第一章 始まり③
イカです。
第三話
(まぁ時間もないし中身だけ確認して仕事に行くかね)
その前にはるにもう一回確認とってみるか。
はるに視線を送るとすぐ横で真剣な顔つきのゆかりが目に入った。
はるのお手伝いをしているのか。えらいな。思わず頬が緩む。
踏み台に乗りはると同じ高さになって食器を洗っている。左手でガラスのコップを落とさないようにしっかり握り、右手で泡立つスポンジを優しく握ってキュッキュッと音をたてながら左手のコップをゆっくり回していく。
はるは食洗器に入れる食器を軽くゆすいで中に入れている。
そんな光景に破顔一笑する。
ふと視線を下に向けるとしょうまの黒い瞳が覗き込んでいる。何してるのと言わんばかりの視線だ。
いかんいかん。時間もないしな。
「はるこれ開けて良いか?」
「んー良いんじゃない?仏壇にあったって事はお爺ちゃんかお婆ちゃんのでしょぉ?なら中身くらい見ても良いじゃない。私も気になるし」
「おけ。じゃあ開けるか…」
とりあえず開けれる所がないかいろいろな角度から見てみるが、
(どこから開けるんだ?)
パッと見どう開くかわかない。引っ張ってみたり押してみたりスライドさせようとしてみたり...。
(わからん!)
下からは早く開けてと期待の籠った視線を感じるし。
(ちょっとくらい壊れても良いか!よし、俺のパワーで!)
フギー!っと両手で挟み込むように圧力をかけるも・・・開かない。
(もう、ハンマー使うか?)
と思い始めていると、ふと箱を持っている手がじんわり暖かくなっていくのが感じられた。
最初は気のせいかなと思ったけど徐々に熱を帯びてきてだんだん熱くなってきた。
さらには黒い箱がさらに黒く染まって光始めた所で、
「うおぉっ!?」
思わず箱を落としてしまった。
確かに落とした筈なのに一切音がしなかった。する筈も無い。
何故なら床から10㎝くらいの所で止まっている、というより浮いているといった表現が正しいか。
まずいっ!本能的な第六感というべきなのか、そういう何かがとっさに危険だと脳を刺激する。
そう思ったのも一瞬ですでに箱は俺としょうまの間に浮かんでおりさらに光が強くなった。
とっさにしょうまを抱きかかえて部屋の中に駆け込もうと顔を上げると、その視線の先に驚愕の顔に染まったはるとゆかりの顔が目に映っていた。
後ろの箱がどうなっているのかわかない。
でも二人の表情を見れば只事では事は確かだ。折り畳んだ両足としょうまを抱きかかえた両腕に瞬時に全力の力を入れて二人の所へ走り出そうとした、その時、
すべての視界が黒く染まった。。。。
浮遊感。
まるでスカイダイビングでもしているかのような感覚。
両目は開いているはずなのに開いているか自信がなくなるくらい視界は暗黒。
自分がどこを向いているかもわかない。
唯一安心させられるのは両腕に伝わる温もり。微かな甘い匂い。
しょうまっ!?
声が出ているのかもわからない。
しょうまっ!?
伝わっているのかもわかない。
必死で叫ぶ。
温もりは感じるけど、無事なのか?ゆかりは?はるは?
だんだん不安が恐怖となり、恐怖から絶望へと変わっていく。
どのくらいの時間が経ったのだろう。
だんだんと意識が遠のき始めた頃、目の前が薄っすらを白を帯びてきた。
思わず手を伸ばす。そこに誰かいるのか?何かあるのか?
誰かいるなら、助けてくれ…
遠ざかっていく意識の中必死で手を伸ばす。それに答えてくれたかはわかないが徐々に白が広がり始めた。
やがて眩いばかりの白に包まれて……
俺の意識は完全に途絶えた。
・・・・・・
・・・
土と草の香り。
風の音。
瞼の向こう側から光りが差している。
そんな人間としての様々な感覚に刺激され、曖昧だった意識が覚醒してくる。
重たい瞳を強引に開いていく。
そして目に入ってきたは・・・
「・・・・・・空?」
綺麗な晴天だった。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
いろいろとご都合主義です。どうかご理解下さい。
藤沢家の名前は全て平仮名です。読みづらいかもしれませんがご了承下さい。
別視点からではカタカナになっています。
投稿は不定期ですが温かい目で見守ってくれると助かります。
では、次回もお楽しみに。