告白前夜
第一学年 九月十二日 木曜日
宝塚新大橋下 武庫川河川敷
河川敷の夜は、九月でも充分に冷たかった。ドッドッドというエンジンの音が冷気を切ると、見慣れたぼうず頭の胴長男が現れた。
男は橋の下に座る一文字を確認すると、革ジャンのポケットに両手を突っ込みながら一文字に歩み寄った。
「よお、銀ちゃん、呼び出してすまんな」
「おう、気にすんな、俺と一さんの仲や、それでなんのようや?」
「実はな・・・」
「実は?」
「俺、明日、戦います」
「戦う? 誰とや? 相手は強いんか?」
「ある意味、俺が今まで戦った中で最強や」
「なんやと! この小林銀平より強いんか!」
そう言いながらファイティングポーズをとる銀平に、一文字は唾を吐き捨てるように冷たく言い放った。
「銀ちゃん程度では、話にもならん」
「ほんまか~、それは気の毒やな~、多分、一さん殺されるで。それで、相手は誰や?」
「村瀬友里」
「友里って女子みたいな名前やな」
「いや、女子や」
「女の子と戦うんか? しかも、俺より強いん・・・」
言いかけて、銀平は事の真相に気付いたようだ。
顔を真っ赤にし、大きすぎる驚きのリアクションで一文字を指差し、叫んだ。
「まさか、一さん、告白か!」
「そう、その告白や」
「そうか~、そうか~、それはすごいな~、へえ~、そうか~」
首を左右に振りながら、感心した様子で銀平は繰り返した。少しして落ち着いて言った。
「一さん、男よのう」
「うむ、銀ちゃん、契機付けに一発、はってくれ!」
「うむ」と言いつつ、銀平は小さくうなずき、力んで叫んだ。
「一さん、気い入れろや!」
一文字は走れメロスばりに強力な一撃をはってもらった。
もう、深夜の二時頃だろうか。
もう慣れたはずの幹線道路を走る車の音が、今日はやけに耳に付く。
普段は気にならないカチカチという時計の音も異常に鼓膜を振るわせる。
眠れない・・・
眠れないから明日のことを考えてしまう。
考えれば考えるほど、胸が締めつけられ苦しい、苦しくて余計に眠気が吹き飛んでしまう。
何度も瞼を閉じたが、すぐさま開き、光を失った天井灯を見上げる。
もう、二時間もこの繰り返しだ。
「絶対だ、絶対、世の中に絶対はある!」
そう言いながら一文字は天井に両手を伸ばし拳を握る。
(自分を信じろ、永嶋の言葉を思い出せ、この頬の痛さを乗り越えろ!)
一文字は頭まで布団を被った。体温の温もりは、恐怖と戦慄に変わって一文字を一晩中、締め付け続けた。
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