第2話 魔人と黒い怪物
「――どうしてもあの《《鍵》》が欲しい」
「《《鍵》》……ですか?」
「そうだ。アレがなきゃ、魔の神を復活させられない」
黒いスーツに身を包んだ男は、20前半くらいの細身の男にそう言う。
2人がいるのは、少し広い公園だった。公園と一言で言っても、真ん中には噴水、端の方にはブランコなどというものは無く、たった一つの大きな木が真ん中に立っているだけだった。
そんな場所がなぜ公園と言われるのかは分からない。
「リート、知ってるか?魔の神というものを」
「いや、聞いたことないです」
――リートと呼ばれた細身の男は、スーツ姿の男の言うことに首を傾げる。
「元々は、この世界は魔の神――ディークストが治めていた。だが、ディークストの動力源でもある鍵が、妖精によって奪われてしまったんだ。ディークストを復活させるために、鍵が必要なんだ」
「どうして復活させたいんですか?」
リートの問いかけに対し、スーツ姿の男は少し悩むように顎に手をやった。
「答えになるかは分からないが……ディークストは、この世界に生きる人から絶大な人気を得ていたからだ」
「……フォレストさんも、人気は得てるんじゃ――」
「ハッキリ言って、俺は人気など得ていない。得ているものとすれば、ここに住む人の憎しみや、反感だ。……俺はこの世を良くする力を持っていない。だけど、ディークストなら、良くする力――もっと言えば、一人ひとりの願いだって叶えられる力を持っている」
フォレストと呼ばれたスーツ姿の男は、リークを真っ直ぐ見てそう言った。
「世界を、良くする力ですか……でも、この世界で不満を持ったことは無いんですけど」
「それは、まだお前が若いからだ。段々時間が経つにつれ、周りの人がどう思っているかが分かるようになる。……人の話は聞けても、それを実行する力は、俺には無い」
「あ、ちょっとフォレストさん。どこ行くんですか?」
「もう時間だ。《《あいつら》》を散歩させないとな」
フォレストはそう言って、リートより先に、公園と呼ばれる場所を去っていった。