第六十七話:大丈夫
『相談事か、何があった?』
私のおじいちゃんの声が手に持った携帯から聞こえてくる。
「えっと、友達のことなんだけど…」
『ふむ』
「その友達が困ってそうな顔をしてるんだけど、何があったか教えてくれないの」
『そうかそうか、それは”友達だからこそ”言えないことなのかもしれないな』
「それってどんなことだと思う?」
『…そうじゃな、心配されたくないとかじゃないか?』
「心配されたくない、かぁ…」
『その子が暮葉のことを困らせたくないと思っているんだったら、傍にいるだけでも力になれるもんだぞ』
「ありがとう、おじいちゃん」
『気にすんな、また困ったことがあったら連絡くれよ』
おじいちゃんとの電話で少しわかったことがある。
それは、暁ちゃんが”また”何かをされたということだ。
傍にいるだけで力になれるって言われたけど、それじゃあ薄情だよね…
* * *
「あっ!暁ちゃん、どうしたの?試合もう始まるよね?」
試合が終わったのか、暮葉さんが私の所へ歩み寄ってきた。
「えっと…ラケットを忘れてしまって」
下に視線を外し、暮葉さんにそう言った。
「じゃあ私の使っていいよ。感覚が違うかもしれないけど」
そう言い、手に持っていたラケットを私の方へ差し出す。
「早くしないと始まっちゃうよ!ほら、頑張って!」
私が困惑していると、無理やり押し付けるように私にラケットを握らせ、背中を押してくれた。
「…行ってきます」
「頑張って!」
私は振り返ることなく、対戦相手の元へ向かった。
* * *
「ふぅ…」
大体の見当はついている。
暁ちゃんは昔からしっかりした子だったから、ラケットを忘れてくるなんてことも、無くしたなんて事も無いだろう。
私はとある人物の元へ向かった。
「~でさー」
「ちょっといいかな?」
同じ部活の同級生に私は声をかけた。
「ん?何?」
「ラケット、返してくれる?」
「なんのことー?」
その子は恍けた顔をしてこっちを見ており、後ろでさっきまで話をしていた子たちは笑っていた。
「私、話が通じない人は嫌いなんだけど」
「何その言い方?まるで私がバカみたいな言い方して」
少し煽るように言葉を零すと、その子はまんまと挑発に乗ってくれた。
「あれ?頭悪くなかったっけ?まぁさっきのことも覚えてないみたいだし、順位だって…」
「はぁ?ちょっと頭いいからってそんなこと言っていいと思ってる訳?」
「事実を述べてるだけだけど?というか、早く暁ちゃんのラケット返して欲しいんだけど」
「うっざ、ねぇみんなどう思う?」
その子は後ろにいた取り巻き達に同意を求めた。
「やめてください!」
その子たちがケラケラと笑っているのをイラつきを抑えながら見ていると、はぁはぁと息を切らしながら白髪の少女が走ってきてそう叫んだ。
「暮葉さん、少し話をしませんか?」
そう言った瞬間、私の手を引き学校の門を潜った。
どうもLrmyです。
暮葉視点と暁視点、過去と現在をこまめに書いているので、わかりずらい所があるかもしれませんね。
敢えてそうしているので変えるつもりはありませんけど。
特に書くことないので後書きはここまで!
ではでは~