バンジージャンプで猿に転生。
見渡す限り猿、猿、猿。
動物園かここは?
さっきの流れだとまだ夢なんだよなこれ?
「猿になれー猿になれー」
あのお姉さん何だったんだろう?
まぁ夢は夢らしく・・・
「・い、・いてる・のか?」
「うるせーよ!こっち考え後してるんだよ!」
勢いよく振り返った。
「聞いてるのか?」
猿だった?
「は?何で猿が俺に話かけてるんだよ?」
「夢にしちゃクレイジーだろ。」
「夢?何言ってんだ?」
「お前が群れを出てくって言い出したんだろ?」
「は?何で俺が猿の群れを出てくんだ?」
「お前この前崖から落ちてからおかしいぞ?」
「でも雄に二言はないからな。」
「群れの規則に従い儀式は行ってもらう。」
「儀式は3日後、太陽が真上に来たときに執り行う。」
「え?ちょっ!待てよ!」
俺は遮った。
「群れを抜ける?儀式?何の事だ?」
目の前の猿は呆れたように言う。
「やはり頭を打ってるか・・・このままでいいのか老人達と話さないといけないかもな・・・」
猿は踵を返しながら言う。
「お前の処遇は一時預かる、明日に改めて話をしよう。」
状況は分からないけど、家に帰るように命令された。
ーどこに帰るんだ俺ー
猿は舌打ちしながらも付いて来いと先導してくれた。
開けた場所に大きな木が生えていた。
中央に窪みがあら、中に入ることができるようだ。
「ここがお前の部屋だ。」
「ありがとう、おっさんボス猿か?」
礼を言うと共に軽く情報収集。
ボス猿?はため息を付きながら言い放つ。
「お前がボス猿だろ。」
「えええええええええええええー!」
「うるせーよ!」
「だって!待って!猿って!まって!」
「猿ってあれだろ?覚えたら死ぬまでするって。」
「ねーよ!その辺に子猿いるだろ!親死ぬのかよ!」
なんか話通じてるし。
「もう今日は寝ろ!明日長老の所に行くぞ。」
「長老?まぁいいや、また明日な。」
こうして猿になった俺の1日が終わった。
ー翌朝ー
「起きなさい。起きなさい。私の可愛いボス猿や・・・。
今日はお前が始めてお山へ行く日だったでしょう。」
懐かしいフレーズで起こされる。
ん?あれ?何かおかしくない?
ボス猿?お山?
一気に目が覚めた!
「あら、起きたのね?おはよう。」
やはり猿。
どうやらメスのようだ。
何となく分かるだけで見分けは付かない。
「今日は長老の所へ行くんでしょ?」
「崖から落ちてからのあなたは様子が変だから心配・・・」
「群れを放れると言ったり、急に黙り込んだり。」
「遠くに行かないよね?」
急に抱きつかれたが相手は猿だ。
「あぁ、大丈夫だ。」
「まずは長老とやらのところにさっさと行ってくる。」
猿に抱きつかれても嬉しくないのでさっさと話を切り上げで出掛ける。
「よう、お前が遅れずに来るなんて珍しいな。」
昨日の猿か?
みんな同じにしか見えん。
「崖から落ちた時に頭打ってるよな?」
「かもな、あいにくその時のことは覚えてない」
「さらには、その前の事も全部覚えてない。」
ー覚えているのはあのバンジージャンプのこと、人間だった時のことー
「・・・しかしなんで猿何だろうな、ペンギンとか呑気なのがよかったな。」
つい独り言が出てしまった。
「さぁ、長老の家だ、入るぞ。」
俺の独り言は完全スルーで長老宅へ突撃隣の晩ご飯!
「よく来たなボス猿よ」
長老だけあってかなんかすごいオーラ感じるんだけど・・・
「お前が何故群れから離れたいのか理由は分からん。」
俺は何となく切り出してみる。
「あのー、それなんだけどさ。」
「ナシにする事できない?」
「なんと!!」
長老は驚いたようでバカでかい声を上げた。
死ぬなよ?
「お前が前言撤回するとは・・・何があった?」
「どうやら崖から落ちたらしいんだ。」
連れの猿が説明する。
「ふむ・・・それで変わり果てたということか・・・」
「しかし、群れの掟を作ったものが自ら掟を破ると申すか。」
長老は困っていた。
「儀式まであと2日、元に戻れば良いのだが・・・いや、戻ったら戻ったで群れを出て行くのか・・・」
どちらも得にはならないようだ。
ーどうすりゃいいんだ?ー
よし、仕切り直そう。
俺は声を出した。
「なぁ、ここの群れは俺のなんだろ?」
「掟も俺が作った。」
「だったら掟を改訂する!」
「群れは自由だ!」
「いや、群れという概念さえいらない!」
「俺たちは自由でいいんだ!」
どややぁ!と決め顔で叫んだ。
「いや、お前何言ってるんだ?」
長老は冷たく言葉を投げかける。
「え?だってここ俺の群れなんだろ?」
「掟は変えられない。」
長老は言い切る。
「何故?」
「何故ってお前がそうしたんじゃないか。」
「は?」
「お前は言った。」
ーいつか俺が群れを抜けると言い出すー
ーその後必ずそれを覆そうとするー
ー絶対に認めてはならないー
ー認めてしまうことは群れの絶滅を意味するー
「すまん、覚えてない。」
俺はキッパリ否定する。
「今のお前は信用ができない。」
「長老も冷たく言い放つ。」
「だったらどうすればいい!」
思わず語気が荒くなる。
「お前の勇気を改めて証明書してみせるが良い。」
「は?勇気?」
俺は鼻で笑う。
「はっ、愛と勇気だけが友達のこの俺に勇気?勇気を証明せよと申すか!はっ!」
「友達いないんだな・・・」
「うるせーよ!」
「で?どうやってその勇気とやらを証明すりゃいいんだ?」
「何、簡単な事だ、ある儀式を達成出来れば良い。」
ー儀式?お祈りとかあんなのか?ー
簡単そうだと判断した俺は二つ返事で答える。
「おう、儀式でもなんでもやったるわ。」
「で?何をすればいいんだ?」
「儀式名はバージーだ、これもお前が作ったものだぞ。」
「バージー?聞き覚えがあるようなないような・・・まぁいいや、さっさとやっちまおう。」
「ならば話が早い、群れの猿を全て集めてくれ。」
長老は連れの猿に告げた。
「承知!」
言葉と共に消え去った。
ー猿?・・・忍者だろあれ?ー
「儀式は夕刻執り行う。」
「準備を怠るなよ。」
長老の家を後にした。