永遠の盟約
『娑羅双樹の花の色 強者必衰の理を
現す』
琵琶法師が語る平家物語より、ずっと昔から平成の現代まで
繁栄する一族がある。
『天皇家と藤原家』
彼らがこの地に拘った訳は…
未来永劫の繁栄が約束される地だから。
「春、起きてよ!スゴいよ!」
莉夏にかなり激しく揺さぶられて目が覚めた。
有間の部屋で待機している内に寝てしまったらしい。
夢の中でナレーション付きで、竜田川と山に挟まれた砂州が蜻蛉が繋がるように飛ぶ姿となり、
やがてそれが地球儀の上の日本の姿に変化する壮大な夢を見た。
部屋に夕飯を食べて8時には入った。
カーテンを全開にし、部屋の明かりは消して身を潜めた。
莉夏に促されて窓際に行くと1人のスーツの男がエレベーターを4階で降りて共用廊下を歩いているのだが、
その肩や頭の上と限らず足にも長い髪のボロボロの服の男達が絡み付いている。
ギャーギャーと噛み付いたり首をもごうとしているが、
男は全く気付かないようでポケットに片手を入れて鼻歌を歌っている。
「今、何時?」春が聞く。
「10時だよ。遅い帰宅のリーマンだね。」有間が部屋の時計を指差し答える。
やがて1番階段寄りの401号室に入っていった。
幽霊たちは、部屋の中に出たり入ったり廊下をうろうろするものや
401号室に群れている。
「あの人、見えないのかな?」
「全然気付いてないよね〜ある意味すごい!」
3人で感心する。
「あの人に取り憑いてるのを他の人が見て大事になってるんだよね、きっと」莉夏が推測する。
「あの人が帰宅遅いから、それ以降に廊下歩いた他の住人がビビるわけか!」春も納得する。
「でも、あの人誰だろ?どこ勤めてるんだろ?
お母さんに聞けば分かるか!契約書あるし。
莉夏なら見て良いし!」
有間が言いながら階下に降りた。
「でも、なんで幽霊に取り憑かれてるんだろね〜
スゴい怨まれてるのだけは分かるけど?」
春が首を捻る。
「残念!お店の金庫の中だって!
でも大手のサラリーマンらしいよ。見たかったら
明日、お店おいでって。」
言いながら、有間が戻って来た。
と、「うわああ〜ッ」悲鳴を上げてカーテンを閉めた。
「なんで明かり勝手に点けたの!
こっちに気付いて窓に張り付いてたじゃん!
どうすんだよ〜っ!」有間が泣きそうに。
「あっ、ごめ〜ん!つい。じゃ、私達は帰ろうか?
春!」
莉夏が舌を出して謝り、春の手を引き有間の家を後にした。
後ろで有間の悲鳴が響き渡った。
自分達は暗闇に紛れて向かいの自宅に戻る。
すると母の栄子が薔薇の花束を持って出迎えてくれた。
「どうしたの?その花?」
「さっきまで、マンションの賃貸の人が貴女に挨拶にって
来てたのよ〜
でももう遅いからって帰って貰ったんだけど。」
ちょっと困ってる風だ。
「ふ〜ん、そうかあ〜別に良いのにね。
お母さんにあげるよ〜」
貰い慣れてる莉夏は興味がなさそうだ。
「え〜、アンタ華道部部長でしょ?世話してよ〜
お母さん、忙しいのよ〜」
「え〜っ、知らない人の花束とか怖いし!
お母さんにあげるよ〜」
全くつれない。
結局1年から4年まで莉夏の取り巻きは変わらずだった。
でも数人紛れ込んでた女の子と付き合う男もチラホラ。
しかし、結局莉夏様信者だから捨てられて
なぜか莉夏を逆恨み。
刃物沙汰も2.3回あった。
春も急に女の子達に呼び出されて、
「アンタ良くあんな性悪と仲良くしてるね!
利用されてるだけだから!」とか意味不明の当たりを
受けたりした。
そんなこんなで、莉夏はすっかり自分を好く男に辟易してしまっているのだ。
「そこら辺に逆さにして束ねて干しとけば?
ドライフラワーになるよ。」
「あら?そうなの?じゃ、そうしょう〜」などと話している。
あまりに花を貰いすぎて処理のプロになってしまったのだ。
本当の莉夏を知れば、ファン減るのになあ〜とか思ったが、
イジメられて喜ぶ人も要るからなあ〜
美人は大変である。