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中之島

母や祖母は芦屋の家の方だが、父と尾高は

仕事のため中之島のタワマンに住んでいる。

ハウスキーパーや使用人が入っているので

生活には困らない。

念の為、新聞やニュースに目を通すようにしてたが、

特に奈良で事件は起きた様子はない。

秋津島の屋敷に送り込んだ毒饅頭がどうなったのか?

全く情報は入ってこなかった。

1月も経てば奈良の事など忘れてしまった。

西成のホテル建設が決まり、尾高はホテル併設の免税ブランドのアウトレットモールの責任者に抜擢された。

にわかに忙しくなる。

毎日会社ビルとタワマンの間10分の行き来だけの生活になった。

明日はプレゼンなので午前様で会社を出る。

ビルだらけの夜景は圧巻である。

牧歌的な奈良のさらに片田舎の古い庄屋屋敷の中の

幽霊マンションなど

遠い記憶になりつつあった。

タワマンのロビーもさすがにこの時間は誰もいない。

コンシェルジュのカウンターも誰もいない。

呼鈴を鳴らせば誰かしらの出て来て対応してくれるが、

さすがに12時を過ぎたロビーはガランとしてる。

尾高の靴の音だけがホールに響く。

微かにBGMが流れ、ガラスの向こうの庭には滝が流れている。

ロビーの中央には真夏なので白いゆりの生け花が100本か200本くらいの束で壮麗にディスプレイされている。

高さは2m弱。

回り込むと花が生けられた巨大な伊万里の花瓶の辺りに女優帽を被った女が真っ白なドレスで立っている。

斜め後ろから見た長く巻かれた美しい髪が、秋津莉夏に見えた。

「莉夏さん?」

と声を掛けたが回り込んだのか?

姿が見えなくなった。

「あれ?気のせいか?」

良く考えればオートロックなので、ここに入れる訳が無い。

それに今は夜中だ。

流石にあの帽子は変だろ?

百合の花が垂れて、そう見えたのかも?

気にせずコンシェルジュ横の第2のオートロックを解除し中に入った。

長い内廊下が真っ直ぐ続いている。

「はあ〜面倒臭い」

タワマンは、建物に入ってから自宅までが長く面倒なのだ。

大理石の円柱が無数に立ち、所々にスポットライトに

浮かび上がる天然石の彫刻達。

尾高が通り過ぎた後は、美しい女神像がスーッと床に落ちていく。

尾高は気付いていない。

やっとエレベーターホールに辿り着いた。

ここでまたパネルにキーをかざし、ロックを解除した。

と背中を誰かに押された。

振り向くと誰もいない。

が下でギャーギャーと潰れたカエルのような声がする。

下を見ると5.60人の汚れ腐った男達や女達が尾高の足に絡み付いている。

尾高の身体を這い上り首を絞めながら顔に噛み付く。

肉を引きちぎり目玉をくり抜き、心臓や内臓に手を突っ込み引き釣りだす。

尾高は叫んでいるようだが、喉を食われているので

ヒューヒューと言う空気音しか、すでにしない。

エレベーターホールの反対側もガラス窓でホールの滝と繋がった庭だ。

尾高は逃げようとするが、そのガラス窓が行く手を阻み

身体はバラバラに食い千切られていく。

外には白いドレスと帽子の莉夏がいる。

残った片目で確認できたが、瞬く間にその片目もえぐられ

どこかに飛ばされた。

エレベーターホールのガラス窓はやがて血しぶきで

中は見えなくなってしまった。

莉夏だったものは、やがて姿を変え…アキラに戻った。

と尾高を食い千切っていた亡霊達も消えた。

滝の陰から、春、莉夏、有間が出てきた。

「アキラくん、終わったの?」春が血しぶきに面食らいながら聞く。

「うん、亡霊達も気が済んだみたい。皆、消えたよ。」

「まさか、あの数の幽霊を一時でも実体化できるなんて!」

莉夏が驚く。

「う〜ん、良かったのかな?う〜ん、う〜ん」

有間はあまりの惨劇に後悔し始めている。


「さあ、帰るよ。僕に皆触れて。」

身体が宙に浮く。

そう、皆魂だけでここに来たのだ。

あっという間に大阪平野が星屑のように眼下に広がる。

目線の高さに山の上の遊園地が見える。

「あっちが奈良だよ。

あの山の麓が秋津島なんだ。」

夜空を飛んであっという間に秋津島に戻った。

マンションのエントランスで円陣を組む自分の身体が見える。

その中にスッと戻った。


「はあ〜しんどっ!」アキラがペタンと尻もちをついた。

「そりゃ、こんなスゴい事したら疲れたでしょう?」

春がアキラの背中を支える。

「ちがうよ〜身体に戻ると重いんだよね〜

よく皆、この重さに我慢できるよ、スゴいよ!」

アキラにとっては、そっちの方が大変なのだ。


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