第三十話:いつものお礼
「おはよー」
そう挨拶をして教室に入り、自分の席に向かうとよく知った人が俺の席に立っていた。
「あっ、おはよ!さっちゃん!」
「あぁおはよう」
何か用があるのだろうか?
「昨日のことなんだけど…」
昨日のことというと、看病したことか?
…もしかしたら無許可で泊まったことについてか!?
昨日は何事もなかったかのように家に帰してもらったけど、相手は年頃の女の子なのだ、全く気にしないなんて事も無いだろう。
「色々ありがとう!」
えっ…それだけ?
「昨日勝手に家に泊まったことについては何もないのか?」
「私のためにしてくれたことに文句なんかつけるわけないでしょ」
「そこまで考えてくれたことも含めてありがとうって言ったの!」
「なら…良かった」
特にお咎めとかはないみたいで安心した。
それどころか褒め倒された、そこまで大したことはしていないんだが。
「それと…これ、昨日のお礼」
そう言って何か入った袋のようなものを渡してくる。
「これは…?」
「チョコレート!さっちゃん甘いもの好きでしょ!」
「好きだけど…いいのか?」
「いいの!なんなら足りないくらい感謝してるんだから!またちゃんとお礼させてね!」
ほぼ強制的にチョコレートの入った袋を俺に押し付けた七海は「バイバーイ」と言って自分の席に戻って行った。
「なんやそれ?」
七海が自分の席に戻った直後、佳ちゃんが俺の持っている物に興味を示してたのか、そんなことを聞いてきた。
「チョコレートだと。昨日のお礼って七海がくれたんだよ」
「お礼ねぇ…昨日なんかあったんか?」
「風邪で休んでただろ?だから看病をしに行ったんだ」
「まぁ幼馴染だし、家近いし、あり得ん話でもないか」
なんか納得してもらえたみたいだ。
「それより変なことになんなかったんか?高校生の男女が同じ家で二人きりって…」
「ねぇよ、ほんとに看病しただけだ」
「旭ならそうやろなぁ…」
なんだ人のことをチキンみたいに言いやがって、相手は病人だぞ。
七海が自分の席について準備してると暮葉さんと話しているのが聞こえる。
『心配したよ~』
『連絡来てるの見て元気貰えたよ!ありがとう!』
やはり暮葉さんは優しいな。
友達のことを思いやれている。
遠くから聞いているだけだったが、いい友達を持ったと我ながら思った。
「なぁ旭、昨日七海ちゃんの看病してるって言ったよな?」
「言ったが?」
急に話しかけてきてどうしたのだろう?
「2限目の現代文で宿題出てるぞ」
「あっ!」
完全に忘れていた…
1時限目にコッソリやって何とか終わらせました。