選ばれし者
内部進学だが有名大学も出てる。
就職試験も普通受けて合格してる。
だが、何かの拍子に差が歴然とする。
その時の気まずい空気…
その積み重ねに慣れてるつもりだが…
中之島の大阪本社に呼び出された帰り道
通天閣の足元でパチスロに興じる。
「急で申し訳ないが本部に戻って貰いたいんだ。
奈良の販売店は君には役不足だからね〜
総務に君の席を用意したからね。
アパートも解約しておいたから。
実家から10分だよね?ゆっくり通勤できるね〜」
新しい上司が気遣いながらも決定事項を尾高に告げる。
画面の数字は並びそうで並ばない。
「どいつもこいつも!」
「ところでお父様の西成の事業、もう建設会社は決まったのかな?」
「いえ、まだ十分な敷地の買収が…」
「そうなんだ?まあ、治外法権だからね〜あそこは。
でも、お父様の発想は素晴らしいよ!
あそこをインバウンドの起点にしょうとは!
中国人にとっちゃ、国内イメージなんか関係ないからね。
都心に近く、交通の便も良い。
またホテルを建てる際には、ぜひウチに任せて貰いたい!
そのためにも実家でお父様とゆっくり酒でも飲んで〜」とチケットを渡された。
「お父様は艶福家でもあるからね。
このスカイラウンジは選び抜いた美女バニーと夜景と美味い酒を揃えている。
このチケットがあれば、いくらでも遊べるから〜
お父様にヨロシク」肩をポンポンと叩かれた。
家庭教師に英才塾に毎日10時間は机にかじりついて勉強してきた。
物心ついた時から!
だが、いつも周りに劣等感しか感じない。
就職しても周りの頭の回転に追い付かない。
奈良の販売店へも体よく追い払われた感があった。
本社に戻れるのは嬉しい。
が人事じゃない。総務だ。それも仕事内容すら説明無かった。
『はずれ』の文字がデカデカと画面に出た。
「クソが!」思わず画面を叩いた。
誰も一言もコネなどと言わない。
だが、誰もが心の中で思っている。
足は自然と西成に向く。
路地の売人から粉を買い、雑居ビルの部屋に入る。
いかにもカタギではない輩が、机に乗せていた足を大急ぎで下ろしすり寄ってくる。
「坊っちゃん、今日は早いすね〜」
ここは突然尾高が訪れても咎めるものはいない。
奈良の片田舎の小娘が、何を気取っているのか?
今回の人事もあいつが手を回したせいだろ?
だいたい、あの胡散臭いガキが来るまで順調だったのだ。
母親がモデルルームのキッチンに気がいってる間に
「ねえねえ、お兄ちゃん!」と微笑みながら耳打ちしてきたのだ。
もうほぼ買う勢いだったので、愛想よく
「ん?なんだい?ボク」と身を屈めると、耳元で
「毒饅頭って美味しいの?」と囁いたのだ。
思わず手が出てしまった。
まさか?どうして知ってる?
あんな小さな子供が?偶然だ!
尾高は頭を振った。
急に何もかも上手くいかなくなった!
生意気な女も、ガキも!
どいつもこいつも!
クソが!
「また帳達してきたから、これ0.5gづつアンコに仕込んでくれ。」
「この頃、饅頭だと警戒されるんですよね〜」
輩が渋る。
「あんぱんにすりゃ良いだろ?お前はアホか?」
「すげぇ!流石ですね〜坊っちゃんは!」
輩が大急ぎで隣の作業場へ走って行った。
公園や道端の露天商に安く売り付けに行くバイトが
わらわらと集まってくる。
何も知らず集められた老人たちだ。
西成には日雇いにありつけなくなった年寄りが無数にいるのだ。
「クセッ」
尾高は2箱分饅頭を手に取ると顔を隠してビルを出た。
「今日は実家帰るか?引っ越しは業者におまかせで良いし〜
販売店の荷物だけ取りに行って〜後はコレを手土産だな♪」
笑いながら西成を後にした。




