第一章 始まり④
イカです。
第四話
視界いっぱいに広がる眩い晴天をぼんやり眺めること数瞬。
徐々に思考が追いついてくる。
いつも間にか寝転んだ状態になっている。
最初に感じたのは胸から腹に感じる重み。
「!?」
すぐさまガバっと上半身だけ身を起こし、腕の中にその小さな身体を抱きとめて、、
「しょうま!?大丈夫か!?」
殆ど条件反射のような言葉。
ぐったりしている息子を見て血の気が一気に引いてくる。
「しょうま!?しょうま!?起きてくれ!」
肩を揺すりながら何度も声をかけ続ける。
最悪の展開が頭の中を過りその考えをすぐさま否定しながら、俺は泣きそうになりながら声をかけ続けた。
すると僅かに身じろぎして瞼がピクピクと動いた。
「しょうま…」
初めて反応を見せてくれて少しだけ安堵したが未だに意識が無い状態にどうしようもない不安が残る中、
「っ…んぅ……んんぅっぅ……」
「!?」
ゆっくり開かれる瞼からまだ焦点の合っていない真っ黒な瞳が垣間見える。
「しょうま!わかるか?父ちゃんだぞ!」
「……とう、ちゃん?」
まだ意識が混乱している様子で俺の顔をジッと見ている。
そんなしょうまを見て思わず強く抱きしめて、生きていてくれた事に心から安堵した。
そして状況を理解しようと必死で頭を働かせた。
あの黒い箱が、原因だよな...?でもなんで...。
いったいどうなっているのか。さっきまで夜だったのにいきなり昼になって、しかもココはどこだ?
家は?ゆかりは?はるは?
そんな答えも出ない自問自答を繰り返してるうちに両腕からもぞもぞと動きがあった。
「とうちゃん?」
「ああ、ごめんごめん。しょうま、どこか痛い所とかないか?」
「だいじょうぶ」
「良かった…」
一先ず心配していた一つは解決できた。
しょうまと俺、特に怪我しているわけでもなく無事のようだ。
さて、まずは状況把握だな。
でもその前に…
「暑いっ!」
しょうまを抱えていたからではなく単純に肌を撫でる風が暑い!
11月だよな?
明らかに春の匂いのする風が生暖かく、背中と額からじんわりと汗が染み出てくる。
思わずしょうまを腕から下ろしてジャンパーを脱ぎ作業着の上着も脱ぐ。何故か背負っていた筈のリュックが横に落ちいていたのでそれにジャンパーを放り込み作業着の上着は腰に巻いた。
黒の無地のロンT一枚となってようやく心地良くなってきた。
しょうまを見ればしょうまも暑そうだったので上着を脱がせてやった。
「とうちゃん、ここどこ?ねえちゃんとかあちゃんは?」
「・・・父ちゃんにもわからん。ねえと母ちゃんは、たぶん大丈夫だ」
しょうまを安心させようと発した言葉は根拠の無いものだ。
でもここで俺が取り乱してしまえば幼いしょうまはもっと混乱し不安になるだろう。
しかし幼いながらも雰囲気で俺の気持ちがわかるのだろう。
泣きそうな顔をしている。
俺がしっかりしなければ。
この子を守るんだ!
みんなで家に帰ろう!
この時俺は固く心に、自分に誓った。
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[???視点]
光沢のある黒。
すべての床がそんな黒色で埋め尽くされている。
人が10人横に並んでも余裕で立てるほどの幅に継ぎ目などなく凹凸もない。
明かりは10mはあろうかなり高い天井から僅かにもたらされているが、電球などなく何故か淡白く光を発している。
その黒い床の両端には見事な彫刻が彫られた大きな柱が等間隔にいくつも建っていて、さらにその横へ5mほどの所でようやく壁に突き当たる。その壁は石のような素材で一面灰色だ。
光沢のある黒色の床を20mくらい進んだ先に奥行きのある段差が五段くらいある。
その頂上には白銀色に輝く台座が鎮座している。
しかしその台座の上には、この空間には明らかに似つかわしく無い、見るからにボロボロな木で出来た棺のようなものが鎮座している。
丁度人が入れそうな大きさだか、中を見る事が出来ない。というより外側から継ぎ足したのか木で至る所を補強した様な痕跡があり、隙間など一切ない。
そんな木箱の前に三人の人影がある。
皆跪きフードのようなものを被っており顔は見えない。
その中の一人が、嗄れた老人のような声で言葉を発した。
『・・・主様。・・・約束を果たす時がきたようです・・・』
『『・・・・・・・・・』』
他の二人は無言のまま、ただその木箱を見つめるだけだった。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
いろいろとご都合主義です。どうかご理解下さい。
藤沢家の名前は全て平仮名です。読みづらいかもしれませんがご了承下さい。
別視点からではカタカナになっています。
投稿は不定期ですが温かい目で見守ってくれると助かります。
では、次回もお楽しみに。