2022年11月放送投稿作品 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#60〜#64
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
フラワーラジオを選局して、お気に入り登録
②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
サイト投稿回数 第35回目の今回は………
2022年11月放送分の5作品
妄想【愛の劇場】#60 おでん
#61 湯豆腐
#62 しゃぶしゃぶ
#63 痛風鍋
#64 すきやき
2022年11月1日放送
#60 【 おでん 】
冷たい風が体を芯から凍えさせる。
スマートフォンにはアナタからのメール。
「今日は家でご飯食べるよ。」
久し振りの一緒にごはん。
心はポカポカ。
だけど、仕事終わりであまり台所には立ちたくない。
駅チカの商店街から、美味しそうなお出汁の香り。地元で有名なおでん屋さん。
今日はおでんにしよう。きっとアナタも嬉しいはず。
ふたりの大好きな具材をちょっと欲張り気味にチョイスして、土鍋いっぱいの豪華なおでん。
「おでんだよ。」とメールして、ワクワクしながらアナタの帰りを待つ。
インターホンの音とただいまの声。
「おかえり」の言葉でアナタに近づけば、ほのかなお出汁の香り。
「おでんは、具材がたくさんあったほうが美味しいわよ」
両手には、地元で有名なおでん屋さんのビニル袋。
テーブルの上の土鍋にいっぱいのおでんと、ワタシの顔を交互に見つめて、アナタがケラケラ笑い出した。
ワタシもつられてケラケラ笑った。
久し振りの一緒にごはん。
心も体もあたたかい。
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2022年11月8日放送
#61 【 湯豆腐 】
ぐつぐつと熱く煮えるお鍋の中で、まさか“初恋ノ君”に会えるだなんて。
メインディッシュのとうふへと姿を変えたワタシに、アナタは気が付く筈もない。
あの頃と変わらず、アナタはきれいな紅色をたたえている。
高い青空の下で、輝く様な緑色のコンパニオンプランツ。
大豆畑と人参畑が狭い敷地内で、豊潤な大地にいきいきと息吹いている。
大豆畑では、兄弟達が賑やかな声をあげながら楽しく毎日を過ごす。
隣の人参畑では、人参たちが静かな声でおしとやかに毎日を過ごしていた。
大豆の長男は、静かに佇むおしとやかな姫に恋をした。
風に揺れる緑色の葉を美しいと思っていた。
お互いの収穫の日を境に、姫と離れ離れになってしまった。
そんなアナタに、またこうして会えるだなんて。
ワタシの心は踊っていた。
カラダも踊っていた。
それはぐつぐつとした、熱のイタズラだけではない。
嬉しいという気持ちを、全身で表していた。
この想いをアナタに届けたいと思った。
この想いがアナタに届ける事ができたら、どんなに幸せだろうか。
思い切ってアナタに声をかけようとした瞬間、ワタシはステン網湯豆腐スプーンにすくわれて、しょうがとネギの待つ醤油の中へ。
湯からすくわれる最中に見たアナタは、近くの鶏肉と楽しそうにワルツを踊っていた。
さようなら、ワタシの初恋。
アナタの幸せを願っています。
永遠に…………。
永遠に…………。
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2022年11月13日放送
#62 【 しゃぶしゃぶ 】
男と女の目の前には、グツグツと煮えたぎる鍋がある。
出汁の効いた湯の中には、豆腐や白菜といった野菜たちが整列でもしているように、きちんと並んでいた。
女はつまらなそうな顔をしながら、真っ赤な口紅で彩られた口元でタバコをくゆらせている。
タバコの銘柄は、パーラメント。
女性に人気というが、男はタバコを吸わないので分からなかった。
タバコを吸い終えて少し満足したのか、女が言った。
「アタシ、しゃぶしゃぶってキライなのよね」
女はサエバシを右手にとると、テーブルの上にある皿にきれいに並べられている豚肉の肩ロースをざっくりと拾い上げて、おもむろに目の前の煮えたぎる鍋に無造作に投げ入れる。
鍋の中に並んでいた野菜を巻き込むように、女は肉と野菜を鍋の中でかき混ぜる。
相変わらずガサツな女だ。
男はそう思いながら、ただその様子を黙って見ていた。
小鉢には、薬味の混ざりあった特製の柚子醤油が入っている。
女は、やはり無造作に三枚ほどが一山になった肉をその小鉢に移し、ベチャベチャに醤油を絡ませてから、肉を口に運ぶ。
女はクチャクチャと音を立てながら、満足そうに肉を噛みちぎる。
女の真っ赤な口紅で彩られた口元は、肉の脂と醤油のむらさき色でベタベタになっている。
女はお構いなしに肉を楽しんでいる。
男はただその様子を眺めていた。
女はしゃぶしゃぶがキライだという。
女はガサツだがうまそうに肉を食べる。
男は、ガサツだがうまそうに肉を食べるこの女が好きだ。
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2022年11月22日放送
#63 【 通風鍋 】
真っ赤に染まるアナタを抱きしめる。
ワタシはアナタの赤に染まる。
好きなものは止められない。
求め過ぎれば体に悪い。
アナタにキスをするように、魚の臓物を優しく噛みちぎる。
あぁ。
アナタもこの臓物のように、食べることができたらいいのに。
あぁ。
アナタがワタシの一部になれれば、どんなに幸せなことでしょう。
真っ赤に染まるアナタを見つめながら、ワタシは何度も臓物を噛みしめる。
アナタとひとつになる夢をみて。
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2022年11月29日放送
#64 【 すきやき 】
時代の先端をいくモダンガールとモダンボーイ。
通称モガとモボが介する銀座のサロン。
背伸びをした冴えないボクは、そこではモボを演じている。
フワリとしたフリルのスーツとくっきり眉毛に真っ赤な口紅で、流行りの映画スターのような装いのモガなキミ。
思い切って声をかけた。
後日、サロンで話題の銀座で有名なすきやきの店にキミを連れて行った。
ボクは、キミとすきやきを目の前にして、お腹がいっぱいになっていた。
キミは黙ってすきやきに箸をのばす。
時折箸を置いては、口元を白いハンケチーフで隠す。
美味しいという風にニッコリと微笑む。
ボクといえば、今日のためにさまざまな書籍で調べたすきやきの講釈を、キミに披露する。
ボクの講釈を、キミは微笑みながら聴いてくれる。
ボクはその姿に心の中でうっとりする。
すきやきのあとは、銀座をぶらり。
行き交う人が、キミの映画スターのような美しさに目を奪われる。
銀座で流行りの喫茶店に行き、メロンクリームソーダで口直し。
今日が楽しい1日だったと喜んでくれたキミの笑顔が、ボクは心から嬉しかった。
あれからどれくらいの月日が過ぎただろうか。
サロンでキミの姿を見ない。
元気でいるなら、それでいい。
ボクの心の中には、キミの笑顔が生きているから。
ボクは今でもサロンに通う。
いつまでも馴れないモボを気取りながら。
ありがとうございました。
次回もラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】へ投稿した作品の投稿になります。
妄想【愛の劇場】#65「うさぎ」
#53「成人式」
#54「ポチ袋」
#55「凧上げ」
#56「手編み」