第四十六話:翳り
俺は小学校と中学校ともに友達が少なかった。
人に嫌がられることをした覚えは無いし、原因らしきものを見つけてはその度に改善していった。
しかし、友達は一向に増えないどころか、嫌われるようになっていった。
理由はよくわかっていない。
媚びている姿がムカつくとか、目障りだとかいう言葉を散々投げかけられた。
親に転校したいと頼んでも全く聞き入れてくれなかった。
殴られたりすることは無かったが、しだいに下駄箱を覗くと上履きが突如消えていたり、教科書に落書きをされたりということが増えていった。
でも、それを先生に言う勇気が持てなかった。
人間は星の数ほどいる。一期一会をいう言葉があるように、運がなかったと思うことしかできなかった。
中学3年生に学年が上がった時、俺の周りは大きく変わっていった。
大きく変わったと言っても、徐々に徐々に虐めが少なくなっていった。
最初は分からなかったが、今年に同じクラスになった『桐生旭』という人物が原因らしい。
そいつは俺のことを忌み嫌っている奴らを一人一人探し当て、そして止めるように言って回ったそうだ。
本人から聞いたわけではないが、幼馴染である『菜月七海』という人物から教えてもらった。
俺は、自分にも他人にも甘かったのかもしれない。
変わろうとして行動できなかった俺とは違い、旭は自分のことでもないのに自ら行動をして、勝手に、そして知らず知らずのうちに俺のことを救っていった。
そんな奴と話をしてみたくなった。
俺には勿体ないくらいのヒーローを、俺の友人にしてみたかった。
そこにはもう、嫌われる恐怖なんて感情は一欠片無かった。
「君、旭君だよね?」
「そうだが?どうした?」
「俺と友達になってくれないか?」
「友達って言われてなるもんじゃないだろ?俺はお前のことをもう友達だと思ってるぜ。雅」
その言葉で俺の心は溢れた。
俺のような人間にも優しく手を差し伸べてくれる人がいるなんて、正直思ってもいなかった。
時は経ち、俺たちは高校生になった。
俺は旭と同じ高校へ進んだ。
しかし、運命の女神は俺を照らしてくれはしなかった。
旭とは違うクラスになり、また虐めを受けるようになった。
今度は昔と違い、先生に相談をした。
だが先生も対応はしてくれなかった。
『一人になれる場所があった方がいいだろう』と訳の分からないことを言い、俺に屋上の鍵を渡してきた。
遠回しに自殺でもしろと言っているようにしか聞こえなかった。
それからというもの、部活内でも揶揄われるようなことを言われたりすることが増えてきた。
いつしか、部活に行くのもやめていた。
毎日夜まで屋上に籠って、星や月を眺め心を落ち着けていた。
俺もあの星々の様に煌びやかに輝ける存在になれたら…
さらに時が経ち、いつしか星や月が陰り見えなくなった時、ようやく俺は太陽へと手を伸ばした。
どうもLrmyです。
なんだか久しぶりのシリアス回ですね。
えっ?この会話がシリアスじゃないって?
後書きにそんなの求めないでください。
シリアス回はなんだかんだ書きやすいので、増えると思います。(作者の想像が追い付けば)
これにて後書きを〆ます。ではでは~