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反撃

お立ち寄りくださりありがとうございます。楽しんでいただければ幸いです。



 隣国の学院へ行き留学の手続きを終えたヨハネスは寮に入ることになった。


部屋は広く簡単なキッチンと浴室、トイレが付いていて侍従が使える部屋もあった。高位貴族の部屋なのだろうと思われた。


侍従が学生として他の部屋に入り、護衛二人が交代で侍従用の部屋を使えるようにした。魔法で防げなくはないだろうが、防犯のためである。

食事は学院の食堂で、身の回りのことは寮に専門の部署があり心配がない。

屋敷から通っていたヨハネスには物珍しいことだらけだった。


早速アリアに通信魔法で着いたことを知らせた。

毎日通話はしていたが無事着いたと言うと声が震えていた。

盗聴でもされていたら面倒なので、後は手紙に書くよと言って通信を切った。防音魔法を使っていると通信魔法が届かないのだ。

早急になんとかしたい問題がこれだった。


 いよいよ授業が始まった。変身魔法がかかっていないので整った容貌にクラスの女子がざわめいた。

彫刻のような綺麗さだとか、教会の男神のようだとか話している声が聞こえてきたが完全に無視をすることにした。

目線は合わせない事、冷たい態度を取る、この方針に決めた。

アリアの変身魔法のありがたさが、よくわかった瞬間だった。


侍従のルートリアがヨハネス様には本国に美しい婚約者がいるので、他の女性は目に入らないと噂を流したが、それでも挑んでくる女性は後を絶たなかった。


校内を歩いていると眼の前でわざとらしくよろける者は、さっとルートリアが処理した。

ハンカチを落とす者には魔法でハンカチを消してやった。どこに行ったのかとキョロキョロしていた。


毎日これだけやられるとイライラが募ってくるヨハネスだった。

癒やしはアリアとの短い会話と手紙だけだった。


それでも男子の友達はできた。高度な魔法の話は面白く、議論も戦わせるようになっていた。そしてヨハネスのモテ具合に同情してくれた。

「最初は僕たちも、モテて良いな、くらいに思ってたんだよね。今までの人生で当たり前になっているだろうし。でも学院の女性の騒ぎ方は普通じゃないね。容姿が整いすぎているって苦労するんだね。女性が嫌になったりしないの?」


「しないよ、婚約者が素敵な娘なんだ。他はいらない」


「へえー、一度会ってみたいな」


「駄目、会わせない。減る」


「凄い独占欲だね、君から取れるとは思ってないから。僕もそんな人に出会いたい」


「婚約者いるんでしょ、僕たちも幼い頃からの婚約だよ」


「まさに奇跡の相手だね、羨ましい。僕の相手は気分屋でね、この宝石がいいと言ってたからプレゼントすると今日は違うのが欲しいわとか言うんだ、うんざりだよ」


「うわー大変だね。対策を考えたほうがいいかも。

でもよく知りもしない人のことを僕がどうこう言う資格はないね。やっぱり自分で考えて行動して」


「うんそうだね、よく考えてみるよ」


そんなふうに男友達が出来、魔法研究所にも出入りが許可されて暫くした頃だった。


王宮の夜会に招待された。

パートナーもいないし断りたいと思ったが、ハンセンという男が自分の年の離れた姉を貸すから行って来いと言ってくれた。

何かの裏があるといけないので、ルートリアに調べて貰うように頼んだ。

ハンセンには何も思うことはなかったようだったが、その姉は既成事実を作ろうという思いがあったようで、闇のバイヤーから媚薬を手に入れていた。

 

ハンセンには丁寧に断りを入れた。

申し訳ないと言って散々頭を下げ、二度とヨハネスの前に現れることは無かった。


夜会にはルートリアと二人で出席した。

キラキラした隣国の貴公子に会場はざわめいていたが、国王に挨拶をして目くらましの魔法を自分たちに掛け直ぐに帰った。


「最初からこれで行けば良かった。手間を掛けて悪かったな」


「とんでもないことでございます、無事に帰れて良かったです。また何か仕掛けてきそうな気がしますが」


「そうだな、考えておこう。ルートリア女装はできないか?」


「何をおっしゃるかと思えば。やってできないことはないとは思いますが、どうされました?」


「よく見れば顔も女顔だし、体つきも細い。

たまに女装して僕の側にいてくれたら、女除けになるかなと」


「たまにならかまいませんよ。主、女性の被害が酷くてお気の毒ですからね」


「じゃあたまに頼むよ、この国にいる限り自分で対処しなくてはいけないのはわかっているんだが、こうも酷いとストレスが溜まる」


「婚約者様の力は偉大ですからね」


「ああ、隠しておかなければいけない重要事項だ。拐われて利用されたら大変だからな」



侍従がたまに女装して近くにいることになるとアリアに伝えておこうと思うヨハネスだった。

誤解されて婚約破棄されたら困る。




今日は通信具の調子が悪いのかアリアの声が聞けてない。そういえばこの頃魔道具の調子が悪いと気付いた。イヤリングを外して故障かどうか調べたがどこにも異常はなかった。何かがおかしい。

今週の手紙が着けば何か分かるかもしれないがなかなか届かなかった。

今から寮に帰って使い魔を作り飛ばしてみようか。ヨハネスは不安になった。




使い魔を飛ばしたが返事が帰って来ない。

胸騒ぎを覚えたヨハネスは町に残っていた護衛を国に帰らせて様子を探ってくるように手配した。襲われるといけないので二人で行動するように指示した。


どんなに急いでも往復で二週間はかかるだろう、こちらの国でも出来ることがあるはずだと考えた。

自分の魔術が届かないように邪魔をされているとしか思えない。何のために?国と連絡を取らせないためか。相手は予想がついた。反撃を開始しよう。

アリアとの幸せな未来を誰にも邪魔させはしない。


 

そのためにヨハネスは秘密裏に動き始めた。


学院生活は表向き魔法の勉強に力を入れて取り組んでいるように見えるようにした。

元々そのためにヨハネスは来たのだ。阻害認証は使えるが転移魔法は後少しのところだった。国の中でもトップクラスの魔術師しか使えない魔法で、こちらでも使える者は数が少ない。 

        


国立図書館に行けば知識が得られるかもしれないと考えたヨハネスは、侍従のルートリアと共に図書館に行った。

流石に本の数は膨大だった。

魔術の本もありすぎて目的の本が何処にあるのかわからなかったが。懸命に探してこれではないかという物を探すことが出来た。

持ち出せないので机に向かってゆっくり読むことにした。

ルートリアは主人を守るために側にいて、本を読むふりをしている。護衛の二人は図書館の入口で気配を消して主を守っていた。



二日目で魔法の使い方をマスターした。転移したい場所を思い描いて魔力を集中させる。

最初は寮の部屋から近くの森までの往復を何度も練習した。 




段々遠くまで転移できるようになった。しかし魔力を使うと体力が無くなる。補うのは食事を沢山食べなければいけなかった。学院の食事だけでは足りないので、ルートリアに買い出しを頼んだり、外の食堂を利用した。



 そうしている内に使いに出した護衛達が帰って来た。

防音魔法を辺りに張って声が聞こえないようにした。

ヨハネスの思った通り国境を過ぎた頃から魔力が感じられなくなったという。膨大な魔力を持っていて護衛にわかるように魔力を放出していたのにだ。


「侯爵様にもこの度のことはきちんとお伝えしました。その時が来たら動くとおっしゃっていました。

アリア様にもちゃんと伝えておきました。側にいるのはルートリアですよと、頷いておられましたから安心して下さい」


やはり行きの道中で刺客に襲われたそうだ。五人ほどだったらしいが。帰りはアリアの変身魔法で姿を変えて貰ったらしい。

厳つい山賊風にしてもらったのだが、国境を通る自信がなかったので山越えをしたとのことだった。


これから誰が接触してくるか楽しみだ。


学院の廊下を男子生徒と話をしながら歩いていると向こうから綺羅びやかな一団がやって来た。第三王子とその側近達だった。端の方へ除け頭を低くして通り過ぎるのを待った。


「おや、君は隣国からの留学生かな、たいそう優秀だと聞いてるよ。頭を上げてくれないか」 

               

「ヨハネス・ハバミネロと申します。第三王子殿下におかれましては」


「そういうのいいから、ここは学舎でしょ、普通に話がしたいんだよね」


「そうですか、ではこれで失礼いたします」 


「君の国の話が聞きたいな、聞かせてくれないかな」


「機会がありましたら」


「そうだね、急に言っても駄目だよね」


「申し訳ございません、この後まだ勉強がありまして」


「いや、いいんだ。そのために来ているのだから」


「ではこれで失礼いたします」


その時王子に近づいて来る人影が見えた。

「殿下、こちらの方はどなたですの?お見かけしない方ですわね」

高位貴族のような振る舞いで女子生徒が近づいてきた。

「こちらは留学生のヨハネス殿だ。ヨハネス殿、公爵令嬢のフローラルだ。フローラル嬢ヨハネス殿はこれから勉強があるようだから引き止めてはいけないよ」


「まあ、そんなことはいたしませんわ。お見かけしたことのない方でしたので、少し興味を持ってしまいましたの。はじめまして、ヨハネス様。私フローラル・サラメントと申します」


「ヨハネス・ハバミネロと申します。では今度こそ失礼をいたします」

面倒なことになったと思いながら、足早にその場から立ち去った。


ここはルートリアに頑張って貰おう、先程の令嬢の目の熱が気持ち悪く思えた。

「ルートリア、君の出番だ。公爵令嬢に目を付けられた。近くに王子様がいるのに何故だ?」


「王子様には婚約者がいるんですよ、国外の王女様です。手が出せないんです」


「僕だって婚約者がいるじゃないか。その情報よく知ってるね」


「まあ、これくらいのこと調べてありますよ。媚薬事件もありましたし。名前と身分と婚約者の有無、背景位は大丈夫です」


「凄いよ、優秀だとは思っていたけど仕事が早い。頼もしいな」


「お褒めに与り光栄です。取り敢えずその姫を撃退しましょう。

三年前に公爵家に引き取られた庶子のお嬢様です。相手は子爵令嬢だったらしいですよ。正妻様が許さなかったらしく遠くの別邸で育たれたそうです。その母親が亡くなられたので本宅で生活することになったそうです。ヨハネス様に婚約者がいても平気なのはそんなところから来ているのかもしれませんね」


「僕はアリアだけでいい、他にもなんて気持ち悪い。明日から頑張ってくれよ、そうだ女の子の名前はルーにしよう」


「承知いたしました、ヨハネス様。変身に使うものを用意してきますので夕方まで戻りませんが、よろしくお願いしします。護衛の一人と交代します」

そう言ってルートリアは出て行った。





前書き後書きの誤字脱字報告ありがとうございます。気づきませんでした。

読んでいただきありがとうございます。感謝に堪えません。

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