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入学式

 第一学年 四月四日 木曜日 兵庫県立

 宝塚ゆずり葉高等学校 体育館


 体育館では入学式が行われていた。

 岡一文字は、かったるい、などと思いつつも姿勢はそれなりにお行儀よくしている。


 見たこともない奴だが一文字たちの代表である新入生代表の挨拶、

 特に歓迎しているようにも見えない上級生代表の挨拶なども終わり、

 入学式もそろそろ終わりに近づいたようだ。


 新しい学校、新しいクラス、友人が出来るだろうか、月並みだが心配してしまう一文字を誰が責める事ができようか。


 式が終わると自分達に割り振られた教室へ移動する。


 教室に入ると黒板には座席表が書かれていた。

 席は男子と女子の列が交互に並ぶように配置されているようだ。

 一文字の席は後ろから二列目の廊下側の席だった。


 一文字の隣には川本という平凡な女が座った。

 川本はちらりと一文字を見たが、他の女子と話はじめた。


 一文字は後ろの席に座っている奴を見た。

 そいつはセンター分けを失敗したような髪型で、肌は薄黒く黒ぶちの眼鏡を掛けている。

 若干小柄で、ぱっとした特長もなく地味そうな男だ。

「よお、俺は岡、君は?」

「永嶋、岡君はどこの中学やったん?」

「俺はうぐいす台中学、永嶋君は?」

「御所川中学」

「ふ~ん」

 両者、真顔のまま、しばしの沈黙が流れた。


 一文字は正面に向き直った。

 一文字は再び後ろを見やり若干馴れ馴れしく言った。

「俺は岡一文字、君付けはめんどうやからこれから永嶋って呼ぶから、俺のことを一文字でも一やんとでも好きに呼んでくれ」

「岡と呼ぶわ」

 薄ら笑いを浮かべ冷静な口調でそう永嶋は言いやがった。


 担任の自己紹介が終わると生徒の番だ。

 みな、出身中学、名前、趣味、など平凡な紹介を順にしていく。


 五人目、淡く茶色掛かった髪は肩まで伸び、新しいセーラー服が初々しい。

 目がパッチリしていて色白、俗にいう可愛い系の女だ。

 レベルは正直言って高い。


「村瀬友里です。御所川中学出身です。えっと、趣味は映画鑑賞です。これから一年間、よろしくお願いします」

 彼女はそう言って一礼すると席に座った。


 拍手の中、一文字は後ろの永嶋に声を掛けた。

「なあ、村瀬って永嶋と同じ中学なん?」

「おお、そうや、なんで?」

 永嶋は一文字のなにかを詮索するような目をしている。


 一文字は心中を隠すように、準備していた本音を語った。

「いや、同じ中学出身やけど、永嶋とは対照的やなって思って」

「どういう意味やねん」


 自己紹介も半ばを過ぎた頃、日焼けして、がっちりした体格の男が自己紹介をはじめた。

「うぐいす台中出身の棚橋です。趣味はアメフト観戦と軍事関係です」

 拍手に導かれ着席する棚橋にひいたのは一文字だけではないはずだ。


 自己紹介はさらに続き、一文字の番が来た。

「岡一文字です、趣味は映画鑑賞です、以上です」

 浴びせられる拍手の中で着席した一文字は、

  無難すぎてつまらない内容な上、出身中学を言い忘れたことを後悔し、

 永嶋の自己紹介は聞き漏らした。


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