クラス割
第二学年 四月八日 水曜日
宝塚ゆずり葉高等学校 体育館
この日は、新学年での最初の登校日だった。
体育館に設置された移動式の掲示板に新しいクラス割が貼り出されている。
ただ与えられた結果を見るだけなのだが、それは己の命運を賭けたものでもあった。
神に祈りを捧げつつ、己の氏名と上原佐那の文字を懸命に探す。
隣の永嶋も真剣な眼差しでなにやら探しているようだが、それどころではない。
二年三組に『岡一文字』があった!
その真横に『永嶋勝』。
ある意味嬉しいが、今はそんなことはどうでもいい。
それより、それより・・・『上原佐那』、同じクラスだ!
一段落着いた一文字は落ち着いて掲示板を眺めていると、
棚橋満、川本涼子、林優子等、その他大勢的馴染みの輩がぼろぼろ出てきやがった。
賑やかな一年間を今年も送れそうな気がした。
ふと目に入り、そして流れた。
村瀬友里は二年六組だった。
新しいクラス、それは二年三組、教室の黒板には去年と同じく座席表が書かれていた。
一文字の目に最初に入ったのは窓際の前から四人目の上原、あれ?
目を疑った。
出来すぎだ。
上原の隣には岡と書かれていたのだ。
一文字は思わず顔をほころばせたその時、聴き慣れた冷たい声がした。
「また俺の前になったんが、そんなに嬉しいんか?」
よく見ると一年時同様、永嶋さんが後ろの席だ。
佐那はまだ教室に来ていない。
一文字がそわそわ、キョロキョロしていると林と嬉しそうに話しながら佐那が入って来た。
二人は座席表に目をやり、少しすると一文字の元にやってきた。
一文字が声を掛けた。
「おう、佐那、えらい奇遇やな」
「ほんまに、アンタが仕組んだんとちゃうん?」
佐那が応じるより早く、林が口を出してきたのだ。
「あほ、俺にそんな権力があるか!」
「何、その回答?権力があればやっぱ仕組むんや。
アンタはほんまに素直やな~」
「あほ、俺に権力があればお前を遠くに配置するってことや」
(今のは、なかなかの返しちゃうか)と自画自賛しかけていると、
そんなことは聞いていない林が今度は佐那をからかっている。
「佐那、岡君がアンタを狙ってるで。いやらしい目使って来たら、
いつでも私に相談しいや。
バシッと、はっ倒してあげるから」
「え、うん、ありがとう、」
「佐那まで、礼を言うな!」
三人で笑っていると、背後に話題に乗り遅れた真顔の永嶋がいた。
一文字は面白いので放っておこうと思ったが、意に反して林が構う。
「あれ、永嶋君やん、パッとせえへんから今まで気付かんかったわ」
「やかましいわ、気付かんでええわ」
「そんな世捨て人みたいなこと言わんと。
あ!私と席が離れてるからふてくされてるんや」
「お前のその自信はどこから湧いてくるねん」
「だって可愛いもん」
言いつつ、両手で頬を覆い可愛らしいしぐさを装う林は、
しばきたい奴、ナンバーワンだ。
林が自分の席へと去った後、川本がやってきた。
「岡君、また、同じクラスやね。
あ、また、永嶋君が後ろなんや、ほんまに仲いいね」
「おう、俺と永嶋は愛し合ってるからな」
「まあ、ほどほどにしときや」
川本はふと佐那に視線を注ぐと佐那の瞳がそれに応じる。
瞳と瞳が交わったとき、佐那は微笑み、川本に声を掛けた。
「上原です。同じクラスやし、これから仲良くやろね」
「うん、仲良くしよね、私は川本涼子、涼子って呼んでね。
そうそう、私も去年一年間、苦労したんやけど、
岡―永嶋ラインは相当癖があるから気をつけたほうがええよ」
「やかましいわ!」
それまで座して大人しく聞いていた一文字は、たまらず川本のでこにツッこんだ。
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