第三十三話:再戦!
料理を全てトレーに載せて、七海のもとへ運ぶ。
まだ七海はゲーム選びに悩んでいるようだった。
「うーん…」
こちらに気付く様子もなく、かなり真剣に選んでいる。
「おーい七海!先に夕飯食べてから一緒にゲーム決めようぜ」
「そうするー」
テクテクという擬音が一番合いそうな歩き方で、こちらに近づいてコテンと座り込む。
「「いただきます」」
前と同じように二人同時に同じ言葉を発し、両手を合わせ、箸を動かし始める。
「良さそうなゲームは見つかったか?」
そう問いただすと七海は、
「絞れてはいるんだけど…」
全く決まっていないというわけではなく、候補があって迷っているという感じらしい。
「んっ!これ美味しい!」
春巻きを口に入れた七海がそう言った。
「そうか?それなら良かった」
昔からあまり料理をしていなかったが、一人暮らしを始めて料理について勉強した甲斐があったというものだ。
自分で作っといて言うのもなんだが、春巻きをご飯の上に載せて少し醬油をたらし食べるとご飯が進む。
七海より一足先に食べ終えてしまったため「お粗末様でした」と言い、先にゲームをするときのツマミとしてお菓子でも用意するとしよう。
コントローラーが汚れないようにチップス的なものやチョコレートは控え、グミや一口サイズの果物を用意した。
それでもアルコールで濡れたティッシュは用意しておくが。
七海が料理を食べ終えたのか、「ごちそうさまでした」と遠くの方で言っていた。
自分の家で客人に食器を洗わせるのも悪いと思い、七海のもとへ駆け寄って食器を奪い取る。
「ゲーム何にするか迷ってるんだろ、先に決めててくれ」
七海も物分かりがいいので、戻ってゲームのカセットをいじり始める。
「ふぅ…」
洗い物を終え、ゲームを決めているはずの七海のもとへ行くと
1つだけゲームが出ており、そのほかは全て片付けられていた。やりたいゲームを決めたのだろう。
「さっちゃん!これにするー」
ス〇ッチのカセットはファ〇コンのカセットとは違いとても小さく、近づかなければ種類を認識できないのだが、どのゲームで勝負するか決まったようだった。
「ふぅん…」
近付いて見て見るとそれはレースゲームだった。
ふっふっふ、何を隠そうこの俺はレースゲームが一番得意なのだ!
先週、佳ちゃんと一番張り合えたのもそのゲームだったし今度こそ負けないだろう!
至って平然としながらゲームを開始する。
結果はまたしても惨敗だった…