怒り
近鉄電車で奈良に大急ぎで戻る。
途中の神武天皇を苦労させた山のトンネルがやけに
長くもどかしい。
やっと街まで戻って来た。
もう夕闇が迫っていた。
有間の母ももう店を閉めて帰宅中のようで連絡がつかない。
莉夏の母の栄子も問屋を回って直帰するらしく連絡がつかない。
アキラの母には連絡がついたので、何とか何も口にするな!玄関開けるな!と言えたが、
相手がどう来るのか?分からない。
単線電車の乗り場に着いたが、電車が出たばかりだ。
3年前は20分に1本だったが、今は15分に1本になったが
それでも待ち時間がもったいない!
「タクシーで帰ろう!」莉夏と有間が身を翻して乗り場に走る。
春もアキラを連れて走るが、長年眠っていた身体は
筋肉がほとんど無くて、
今日1日の消耗が激しかったのか?
もう歩くので精一杯なのだ。
「大丈夫?アキラくん」春が心配する。
「悔しいな…幽霊だとあっという間にどこでも行けたのに…
身体って不自由だよね…」アキラが苦しそうに話す。
「そうだね。でもお母さんと話したり出来ないし。
学校も行けないし。
やっぱり身体がある方が良いよ。乗って!」アキラを背に乗せ春がダッシュした。
タクシーに乗り込み急ぐ。
「道が混んでなかったら後15分で着くよ。」
日は落ちたが、まだ空はピンクとブルーの縞模様が
微かに残っている。
秋津島の屋敷の大門に着いた頃には、日は落ち真っ暗になっていた。
大門をくぐると有間の家には明かりがついていない。
莉夏の家だけ明かりが。
「お母さん!」と叫び、莉夏と有間が飛び込んだ。
2人は夕飯の準備をしながら、まさに饅頭の包装紙を
開けた所だった。
「食べちゃダメーーーッ!」
莉夏が叫び有間がテーブルから饅頭を床にはたき落とした。
北部建設の住宅販売部門のブランド名が付いた包装紙。
やはり、尾高は毒饅頭を莉夏達に食べさせようとしたのだ。
いや、アキラは食べないだろうし莉夏や有間も若い子はあんこもの苦手な事が多い。
家族を狙ったのだ、最初から。
春が周りを見るとソファのテーブルにもう一つ包み紙が。
「これは?」春が怒鳴る。
「あっ、それは、畑中さんに後で届けようと…
って、何よ!アンタ達!」
呆気に取られていた小夜子と栄子が怒り出した。
が、そんな事は無視して莉夏と有間は饅頭を回収し
外の生ゴミバケツに放り込んだ。
多分、警察に持ち込んでも無理だ。
尾高は足がつかないようにしてる。詫びの書かれたコピー紙も一緒に捨てた。
家の中にある事自体、許せなかった。
畑中さん家にアキラを連れて戻る。
畑中さんも無事だった。郵便物も宅配も無かったようだ。
アキラは疲れているだろうに、玄関先まで3人を見送る。
「僕、必ずやるから。お姉ちゃんお兄ちゃん、手伝ってね!お願い!」
目が怒りでキラキラしている。
「私達もこのままにする気は無いわ。」莉夏がやはり
キラキラした目で返事した。
「当たり前だ!畜生〜」あの有間まで怒っている。
…なんだろう?
この3人は、けっして怒らせてはいけない人達な気がする。
屋敷周りが明るい感じがする。
いつもは不気味なマンションまで青白い光が黄色いオーラに飲まれている。
大地自体が発光しているような…




