毒饅頭
大阪府警の試験後、隣の席だった子に誘われ
数人でお茶へ行く事に。
「なっ、なっ、お茶しばかへん?」と声掛けられた時はビックリしたが。
朝から晩まで同じ教室でペーパー試験から体力テストも共にしたので
教室全体に不思議な連帯感が生まれる。
試験あるあるだ。
「東京からわざわざ!スゴイね〜」などと感心されたが。
「2次でまた会えたらイイねえ〜」などとしんみりする。
大阪の子はまたフレンドリーで親しみやすい。
受かったら大阪府警も良いなあ〜とか妄想してると
1人が急に小声になる。
「知ってる?西成でこの頃怪死が続いてるの!」
「あそこはオッチャン等が道端で死んでるの
当たり前やん!今更〜」誘ってくれた隣の席の子が
足を組んで当然と言う顔してる。
「それがそうちゃうねん!」小声だった子が、かなりデカい声で手を招く様に振って話し出す。
「初めはそう思われてたんやけど、揃いも揃って口から
泡吹いてたらしいで!」
「死因が同じってのは変やな、確かに」
皆にそういうのに興味ある子ばかりなのでテーブルに
前のめりで話しを聞く。
「皆、饅頭を食べて死んでるらしいねん!」
「ひえっ、毒饅頭かいな?」
「でも、そんなん売ってる店すぐ分かるやろ?」
道頓堀の太鼓叩いてる人形と同じメガネの子が、眼鏡をクイクイしながら言う。
「アホかいな!アソコは露店が多いねん。ブルーシート敷いて勝手に食べ物売ってる奴だらけやで!
誰が売ってるかなんか分からへんて〜」
春の隣の席の子は、西成に詳しいようだ。
「警察もなあ〜あんまり本腰入れて捜査してないらしいで。」
「あ〜なんか分かるわ。町の掃除してもらってるくらいの感じなんやろなあ〜」皆が押し黙ってしまった。
春はビックリする。
「えっ、そんな事あるの?ホントに?」皆の顔を見る。
「東京の子には分からへんやろなあ〜
あそこは日本やけど日本ちゃうねん。」
「そうなの?」奈良も部落とかあったが、大阪もディープスポットがあるようだ。
面白いぞ!関西は!
「あっ、目がキラキラしてる!あかんで!女の子が
ふらふら見に行って良いような町ちゃうで!
絶対行ったらアカンで!」
全員にかなりキツく注意された。
本当に危険みたいだ。
また会おうね〜などと言って別れた。
奈良の秋津島に戻ると有間と莉夏が顔を突き合わせて
悩んでいた。
「どうしたの?」
「とうとう1階の村民階にも現れたらしいのよ、
例のアレが。」
「おじいちゃんだしさ〜腰抜かして倒れてしまって、
入院になっちゃったのよ。」莉夏が苦虫潰したように
赤い唇をへの字に結んだ。
「わあ〜それは、実害出てきたね!」春も心配する。
「歯が抜けた落ち武者だったらしいんだ。
俺が見たのは首だけだけど、確かに男なのに髪長かった!」有間がちょっとキラキラ目で話す。
「でも、ここら辺そういうの無かったはずなんだけど…」莉夏が首をひねる。
「うん、城が全く無い地域だからね〜古文書にも
そういうの無かった。
だからこそ!面白いよね〜もっと古い時代の亡霊かも?」
有間の機嫌が直ったようだ。
シャーマンの話し聞いてから、ずっと機嫌が悪かったが。
「とりあえず塩だけ撒く?」春は解決方法が分からず
提案してみる。
「それはお葬式の後だね。盛塩かなあ〜やはり」
莉夏が自然に春のボケをスルーして台所へ行く。
「あっ、これ味塩だわ〜ダメかも〜困ったな〜」
「ねえ、もしかして今夜も行くの?」浮き浮きしてた
有間が急にビビり出す。
「俺は、もういいよ!パス、パス!」
ソファの後に隠れたが、春が羽交い締めにする。
「か弱い女子だけで行かすつもり?」
「どこが!?」
問答無用で玄関へ連れて行った。