソと俺らしくもない」と言いたいところだが、
この現実を前に建前は消え失せていた。
二人はスカイビルに着くと緑の生い茂る緑地へと入っていった。
足音を殺し、息を潜ませ正輝は後に続く。
生い茂る植物に囲まれたベンチに腰を降ろした海老沢と美由紀は、
しばらくの間、なにやら楽しげに話しをしていたが、突然黙りこみ、お互いを見つめ合っている。
植木の陰に身を潜ませ正輝は次の行動を待った。
そして瞳に映ったのは、熱い口付けをする男と女だった。
この時になって正輝は知ったのだった。
十字架を背負った己を支えていたのは、美由紀の存在だったということを、
そして今、それを失ったということを、
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