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セイメイのセカイ  作者: イカさん
第一章
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第一章 始まり⑤

イカです。

 第五話



 右足の裏に伝わる草が潰れていく感覚、次に土の柔らかい感触を感じると、すぐに左足にも同じ順序で脳に伝わってくる。

 時折硬い何かに当たると痛みを感じる。


 歩く。


 人間誰しも歩く。

 しかし日本人の大多数は室内は裸足で歩き外では靴を履いて歩くだろう。

 そう、基本的に一部の例外を除いて家の外では靴を履いて歩く。

 もちろん藤沢家でも靴を履いて外出する。

 なので、そんな直接的に草や土の感触を堪能する事などほとんど無いはずだ。


 では何故そんな感触を味わっているのか。


 靴を履いていないからだ。


 室内に居たのに突然こんな広大な草原に放り出されれば当然の結果である。



「痛っ」



 あ、また石みたいなの踏んだな。


 かれこれ半日近く歩いている。


 あれから周りを見渡すと、眼前にはどこまでも続く草原が広がっており、後ろを見れば数々の山脈が連なっていた。

 とにかくジッとしていても情報は得られないと判断し、移動する事にした。

 流石に子連れで山に入るのは危険と思い、草原に足を進めた。


 まだ夢ではないかと思いつつもお腹が減るということは此処に自分が存在するということで、とにかく水と食料が無ければしなければ人は生きていけない。


 水はリュックに入っていた水筒で一日くらいなら保つが…

 いつまで歩くかもわからない状況では心許ない。

 食料はおやつとして常備していたチョコレート菓子や飴が少し。


 歩きながら周りをキョロキョロと確認はしているが変わり映えしない景色がずっと続いている。


 足元を見れば踝くらいまで伸びている青々とした草が生えており遠くの彼方まで続いている。

 所々に大小様々な石や岩が見えるがそれ以外何も無い。時折小動物らしき生き物が遠く方から顔を覗かせるが警戒心が強いのか、近づくとすぐに走って逃げてしまう。

 上を見ればかなり上空に大きな鳥のような翼を持った生き物が優雅に空の散歩をしている。


 一応目印として大きめな岩を見つけては、そこに千切った草をすり潰して色を付けている。ここまで何も無いと方向感覚が狂ってくるので、同じ場所を通ってるのではないかと不安になってしまうのだ。



(流石に疲れてきたな・・・しょうまが起きる前には何とかしたいけど・・・。まいったなぁ。)


 しょうまは俺の背中で静かな寝息をたてている。

 家にいたならばもうとっくに深夜帯だ。


(さて、どうしたものか。)



 日も傾き始めた頃、前方に少し違った景色が見えてきた。



(・・・森か?)



 近づいていくとはっきりと見えてきた密集した木々達。

 目の前まで来て少し圧倒されながら一旦足を止めた。


(マジかぁ。今から森に入るのはなぁ・・・・・・いやでも川とかあるかもしれないしな・・・・・・。)


 夜に森に入るのは素人の俺でも危険だとわかる。

 これだけ自然豊かな森だ。夜行性の肉食獣や毒を持った昆虫もいるだろう。

 さっきまでの草原ですら小さな虫や蛇のような爬虫類がいたくらいだ。見た事ない虫ばかりで正直結構怖かった。


 だからといって水が無いのは非常にまずい。

 水筒の水も節約しながら飲んではいたが残りも僅かしかない。


(仕方ない。少しだけ入ってヤバそうなら引き返すか。)


 少しだけ考えてから、疲労の溜まってきた身体に鞭を打って森へ向けて足を動かした。




 森へ入ってすぐにしょうまが目を覚ました。



「とうちゃんおはよ。・・・ここどこ?」


「おはよ。森だな。」


「もり?てなに?」


「んー、木がいっぱいの所だ。」


「ふーん。・・・とうちゃん。おしっこ・・・。」



 5歳児には森という単語は聞き慣れないようで、説明してもあまりわかってなさそうだ。大きくなればわかるさ。

 それよりトイレか。そういえば俺もしたくなってきたな。



「わかった。でも此処にはトイレがないから・・・そこ辺でしよう。」


「いいの?」


「仕方がないのさ。それに木や草の栄養になるんだぞ。」



 息子と並んで用を足す。

 なんと開放的か。何かに目覚めてしまいそうだ。

 いかんいかん。俺にそんな属性はないぞ。



 チクっ。



 ん?首に何か刺さったかな?


 手で触っても何も無い。

 気のせいかな?

 まあいいや。それよりもこれからの事をしょうまにも話しておかないと。

 2人で近くの木の根に腰を降ろす。



「よし。じゃあしょうま。父ちゃんの大事な話しを聞いてくれるか?」


「うん。なに?」


「まず、父ちゃんにも此処がどこなのかわからない。ゆかりと母ちゃんも何処にいるかわからない。でもたぶん大丈夫だから。女の人は強いんだぞ?」



 さっき言ってあげた事をもう一度口に出して言ってからニっと笑って見せた。



「で、父ちゃん達は今は森まで歩いて来たけど、飲み物と食べる物が全然無いんだ。だからこれからそれを探しに行くんだ。しょうまも手伝ってくれるか?」


「うん!わかった!」



 頼まれた事が嬉しいのか笑顔で元気良く答えてくれた。

 そんな笑顔につられて俺も笑顔になりながら説明を続けた。



「ありがとう。お利口さんだな!でも森には危ない事がたくさんあるんだ。怖い動物や危ない虫さんがいるかもしれない。だから絶対に父ちゃんから離れたらダメだよ?あといろんな物に触ったりしてもダメ。できるか?」


「うん!できる!」


「よしよし!」



 頭を撫でてあげる。



「じゃぁまずは川を探そう。しょうま探検隊しゅっぱーつ!」


「おー!」



 小さな拳を一生懸命伸ばして笑顔で応えてくれる。

 こんな状況でも笑顔にさせてくれる愛しい息子にとびっきりの笑顔を返してから、再び背負って、森の奥へと出発した。




最後まで読んで下さりありがとうございます。


いろいろとご都合主義です。どうかご理解下さい。


藤沢家の名前は全て平仮名です。読みづらいかもしれませんがご了承下さい。

別視点からではカタカナになっています。


投稿は不定期ですが温かい目で見守ってくれると助かります。

では、次回もお楽しみに。


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