お詫びの品
「あら?これは?」
有間の母、小夜子が不動産屋のカウンターに
置かれた和菓子らしい包みに気付く。
「さあ、私もお昼に出てたので…帰って来たら
置いてあったんです。」店の従業員のお姉さんも首を
かしげる。
「私も奥でお弁当食べてたけど、呼鈴鳴らなかったわね〜」包みを持ち上げると紙が。
コピー紙に長々と謝罪文が打ち込まれていた。
小夜子への感謝と307号室の畑中さんへ直接謝罪できない心苦しさ等がつらつらと書かれていた。
「あら〜401の尾高さん、来てたのね。
そうかあ〜あんな事あったから、顔合わせづらかったのね。」
包みは2つ。1つは畑中さんへ、そしてもう一つは小夜子と大家さんへと記されていた。
「今頂こうと思ったけど、莉夏ちゃん家も一緒だと持って帰ってからね。
莉夏ちゃんも有間もアンコ苦手だからなあ〜
私と栄子さんで食べれば良いか♪」
机の引き出しにしまった。
西成の街に入ると騒然としていた。
尾高に憑いてる霊達が教えてくれたフェンスに囲まれた広場の辺りだ。
区は公園として作ったが、寝泊まりする浮浪者が溜まるのでフェンスを張って深夜は出入りできない様にしているのだ。
だが結局、違法な露天が並び破格の値段でカップ麺や饅頭、あんぱん、賞味期限の切れた惣菜などを売っているのだ。
区や警察が何度撤去してもブルーシート1枚広げて、あっという間に店を開いてしまう。
イタチごっこなのだ。
その公園の傍らの雑居ビルに人が群れ消防車や警察が入っている。
「何があったんですか?」春がアキラの手を引きながら小走りで割烹着を着たずぶ濡れの男性達に聞いた。
「ひで〜よ!2階で饅頭作ってたら、ヤクザが乗り込んできて社長撃たれて、ワシらは命からがら飛び出して来たんだよ!」
「そのまま火を着けて逃げやがった!
大急ぎで消防呼んだんだよ!」口々に話をする。
「あ〜っ、皆コッチ来て〜話し聞くから!」
なんか聞き慣れた声が…
「あっ、奈良の元気な子!」
「株やってる刑事!」
3年前のため池事件の若い刑事だ。
「君たち、またつるんでんの?大坂まで遠征かい?」
聞き取りは他の刑事に任せてビルの角に連れてこられた。
どうも株の話を同僚に聞かれたくないらしい。
「これは多分ヤクザの抗争だから、君達あまり関係ないよ。」
「そうなんですか?」莉夏が聞く。
「東京のI組の流れモンが、Y組のシマで許可なく毒饅頭作ってたらしい。」
「なんで毒を?」
「さあ、でも地元のヤクザはそれを宣戦布告と取ったんだよ。
で殺して店潰した。」
「でも通報早かったから良かった。ボヤ程度で済んだよ〜状況証拠消されるとこだった。」
若い刑事はそのまま捜査に戻ってしまった。
「おかしくない?毒饅頭の幽霊達は、尾高に憑いてたのに。
毒饅頭作ってたのは殺されたヤクザになってるよ!」
春が通天閣の下の串カツ屋でバクバク食べながら
話す。
「う〜ん、これは裏があるよね〜
でも府警では抗争として片付けられるんだろね、多分。」
莉夏がせっかくワンピース着てるのにオッサンみたいに腕組みして唸っている、台無しだ。
「俺、その地元ヤクザもグルだと思うな〜」有間が頼んだ玉ねぎの串カツをシャクシャク言わせながら呟く。
「どういうこと?」春が聞く。口の周りがソースとパン粉付いたままだ。
アキラが呆れたようにため息をつく。
「食べるか?話すか?どっちかにしたら?
行儀悪いよ!大人なのに!」
有間と春がしゅんとする。




