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神殺しの観測者  作者: たにぐち陽光
9/12

第七  育成のルーティン

 だいぶ育成のルーティンが決まってきた。


 まだ赤ん坊なので、視界もかすみ気味で自身で動くこともままならない。やっと最近左右への寝返りが出来るようになってきたが、この辺りはオート機能で勝手にやってくれる部分なのでとりあえず任せてある。

 このオート機能がけっこう優れもので、細かく動作を設定することも出来れば、“のんびり”とか“ちょっと頑張る”といったアバウトな設定も出来るので色々試している最中だ。

 赤ちゃんの運動を一から全て指示するなんて考えたくもないから、便利で何よりである。


 そんなわけで今、僕が邁進してるのは一日一回の魔法練習だ。


 まずは周辺マップで母親の黄色の光以外近くに誰もいないことを確認する。

 これも前回練習していたら、急に右下の周辺マップに青色の光が集まってきて結構な騒ぎになることが分かってからの処置だ。


 あの時は本当に大変だった。

 話し声は聞こえるんだけど会話の内容が全く理解出来ず、それでいてぼんやりとした赤子の視界に映る人の数がどんどん増えていったんだ。

 次々にこちらを覗き込む姿から、赤ん坊の僕が注目の的になっていることが伺えた。タイミング的に魔法が起点だったので、おそらく誰かに魔法を使っているところを見られたんだろう。

 大挙して来ていた青色の光はその日のうちに撤収していったが、周辺マップにはしばらくの間、白色の光が残り続けたので監視されていたのは間違いない。

 ようやく平穏が戻ったのは1週間後の事だった。


 そんなわけで周辺マップの確認は必須事項である。たまに母親に連れられて自宅以外の場所だったこともあるしね。

 一緒に行った場所は当然マッピングされてメインマップに表示が残るんだけど、気になるのは商店街とか公園とかに全く行ってないことだ。自宅周辺と城を行き来するのみで、フェルシナの町に何があるのか全然分からない状態が続いている。

 自宅警備員の僕としては、普段、買い物に行く途中で、赤ちゃんを連れて買い物しているお母さんや公園で一緒に遊んでいるお母さんを良く見かけるので、この移動経路はなんとなく奇妙に感じてしまうんだけど、この世界ではこれが普通なのかもしれない。

 まあ、突然魔法を使い始めて周囲の注目を集めたら困るとか思われているのかもしれないけどね。


 話がそれた。


 周辺に母親以外居ないことが分かったら、次は能力(ステータス)の確認である。


 【魔力】と【精神力】の数値から、どの魔法が適正か吟味する。これが一日一回の魔法練習で最も重要なことだ。

 当然、自宅で行うのだから周囲に迷惑を掛けるわけにはいかない。それでいて、同じ魔法を繰り返していると【魔法制御力】の数値がどんどん上がって消費する【精神力】が少なくなるから注意が必要だ。

 【精神力】を使い切るくらいの魔法じゃないと【魔力】が増えないってのも厄介なんだよね。


 それだけ【魔力】を上げるのは大変なんだけれど、面倒でもちゃんと考えて上げておかないと後々後悔するのだけは間違いない。

 なにしろ魔法にはそれぞれ【必要魔力】が定められており、【魔力】の数値が達していない場合、その魔法を使うことが出来ないからだ。


 例外があるとすれば【魔法レベル】と瞑想スキルだ。


 魔法には系統があって、例えば水滴魔法(ウォータードロップ)水塊魔法(ウォーターマス)は水属性に分類される。

 水属性を繰り返し使うと能力(ステータス)の【魔法】欄に水属性のレベルが表示されるようになり【必要魔力】の数値が下がる。これは水属性であれば全て共通だ。つまり水属性の【魔法レベル】を上げれば水属性の高ランク魔法も【必要魔力】が下がって使えるようになる。

 まあ当然と言えば当然だ。ラノベとかでも、水系統が得意なモブキャラはその属性に限っては高ランク魔法が使えるけど、他系統は苦手でほとんど使えなかったりするしね。対して魔力の高い賢者キャラはどんな系統でも簡単に使いこなし、さらにモブキャラが使えないようなもっと上位の魔法さえ操れたりすると。

 これだけでも【魔力】がいかに大切か分かるんだけど、話を戻そう。


 もう一つが瞑想である。

 瞑想を検証した結果、おそらくだけど自身の【魔力】を二倍程度に増幅するスキルだってことが分かってきた。そうじゃないと瞑想スキルによって使える魔法が増える理由に説明がつかない。


 ただ、デメリットも大きい。


 まずは精神力枯渇(マインドダウン)

 これは単純に【必要魔力】の大きい魔法は必然的に【必要精神力】も大きいからだと思うけど、それでも精神力がゼロになると赤子の状態が軽症に変化するほどなので注意しなければならない。

 後遺症とか、下手したら死んじゃうかもしれないしね。

 もう一つがこっちの僕の精神力を消費()()()しまうことだ。

 これはメリットという考え方も出来るけど、正直、赤ん坊の能力(ステータス)上げはこっちの僕が気絶してまでやることじゃない。それに赤子が軽症になるくらいだ。僕だって何か問題が起きてる可能性もある。

 こっちの僕の能力(ステータス)が分かればギリギリで調整することも出来るんだろうけど、リスクを考えると使用を躊躇してしまう。

 精神力枯渇(マインドダウン)した後の【魔力】の上がり方が半端ないってのがまた悩ましいところなんだよね。

 とりあえず赤ん坊がもう少し成長したら、ちょうど精神力枯渇(マインドダウン)になる程度までは攻めてみようと思っている。



 というわけで、今日使うのは清浄魔法(クリーンマジック)だ。



 魔法名:【清浄魔法(クリーンマジック)

 必要魔力:【45】

 必要精神力:【15】

 魔法制御力:【5】

 範囲:【2】

 威力:【2】

 カルマ:【四属性】【風属性】



 もう何度か使っている清浄魔法(クリーンマジック)だったが、あまり【魔法制御力】が伸びない魔法なので重宝している。【必要精神力】から考えると二回使うことが出来るはずだ。

 自分の周りの空気を綺麗にしてくれる魔法だが、赤ちゃんのいる部屋だし有用かなと思って多用している。


 そんな感じで魔法を使ったら倍率を上げて翌日に、というのがここ最近のルーティンだ。

 単純作業の繰り返しのようだが、意外と日々能力(ステータス)が違うので注意が必要だったりする。魔法を使った後、熟睡して初めて能力(ステータス)が上がるからね。

 たまに、何もしてないのになぜか精神力が減ってて、びっくりした時もあった。オート機能で任せてるので、もしかすると勝手に魔法を発動してたりするのかもしれない。

 今の所大事になってないのでとりあえずは静観しているけど、今後は細かく設定することも検討中だ。これからどんどん大きくなると、いろいろ出来ることが増えそうだしね。




 ―――



 そんな日々を繰り返しているうちに年が明け、季節は廻り、再び春がやって来る頃には、自分で起き上がってハイハイ出来るようになっていた。

 だいぶ視界もクリアになり、部屋の中の様子くらいなら何となく分かるようになっている。

 何より母親であるスンナの顔がようやくハッキリ分かるようになったのが嬉しい。


 スンナはとても凛々しい顔立ちの人だった。

 そんな綺麗な人の笑顔がモニターいっぱいに映し出されたら、今までの僕だったらきっとドギマギして冷静じゃいられなかっただろう。

 だけど、その瞳にずっと見つめられていたのに、僕はなぜか不思議と落ち着いていられた。

 知らないうちに心まで赤ん坊と同化してしまったのだろうか?

 よく分からないけれど、とにかくその笑顔を見ていたら安心して自然と笑みが零れている自分がいたのだった。

次回は8月中に更新予定です。


もう一つの拙作、「竜たちの讃歌」の直しに注力する為、さらにのんびり更新となってすみません。

気長にお待ち頂けると幸いです。

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