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第4話 入学前からまともじゃない・・・

1000年ぶりに浴びた陽の光はかなり刺激が強かった。

暑いわけではないのにピリピリとくる日差しにうなされながら、私とルゥはアストライア魔術学院の正門の前にいた。

「学院長のエンディミール様に会いたいのですが。」

ルゥが二人分の招待状を門番に見せながら言った。

確認します。と言って、二人いる門番のうちの一人が招待状を確認した後、もう一人の門番に耳打ちをした。

口の動きから察するに『怪しいから学院長に確認してこい。』ってところかな。

しかし、耳打ちされた方の門番が学院内に向かう前に、門の向こうから非常に聞きなじみのあるの声がした。

「二人とも来てくれたのか。」

そう言って、初老の見た目からは想像もできない軽やかな身のこなしで正門を飛び越えてきたこの人がエンディことエンディミール・ワイズマンだ。

「お久しぶりです、エンディミール様。お変わりなさそうで何よりです。」

「あぁ、ルゥも元気そうで何よりだ。エルルは・・・随分と辛そうだな。起きたのなら手紙の一つでも寄越してくれればいいのに。」

「昨日起きたんだから手紙送るよりも直接来た方が早いでしょ。まぁ、そしたら日差しに焼かれて、とてもじゃないけど再会を喜ぶどころじゃないんだけどね。」

「道理で辛そうなわけだ。ここで話し続けるのもなんだし、続きは中で話そう。」

そういってエンディは門を開かせた。

門をくぐる間、門番の二人から何者なんだとでも言いたそうな視線を向けられたけど、1000年後には雷帝の名前は浸透していないのかな?

それなら私としては非常に助かるのだけど。

「あの人たちエルル様に対してなんですか、あの目。」

と隣を見たらルゥがかなり怖い顔で呟いていたけど、気づかなかったことにしよう、うん。

そうして、学院内に入り、広い校舎を5分ほど歩いたところで、

「ここが学院長室だ。」

と他の扉よりも、一回りくらい豪華な扉のある部屋に通された。

中には、普段執務をしているであろう机と、その脇に高そうなソファが一組置かれた対談スペースが設置されていた。

「ソファに腰かけて待っていてくれ。今、お茶を淹れるから。」

そう言って、エンディは奥にあるもう一つの扉の中に入っていった。

私とルゥが大人しくソファに腰を掛けて待っていると、しばらくした後にエンディが三人分のティーセットを持って戻ってきた。

三人して一口飲み、息を落ち着かせるとエンディが話し始めた。

「さて、招待状を持ってここに来てくれたってことは件の話は受けてくれるってことでいいのかな?」

「まぁ、アストライオの遺志だからね。ってかそんなの制服着ている時点で分かるでしょ。」

「あぁ、それ昔の制服だから。今新しいデザインに変わってるのよ。」

道理で門番の反応がおかしかったわけだ。納得。

「ちょっと今の制服持ってくるから少し待ってて。」

そう言ってエンディはまた席を立った。

10分ほど待った後に、誰かと話しながらエンディが戻ってきた。

「そういった雑務は私たちに任せてくださいといつも言っているでしょう。」

そう言いながら入室してきたのは如何にも厳しそうな女性の教師だった。

「おかえりなさい、エンディミール様。そちらの方は?」

ルゥが声をかけるとエンディは互いを紹介してくれた。

「こちらは我が校で教師をしてくれているアカディア・ウィルメディア先生だ。」

「アカディア・ウィルメディアです。教師の前なのですから席を立つべきではないですか?」

初対面で教師らしく生徒を指導しようとするなんていい教師なんだろうね。

ここで教師に目を付けられると碌な事にならなさそうだから私はソファに短い別れを告げて席を立ったがルゥは涼しい顔をしてお茶を飲んでいた。

アカディア先生はこめかみをひくつかせているし、エンディは苦笑いを顔に張り付けている。

「ルゥ」

私が声をかけることで初めてルゥは席を立った。

アカディア先生はいまだに怒りをにじませているが、エンディは安堵した様子で私たちの紹介を始めた。

「銀髪の背の高い子がルゥ、その隣の金髪の子がエルルア・シュレイガンだ。」

私達の名前を聞くと同時に、アカディア先生の表情が怒りから驚きへと変わった。

「エルルア・シュレイガン!?かの雷帝の子孫か何かですか?」

どうやら1000年後にも雷帝の名前は知れ渡っているらしい。頼むから変なことを言ってくれないといいけれど・・・。

「いや、本人だよ。」

言いやがった。

軽く睨みつけたが、当のエンディ本人は気づかないふりをしていた。

すると、アカディア先生が流石に反論しにきた。

「そんなわけないでしょう。だって『雷帝』エルルア・シュレイガンといえば、肖像画に描かれているあの凛々しいお姿のはずでしょう。多少の差異ならわからなくもありませんが、彼女は似ても似つきません。第一、エンディミール様という例外がいらっしゃいますが、普通人間が1000年も生きていられるわけがありませんし、さすがに冗談だとしか思えないのですが・・・。」

この人意外と口悪いな。

まさか否定する前に全否定されるとは思っていなかった。

流石にそこまで言われると少し傷つくのだけど・・・。

「無礼も大概にしてください。」

私が少し傷心していたら、隣から普段のルゥからは、想像もできないようなドスの効いた声が聞こえてきた。

「ここにいらっしゃるのは間違いなくエルル様本人です。たかが肖像画ごときしか知らないあなたがエルル様を語らないでください。」

「そういうあなたは生徒であるにもかかわらず、いつになったらその態度を改めるのですか?そちらこそ大概にしていただきたいものです。」

ルゥの怒気を孕んだ声に怯むことなくアカディア先生は返した。

その後も、二人の言い合いはとどまることを知らず・・・。

気が付いたら私たちは学院の闘技場にいた。

「私が勝ったら、あなた方の入学を認めません。万に一つもないでしょうが、もし私が負けたらなんでも一つ言うことを聞いてあげましょう。」

「構いませんよ。それでは私が勝ったらあなたには教師を辞めていただきましょうか?」

「いいでしょう。」

私達が止める間もなく決闘する流れになっちゃったし。

「エンディ、止めなくていいの?」

「いやぁ、あれに口挟むの怖いじゃん?女性の怒りほど怖いものはないって。」

「しっかりしてよ賢者。」

騒ぎを聞きつけた生徒が何事かと闘技場に集まってきてしまったせいで、完全に後に引けない流れになってしまった。

こうして、入学する前から悪い意味で目立ってしまったのであった。

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