中華屋の神業
町に新しく中華料理店ができた。
この料理店のメニューがなかなか変わっていて、天津飯とチャーハンの2種類しかないのだ。
しかしチャーハンはパラパラ、天津飯はとろとろでこれがまた随分旨い。
しかしこの店は味以外の理由で大盛況だった。
それは一人で切り盛りする大将の調理時間が抜群に速いのだ。
ネギを切るにも鍋を振るにも唯一無二のスピード。
どんな店よりも早く提供して、全ての客を満足させた。
よほどの情熱がないとできない技だ。
そんなことで店の噂は出版界にも広がり、ある日雑誌の取材を受けることになった。
「どんな思いがあってこのような速いパフォーマンスができるんですか?」
記者に聞かれた大将は堂々とこう答えた。
「働くのが嫌いだから早く帰りたいだけだ。」
家に帰ってだらける事だけを思って、今日も大将はせっせと鍋を振る。