表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/42

次元

 第一学年 一月十三日 月曜日

 宝塚ゆずり葉高等学校 一年五組教室


「岡君、えらい熱心に勉強してるね、冬休みの補習授業が身にしみたん?」

 隣の川本が日本史の教科書を食い入るように読みふける一文字をからかったのだ、

 いや、正確には教科書に挟んだ図解の合気道解説書を読みふける一文字をからかったのだ。


 佐那に誘われて道場に行って以来、

 一文字は長年に渡り研鑽を繰り返し創り上げられた技に魅せられ、

 道場通いを始めたのである。


「そうか、相手の親指を自分の胸にしっかり付けんと、

 効かへんって言ってたな・・・」


 まるで川本の言葉が耳に届いていないかのように、

 一人でぶつぶつ言いながら自分なりのポイントを解説書に書き込んでいく。


 すかしを喰らった川本は永嶋に手紙を出した。

『最近の岡君はどうしたん?合気道の本にえらい熱心みたいやけど by涼子』

『去年の末から合気道をはじめたらしい、訳分からん技を掛けられて、正直、迷惑です』

『岡君にとって永嶋君は最高のモルモットやもんね♪』

『誰がモルモッ と永嶋が書いている最中に一文字が手紙を送ってきた。


『今日の予定 場所 宝塚市民体育館

 練習技 片手取り一~二教の表裏、諸手取り呼吸法の一~四法 以上』


『うんざりです』




 第一学年 二月十二日 水曜日

 宝塚ゆずり葉高等学校 階段踊り場


「あの廃墟の宝箱に入ってたんやって、

 そこまで進んだらもう戻れへんけどな、可哀相に、」

 昼食を済まし教室に向かう一文字と永嶋がクリアを競い合っている

 RPGゲームについて話しながら階段を登っていると、

 長い髪を揺らし佐那が降りてきた。


「お、佐那、どこに行くん?」

「うん、ちょっと売店に、」

「あ、そうなんや」

「うん、じゃあ、また」

 一文字は片手を挙げて「おう」と応じかけて、言葉を変えた。


「ちょっと待てい!」

「ん、なに?」

 すれ違った佐那が、不思議そうに振り返った。


「小手返しで、引っ張って相手の態勢を崩すのが、

 どうも上手くいかへん、どないしたらええん?

 今日の朝の授業中に色々と考えてんけど、いまひとつ分からん」


「それは」と呟いた佐那が一文字の手を上から被せるように掴み、

 くるりと転換すると、ガクッと一文字のバランスが崩れた。


「この転換するときに、自分の体を脱力して沈めるようにするといいねん」


「そうか、そこがポイントか」と応じる一文字の手を、

 佐那はすっと空いた手で包みこみ「えい!」と外側に手首を返した。

 一文字は手首が極められ、そのまま階段の踊り場に倒れ込んだ。


 佐那は微笑みながら言った。

「どんなときでも油断大敵やで」

「くそ、やってくれるわ・・・」


 傍らで二人のやり取りを見ていた永嶋には、こいつら意外に同じ次元にいるんと違うかと思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ