第九話:買い物
俺がドアを開けると同時に隣の部屋のドアも開いた。
「「あっ」」
二人の漏れ出た声が重なってしまった。
「タイミングちょうどよかったね!」
「そうだな」
この何とも言えない雰囲気に流されず会話を続けた七海を褒めたい。
「そうだな…スーパーって言っても色々あるけどどこ行くつもりなんだ?」
「私はいつも近くのスーパーに行っちゃうんだけど」
近くのスーパーって色々あるが、適当でいいかだけ聞いてみるか
「近くならどこでもいいか?」
「うん!どこでもいいよ」
「じゃあ、俺がよく行くところで」
買い物袋に財布を入れ、ポケットにはスマホを入れ、それ以外は特に何も持っていないがこれで十分だろう。
改めて確認を終え、スタスタと歩きだすと、七海が斜め後ろをついてくる。
すると、少しあった緊張は無くなり、普段のように雑談を交わしていることに気付く。
学校のこと、季節や気温のこと、面白い動画のこと
話題は尽きることがなく、次から次へと言葉が飛び出てくる。
まだ夏の夕方ほど明るくはないが、赤い夕陽が差しており、危ないと思えるほど暗くはなかった。
雑談をしているだけでも時間が過ぎるのは早いもので、見覚えのあるスーパーの目の前まで来ていた。
「さっちゃんはここのスーパーに来てるんだ」
「品揃えも悪くないしそこまで遠くないからな」
「私の行ってるスーパーは真逆の方向にあるんだよね」
反対方向で尚且つ同じ程度の距離というと1つしか思い浮かばなかったので、そのスーパーに行っているんだろうと勝手に想像をする。
「何作るとか決めてるのか?」
「適当にカレーとかでいいかな?」
「いいと思うぞ」
野菜のコーナーから順番に巡るつもりらしく、ニンジンや玉ねぎを籠に入れていると、
「ななな?」
「ん?暮葉ちゃん?」
クラスの女子とばったりと出会ってしまった。
幸い七海と特に仲が良い女友達で、俺も少し会話をしたことがある人物でよかった。
彼女の名前は菊池暮葉
綺麗な顔立ちをしており、クラス内外問わず、いろいろな人間から告白なりを受けている。所謂美少女というやつだった。
そんな人間がクラスで俺と一緒に喋って問題ないかって?
大丈夫だ 問題ない
なぜなら基本的に佳ちゃんがそばにいてくれるため、暮葉さんといくら話そうが友達としか思われない。
七海からも、俺は幼馴染という情報は入っていると思うので、変な勘違いはされないと思うが…