第二十話:ヒーロー
この話を見る前に、短編の『未来の君へ』を見ておくことをお勧めします。
「はぁ…はぁ…危なかったな」
「うん、でもまだ映画始まってないよ!」
映画館に入り見たい映画の上映している番号のドアをくぐり、巨大なスクリーンの張ってある部屋にたどり着いた時、そのスクリーンには注意喚起の映像が流れていた。
顔がカメラになっている人物とポップコーンになっている人物、それとパトランプがついてる人物の三人が、映画を見る際のルールやマナーについて教えてくれていた。
この映像が流れているということはすぐに映画が始まるということだろう。
なんでこんなギリギリに映画館についてしまったのか?
それはゲームセンターを出てゆっくり歩いて映画館に向かっていたという理由もないことはないけど、それよりもポップコーンを買うのに時間がかかってしまった。
長蛇の列をまったりとしたペースで進んでいると、気が付いた時には上演時間ギリギリになってしまっていた。
少し早足で予約した席に移動し音を出さないようにゆっくりと座る。
スマホを取り出し電源を切り映画を見る準備が整った。
隣に座ったさっちゃんにもアイコンタクトでスマホの電源を切るように伝える。
すると慌てたようにスマホを取り出し電源を切り私に向かってにっこりと微笑んできた。
教えてくれてありがとうの意と電源切ったという報告の2つの意味で微笑んだのだろう。
少しだけ明るかった部屋から完全に明かりがなくなった後、再度スクリーンに映像が映し出される。
選んだ映画はテレビでの広告を毎日のように見たり、SNSなどでもかなり反響がある恋愛物の映画であった。
さっちゃんも『気にはなっていたが見ていない』と言っていたし、私自身もかなり気になっていたのでこの映画を見ようということになった。
最初にとある男女が河川敷のようなところに腰掛け、川に映った盈月を臨んでおり、未来について会話しているシーンから始まった。
男女は高校生という設定らしく、心の中で『私とさっちゃんみたいな感じなのかな?』と勝手な妄想をする。
隣を向くとさっちゃんは完全に映画に集中していたので、私もスクリーンに視線を戻す。
男の格好はとても暖かそうなものだったので、時期は冬あたりだろうと分かる。
2人は学校に入学した際に出会い、すぐに意気投合していった。
仲睦まじく生活をしていく二人だったが、少年が一人で出かけているときにとあることが起こる。
舞台がある程度都会だったため高いビルなどが建っているのだが、工事中に鉄骨を止めていた紐が突然ちぎれ、かなりの速さで鉄骨が高度を下げる。
真下には何も気づいていない小学生くらいの女の子が歩いており、少年は考える前に走り出す。
女の子を飛ばすことで代わりに少年が鉄骨の下敷きになったのか、映像が暗転し部屋が真っ暗になる。
次の瞬間、白い天井しか見えていないというシーンに切り替わる。
少年がいた場所は病院だった。
近くにいた人が救急車を呼んですぐに運ばれたらしい。
目の前には鉄骨が衝突しないように突き飛ばした女の子が保護者らしい人と一緒にいる。
女の子自ら感謝をしに来たらしい。
『ありがとうお兄ちゃん』
と年頃らしい感謝をもらう。
念のために名前を聞くとその女の子は少年のよく知っている名前を口にした。
保護者の方からも色々感謝やら謝罪やらを聞いた後、『またお見舞いに来ます』と言い病室を出ていく。
その直後、少年のよく知っている少女が姿を現す。
少女は『あれは昔の私で、助けられたことをきっかけに好きになった。数年後に出来上がったタイムマシンに乗ってこの時代に来た。』という旨の言葉を口にした。
それから未来に還るまでの数少ない時間を使って、思い出を作る。
最後に少女が冒頭のシーンと同じように河川敷に腰掛け会話をしている。
伏線に近いものだったのだろう。
少女は最後の言葉として『ありがとう、私のヒーロー』と言って光に包まれ透けていき、未来に還り少年が空を見上げるシーンで映画は終わってしまった。
どうもLrmyです。
今回で映画の内容を書ききりたかったので、かなり長めとなってしまいました。
読みづらいと思ったら意見をくださると幸いです。
ではでは~