第六十八話:逃げるが勝ち
頭が追い付かないまま手を引かれて走った。
白く輝いた髪を靡かせている少女に手を引かれて走った。
どこに行くともわからないまま走り続けた。
「はぁ…はぁ…ここまで来れば場所を特定できないでしょう」
流石に疲れたのかスピードを落とし、肩で息をしながら暁ちゃんはそう言った。
「話するって…言ってたでしょ」
「そうでしたね。とりあえずはあの人たちのことを話しましょうか」
「うん、お願い」
「別に大したことじゃないんですけどね…いつものやつですよ」
「そっか…」
「でも、ラケットはまた新しいの買えばいいだけなので気にしないでください」
暁ちゃんは儚げにそう呟く。
「練習試合でも、抜けだしたりしたから何かあるんでしょうか?罰みたいなのが」
「あるかもね。でも、私も一緒だから」
「…ありがとうございます」
* * *
「おはようございます。暮葉さん」
次の日、学校で授業の準備をしていると暁ちゃんに声をかけられた。
「うん、おはよう」
「そういえば、今日の放課後に部活で呼ばれたましたよ」
「…行きたくないなぁ」
「私も少し…逃げたい気分です」
「ですが」と暁ちゃんは話を続ける。
「逃げて嬉しい気分になったのは初めてです」
「退部とかになるのかな?」
「私はそれでも構いませんけどね。テニスをやる理由が無くなったので」
昨日の消え入りそうな笑顔ではなく、ハッキリとした綺麗な笑顔を私に見せてくれた。
「よし、行こっか」
「はい」
放課後、私たちは覚悟を決め部室の扉を開けた。
「…ごめん」
扉を開けた瞬間、中にいた一人の少女が私たちに向かって謝罪をしてきた。
顧問の先生から処分を言い渡されると思っていたのだが…
「私が悪かった。私がやったことって虐めだよね…」
頭を下げたまま謝罪を繰り返す彼女を横目に、私は暁ちゃんの方を向いた。
暁ちゃんは、覚悟は決まってますとでも言わんばかりの顔をしていた。
「私は大丈夫です。ですから気にしないでください」
優しい声色でそう言うと、彼女はトボトボと部室を後にした。
「なんだったんでしょうか?」
「ねー。私は顧問に話をされるとばかり思ってたんだけど」
「というか、私たちをここに呼んだのって先生ではありませんでしたっけ?」
「はい、私があなたたちを呼びました。間違いありません」
ドアがガチャリと開き、顧問の先生が私たちの話を聞いていたように会話を続けた。
「私は長い話が好きではないので簡潔に話しますよ」
「「お願いします」」
「さっき話をした子がラケットを隠していたことが分かったのであなた達に非はありません」
「でも、私たちは練習試合を抜け出してきたんですよ?」
暁ちゃんが私のしようとしていた質問を代わりにしてくれた。
「あぁそれも問題ない。彼女たちに全て試合をやらせたからな」
「全部って…結構試合あったと思うのですが」
「それくらいしないと根性ないやつは成長しないだろうし、ちょうどいいだろう」
「ありがとうございます」
「私は感謝されるようなことなんて特に何もしてないんだがな」
「それでもです」
どうもLrmyです。
最近は甘めのカフェオレにハマっています。
カフェイン中毒とかには気を付けたいですね。
皆さんも、栄養とかには気を付けてくださいね。健康は最高の財産なので。
ではでは~