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殿のご自慢  作者: あしゅ
15/93

殿のご自慢 15

八島の殿がついに到着した。

 

当然、高雄が真っ先に呼ばれる。

部屋に入ると、奥に八島の殿が鎮座し

両脇にズラリと家臣たちが並び座っている。

これは八島家の、いつもの会議風景。

 

だが今日は、“会議” というより

高雄の吊るし上げに近い様相を呈していた。

何せ、一太刀も交えなかったどころか

敵の姫をさらって休戦しているのであるから。

 

 

「大殿、お待ちいたしておりました。」

高雄は居並ぶ重臣たちにも臆する事なく、堂々と頭を下げた。

 

「うむ。 遅れて、すまなんだな。

 色々と立て込んでおったのでな。」

 

 

白々しい事をサラリと言ってのける、この八島の殿は

小さな領地に大きな野心を持って生まれた。


その手腕で、次々と周辺諸国を取り込んでいき

いまや天下も、その射程範囲に入っている。

東の山城家と似たような成り立ちであった。

 

 

この世で一番身分が高い帝は、都から出て来ない。

いくさと混乱の世での身分の差は、いともたやすく引っくり返される。

“天上人” として、傍観を決め込むのが

帝としては、最大の防御だという事であろう。

 

現に、いくつもの歴史ある大名家が

新興大名家の下に付く、という事態になっている。

 

そのせいで、“天下” の大名たちには

一番争いをし、勝ち残った者が帝にお墨付きを貰え

それが “天下統一” だという、暗黙の了解が出来上がっていた。

 

 

「して、わしはそちに 『勝て』 と命じておったはずじゃが

 なにゆえに “休戦” とやらになっておるのだ?」

この、もって回った言い方にも、高雄は動じず。

 

「この地どころか、龍田家をも取り込む策を講じている最中にございます。」

重臣たちがどよめく。

「千早どの、どういう事なのだ?」

 

「龍田の姫と伊吹が恋仲にございます。」

 

 

「龍田の姫? ああ、捕らえられているという娘か。

 千早どのにしては卑怯な手を使う、と、いぶかしんでおったが

 そういう事情があったのか。」

 

「しかし龍田の姫といえば、帝の血を引く娘。

 孤児の伊吹とは結ばれるはずもないであろうに。」

 

口々に思う事を言う家臣たちを制止し、八島の殿が言う。

「のお、高雄よ。

 わしはそちが勝算のない事はせぬ男だと、知っておるぞ。

 わざわざそのような事をせずとも、楽に勝てる相手に

 何を企んでおる?」

 

「無血勝利と・・・」

高雄の表情は、半分怒っているように見える。

「・・・・・・・伊吹の想いを叶えてやりたいのでございます。」

 

 

八島の殿は、はっはっはっ と笑った。

「どうやら、そっちの方が本命らしいのお。」

 

その言葉に、ガッと顔を上げ膝をズズッと乗り出して叫ぶ高雄。

「しかし八島家の不利になるような算段は、決していたしませぬ!」

 

「わかっておる、わかっておるぞ、そちの真面目さは。」

憮然とする高雄に、八島の殿が訊く。

 

 

「で、向こうの反応はいかに?

 まさか、何の動きもしておらぬ、とは言わぬであろうな?

 高雄よ。」

 

 


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