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学院生活と留学

お立ち寄りいただきありがとうございます。


 十五歳になり二人共確実に魔力を上げていた。アリアは変身魔法の才能が開花し、自在に姿を変えられるようになった。ヨハネスの姿も変えられる。ただし十五時間が限度だ。半年くらい変えられたらいいなと密かに思っていた。これからも練習は欠かさないつもりだった。


学院へは変身魔法をかけ地味な見た目で行くことにした。煩わしい事が多そうだからというヨハネスの希望で決まった。

本当はアリアの可愛さを誰にも見せたくないという独占欲からだ。

アリアは自分の魔法が役に立ったと喜んでいるので平和である。



学院に入学する二週間前に制服が届いた。女の子は白いブラウスに紺色のチェックのスカートに紺色の上着。一年生のリボンは赤。男の子は同じく白いシャツに紺色のチェックのスラックスに紺色の上着。ネクタイの色は赤。二人で別の部屋で着替え応接室でお互いを見るという事になった。ヨハネスがアリアの制服姿を一番先に見たいと言ったためだ。


二人共お互いを見つめ固まっている。

「アリア可愛すぎて誰にも見せたくない」


「ヨハネスもかっこよくて誰かに取られそう」


「取られないから。アリアだけしか見てない。学院は変身魔法で決まりだよ」

「そうね、それが良いわね」


甘い会話に通りがかったアリアの母が何とも言えない顔をしていた。でも昔の誘拐事件のことがトラウマになっているのかもしれないと考えることにした。

あの時は世界が絶望に染まった、娘だけではなく他所様の大切な令息までいなくなってしまった。幸い夫が直ぐに動いてくれ大事に至らなかったから良かったが。

卒業すると結婚をすることになっている。花嫁衣装はどんなものにしようかしら、あちらの奥様にも相談しなくてはと考えを楽しいものに変えた。


アリアの兄達は嫡男は後継の仕事を手伝い、次男は騎士団に入っていた。二人共アリアの結婚を見届けてから自分達のことを考えると言っている。





そして入学式当日になった。もちろんヨハネスが送り迎えをすることになった。

ありがたい学園長の話や生徒会長の話を聞いた。その後クラス発表がされ二人共Aクラスになった。成績の良い順にA B C Dとなる。二十人が同じクラスで過ごす。

「アリアと一緒で嬉しいよ」

とヨハネスが蕩けた様な顔で囁いた。

「私も嬉しい」

「さあ今日はこれで終わりだね。帰ろうか」


授業は明日からなので先程貰った説明書や教科書は侍従に馬車まで運んで貰っている。屋敷に帰って食事をして教科書を見るのも良いかもとアリアは考えた。

ほとんどの知識はもう頭に入っているので今更な感じもするが。

ヨハネスと一緒に学院生活を送るのがアリアの目的なのだ。それに気の合う女の子の友達が出来たら言うことはない。


「アリア、着替えて食事をしてから町でも行ってみる?」

「そうね、いいわね、楽しそう。今人気のカフェがあるそうなの。そこにも行きたい」

「いいよ、アリアの行きたい所なら何処でも行ってみよう」

アリアの侍女のアンは小さな時からお嬢様付きなので慣れているが、護衛のリオは今年が最初の年なので砂糖を吐きそうだなと心の中で思っていた。




アンは十八だ、十歳からアリア付きになった。優しくて可愛いお嬢様が大事である。リオは剣の腕を認められ護衛の一人になった。まだ二十歳だが剣の腕は確かで侯爵家の騎士の中でも五本の指に入る。


リオがアンを目だけで見ると平気な顔をしているので、これが通常なのだと認識をした。後の護衛は見えないように付いて来ている。

中にヨハネスの護衛もいるので、なかなかの大所帯である。皆が気配を消して見守っているのだ。


早速カフェに着いた。白い壁に赤い屋根のメルヘンチックな外観をしている。

店の前には鉢植えの花が並べてあり、窓にはレースのカーテンが掛けられて中が見えないようになっていた。


アリア達は店の奥のボックス席のような所に案内された。

「この苺のパンケーキと紅茶にしようかな、ヨハネスは?」

「じゃあチョコレートとコーヒーにしようかな、分けて食べようか?」

「いいわね、どっちも食べられる」

やはりカップルや女の子同士で来ている人たちが多かった。

アンとリオもカップルを装って側で見守っていた。


二人がパンケーキを食べさせ合っているのを見て仕事だ、仕事だと呟いていたのはリオである。

早く慣れなさい、という有り難い忠告をアンから低い声でささやかれた。


カフェを出ると公園へ向かった。手を繋いで花の名前を確かめながら歩いた。いつも植え替えがしてあって管理が行き届いている。

花の中を歩くのは気持ちがいい。



そうして二年が過ぎ最終学年になった。アリアには子爵令嬢のイリスという友達もできた。イリスの家は貿易をやっていて船も持っている。高位貴族より裕福なのである。学院でイリスが婚約者のことで一部の女子学生にいじめられていたのを助けたのをきっかけに仲良くなった。


貴女にはもったいないとか、自分を知りなさいとか勝手なことを言って数人で一人を取り囲み憂さ晴らしのようなことをしていたので、助けに行った。

「先生喧嘩のような声がしますの、こちらですわ」といもしない教師を連れてきたように大きな声を出してしまった。結果いじめっ子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

残った二人は声を出して笑った。 



「助けていただいてありがとうございます。よろしかったらお友達になっていただけませんか?いつも婚約者様と御一緒されておられるので、なかなかお声がけしにくかったのですけど」


「こちらこそお友達になっていただきたいです。むしろなっていただけると嬉しいです。確か同じクラスでしたわね」


「はい、いつもお二人の仲がよろしくていらっしゃるので羨ましいなと憧れておりましたの」


「その、婚約者の方とは」


「いわゆる政略ですわ、家の関係の。でも優しい方ですの。さっきの方たちが目をつけるくらいの整った容貌です」


「私ったら、初めてお会いした方に色々お聞きして申し訳ありません。はしたなかったですわね。ごめんなさい」


「いいえ、助けていただいたのと、お話しできたことが嬉しくて気になりませんわ」


「ではまたお茶にお誘いしてもよろしいでしょうか」


「はい、お待ちしております」

可愛い令嬢だったのに、虐めるなんて許せないわねとアリアは思った。


イリスとお茶会をしたりヨハネスと会ったりして、このまま卒業を迎えるのだとその時は信じていた。

ヨハネスが暗い顔をして屋敷にやってくるまでは。







「どうしたの?とても顔色が悪いけど。体調が悪いの?」


「隣国に留学に行くことになった。向こうからの要請で。成績優秀者をという名義だが僕が名指しだ。膨大な魔力を持っていることが漏れたに違いないよ。

国も学院もひた隠しにしていて、練習の時も認証阻害認証をかけて人目につかないようにしていたのに。きっと学院にスパイがいたんだ。アリアと離れたくない」


「私も離れたくないわ。変身魔法をかけてあげられなくなるから、美貌に叢がる蝶が沢山になるわ」


「寄ってきても無視するさ、アリアという女神より美しい女性がいるわけがない」


「本当に約束よ、破ったら婚約破棄よ」


「約束だ、この目に映すのはアリアだけだよ。今度来る時に通信ができる魔道具を持ってくるよ。できてから見せて驚かせようと思っていたのに悔しいよ。

手紙も書くよ」


「私も書くわ、そして何度も読み返す。次の手紙が来るまで。今度会えるのはいつ?それにいつが出発?」


「1ヶ月後だよ。行くまでは今までのように送り迎えはするよ。学院にも行く。貴重なアリアとの時間だからね」


二人きりのアリアの部屋で抱き合いキスをした。最初は小鳥のような啄むキス、段々深いキスになりアリアは体の力が抜けるような感じがした。

とろんとなったアリアを大切に抱き直し、ぎゅーっと離さないようにした。感覚を忘れないようにしようと誓った。この先は卒業して結婚式を挙げてからだ、理性に頑張って貰ったヨハネスだった。

「ねえ、ヨハネス帰ってくるわよね?帰ってこられるわよね?」

首に手を回しながら聞いてくるアリアが可愛くてまた唇を重ねた二人だ。


出発まで二週間になった頃イヤリング型の通信機が完成したと持ってきてくれた。庭と部屋で試し成功した。後は屋敷に帰ってからということになった。

夜寝る前に話をしてみた。膨大な魔力を入れたと言ったので聞こえが良く、おやすみなさいと言って通信を切った。

朝になったら迎えに来てくれる。

その安心でぐっすり眠ることができた。

これから毎晩おやすみなさいと言おう、眠りに落ちながらそんな事を考えていた。







いよいよ旅立ちの朝がやって来た。覚悟は決めていたのだが胸が締め付けられるように辛い。胸に飛び込み、無事に帰って来てねと小さな声で囁いた。

もちろんだよと抱き返すヨハネスの声も震えていた。

それに気づいたアリアは笑顔を見せた。思い出しすのは笑顔がいいと思ったからだ。

そうして馬車が出発した。隣国まで一週間かかる。侍従と五人の護衛が一緒に行く。

アリアはただ無事を祈った。



                                                                                

誤字脱字報告ありがとうございます。読んでいただき感謝しかありません。

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