迷子
「どうすんのよ〜2人消えちゃったよ〜」
アイスをアキラが欲しいと言うので春が付き添って
買って帰って来たら!
莉夏と有間が消えていた。
「さあ、トイレでも行ったんじゃない?
待ってたら来るよ。」
アキラはソフトクリームが溶けるのが早いのが気になるらしい
必死で食べている。
よく考えれば、春は大坂は警察の試験会場行ったのみ。
そこ以外、どこも何も知らないのだ。
いや、奈良だって秋津島と単線の起点駅の「街」しか
知らない。
大坂は東京みたいに大きな街で、巨大過ぎて訳が分からない。
だいたい東京でだって莉夏なり大学の友達の後ろを歩くのみなのだ。
こんなデカい動物園の中で急にアキラと2人だけになって
不安が押し寄せてくる。
「大丈夫だよ。僕行きに道覚えたし。春姉ちゃんくらい
連れて秋津島まで帰ってやるよ!」
そう言いながら食べかけのアイスを差し出す。
「えっ、いいの?」春が戸惑っていると
「特別にサービス」と珍しく子供らしい笑顔で勧めてくる。
この距離感の近さは、懐かしい人を思い出す。
顔を前に出すとアキラの視線が胸元に。
「それは?」胸元のネックレスが気になったらしい。
「あっ、これ?昔好きだった人に貰ったの。」
大学1年の夏、山背に貰った古いダイヤのついたエンゲージリング。
チェーンに通して肌身はなさずネックレスにしているのだ。
「へ〜っ、ガキみたいなのにやっぱ大人なんだね〜
春ちゃんでも。」
エッチい目で見てくる。
アキラは小学5年生だ。
そういうのにも目覚めてくる年頃か?
「またアキラくんも学校行きだしたら好きな子できるよ。
そしたら、この気持ち分かるようになるよ〜」
春がヘラヘラ笑う。
「だね。楽しみにしてるよ。」春がなめた部分をペロペロ舐めながら意味ありげに呟く。
「なに〜?2人仲良くなったじゃん!良かった良かった♪」莉夏と有間が戻って来た。
「ああ〜良かった!もう、奈良戻れないかと思った!」春が安堵する。
「悪い悪い、アキラくんが言ってた西成の広場みたいな場所?動物園から近道ありそうなんだよ。
案内板、確認してきたのよ。」
莉夏は日焼けが嫌らしく女優のようなツバヒロの帽子で薄紫のサンドレスで
本当に美しい夏の美女だ。
有間も真っ白なリネンシャツに生成りのパンツで王子様感倍増だ。
撮影かと誤解され、周りの人はカメラを探してる。
Tシャツにジーパン、キャップにリュックの春はバツが悪い。
まあ、アキラもキャップに半パンなんで2人は兄弟みたいだ。
遠くでサイレンの音がして、だんだん近付いてきた。
「この暑い日に火事?
珍しいな?」有間が不審がる。
四天王寺動物園を通り過ぎて西成の方へ赤い消防車が
数台走って行く。
「う〜ん、西成の方だね。じゃ、仕方ないんじゃない?
簡易宿泊所とか寝タバコでしょっちゅう火事なるし。ゴミにわざと火をつけて遊ぶ人もいるし。」
莉夏が眉間にシワを寄せて話す。
これから行く処は、かなりデンジャラスゾーンみたいだ。
「アキラくん、絶対離れちゃダメよ!」春が念を押す。
「じゃ、手繋いでてよ、春ちゃん」
アキラがニコニコと春の手を掴んだ。
「う、うん、そうだね…」
この距離の詰め方は…懐かしい人を彷彿とさせた。




