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球技大会1

 第一学年 十一月二十八日 金曜日

 宝塚ゆずり葉高等学校 体育館


 ピ、ピ、ピ~、試合の終わりを告げるホイッスルが鳴った。

 この日、宝塚ゆずり葉高校では冬の曇り空の下で球技大会が開催されていた。


 サッカーのトーナメントにエントリーした一文字擁する「バックレーズ」は、

 たかだか十五分の試合で守護神永嶋が5失点を冒して大敗北を喫し、

 その名に恥じず速攻で戦線からバックれた。


 たいした活躍はしなくとも、息は絶え絶え、喉はカラカラの一文字と永嶋は当たりつき牛乳自動販売機にやってきた。


「どけ、俺からやる」

 手前に立つ永嶋を押しのけ一文字が百円玉を投入して、

 横に並ぶ五つのボタンの左から二つ目を押すと、

 ガコンという音と共に牛乳が受け取りポケットに落ちてきた。


 一文字は瞳に敗北の色を湛えて牛乳と釣り銭二十円を拾い上げた。


「負け犬が、」


 冷たい言葉を浴びせつつ一文字を押しのけた永嶋が百円玉を投入し、一文字と同じボタンを押した。

 ガコン、音を立てて落ちてきた牛乳と釣り銭を寂しそうに拾う永嶋に、

「ようこそ、負け犬の世界へ」と温かく冷淡な瞳を一文字は湛えてあげた。


「さっきの試合、二人ともよう頑張ったね、大活躍やん、くっ」

 表向けに励ましの言葉を掛けつつ、無様な試合を嘲笑ったのは、三組の林だった。


「なんか用?」

 薄黒い顔を少し青くして問う永嶋に、林はひょうひょうとした様子で答えた。


「いや、さっきの試合を讃えてあげようと思って来てんけど、」

「嘘つけ」のうを永嶋が言いかけたときに、林は続けた。

「ていうのは嘘で、喉が渇いたから牛乳買いに来てん」

 そう言いつつ、林は百円玉を自販機に投入し、一文字達と同じボタンを押した。


 ガコンという音と共にフルーツ牛乳が落ちてきた。

「あ、当たりやわ」

 一文字と永嶋の犠牲の上で得たフルーツ牛乳を大して嬉しそうでもない様子で林は拾い、言いやがった。


「まあ、次の試合も頑張ってなって、あ、失敗した! トーナメントやから次ないやん」

(永嶋さん、この女、わざとやろうか?)

(さあな、こいつの考えは俺も理解できへんねん)


「なに男二人でひそひそ話してんの!でも、大活躍やったってのは本心からやで、あのやられようは、笑いがあったわ。ある意味、関西では何よりの活躍やん」

「ああ、確かに永嶋さんの5失点は永遠に語り継がれる伝説になるでしょう」

「そうそう、あと、岡君のキーパーまで届かんかったへっぽこシュートも殿堂入りやわ」

 そう言って林は一人で声をあげて笑いやがった。


(永嶋さん、懲役覚悟で殺りますか?)

(いや、どちらかと言うと、一瞬俺を売ったお前を殺りたい)


「また、二人でこそこそやってる。それよりも今日はもう何にもすることないんでしょ、

 私らバスケで準決勝まで進んでるから応援に来てや。じゃ、体育館で待ってるから」

 一人で勝手気ままにしゃべりまくって、林は行ってしまった。


 林の言うとおりにするのはしゃくだが、戦場を失った一文字達はやることも無いので、

 言われるがままに女子バスケットの試合でも応援しようと体育館に向った。


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