バンジージャンプで転生する話。
遠くから声が聞こえる。
・・く・ろ・・・
よく聞こえない。
大丈夫だ、俺ならできる。
何故なら俺は愛してるから。
大丈夫だ、俺ならできる。
何度も困難を越えてきた俺ならできる。
この緊張感が堪らない。
不意に耳元で囁かれる。
「そ・そ・い・・・か?」
うまく聞き取れない。
遠くからの声も大きくなる。
「は・く・ろと・・」
「なんだよ!うるさいな!」
俺はキレ気味に返事をする。
後ろの人はこう返してきた。
「は?うるさい?いつまで待たせるんだよ!」
「早く飛べよ!」
「順番待ち増えてるぞ!」
係の人もこう告げる。
「そろそろいいですか?」
ここはとある遊園地にある高さ20メートルのバンジージャンプのお立ち台。
仲間との根性試しに来たんだけど・・・
「もういい加減飛べよ!」
「飛ばないなら帰れ!」
罵声が飛び交う。
覚悟を決めなければならない・・・
「飛びます!僕が飛びます!」
勢いを付けて飛んだ!
たかが20メートル、下にはクッションも用意されている。
事故の心配はない、
風が気持ちいい。
周りの景色は落下しているから見えない。
そろそろ終わりかな?
落下している感覚が長い。
ーおかしくないこれー
落下は止まらない。
ーまさか事故った?ー
でもクッションは?
落ちてる割に落ち着いている自分が格好いい。
誰か僕を見て!
ほらほら飛んでるよ!
プツンと意識が途切れた。
ーあれ?ここは?ー
意識が戻って周りを見ると遊園地では無かった。
夢か?落下で気を失って夢見てるのか?
何とか夢って見たことがある。
夢なのに意識があるとかなんとか。
これがそれなんだろうな。
そう飲み込んだら納得できた。
ーよし、夢の世界ならそれはそれで楽しもうー
で?ここはどこ?って俺の夢なんだからなんでもいいか。
可愛い女の子とイチャラブしようかなぁ。
勇者ってのも悪くないけど柄じゃない。
このまま起きなくてもいいや。
夢なら学校も試験もないからね♪
と、その時人の気配がする。
「猿か・・・何事か?」
一度言ってみたかったんだよねこれ。
「いや、誰に向かって猿と言ってるんだ?」
スラッとした美人さんが現れた。
「おやおや、これは失礼。」
「ホントに失礼ね!猿にしてやろうかしら!」
猿と言われたのが気にくわないらしい。
まぁでもこれは俺の夢だから気にしない。
よくよく見るとこのお姉さんなかなかスタイルが良い。
これは俺の夢、俺の夢。
欲望に任せて舐めるように見ていると。
「あのさ、さっきから非道いんだけど、これ夢じゃないからね。」
夢を否定する夢の住人。
そりゃそうだ、夢の中ではそこが現実なんだもの。
「やらしいこと考えないでね。」
「あなたの考えてること分かるから。」
そりゃそうだ、これは俺の夢だから。
とりあえずおっぱい揉んでみよう。
「やめなさい!」
お姉さんがキレた。
「大体なんでバンジージャンプで死ぬの?」
「ほんと有り得ないから・・・」
「あの子のせいだ・・・何で私が!私がー!」
なんか盛り上がってきてるけどちょっと待って。
死んだとか言ってなかった?
夢じゃないって言ってなかった?
「あぁ、もうめんどくさい!」
「適当なところに送っちゃおう!」
「猿になれー猿になれー。」
呪いのような言葉を受けているのは分かった。
問題はこの状況だ。
いつの間にか高台に立っている。
足にはロープ。
「バンジージャンプやらないか?」
なんて言われてない。
「ちょっとお姉さん・・・」
「猿になれー猿になれー。」
どーん!
有無を言わさず突き落とされて俺の意識は無くなった。