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ここはどこ? 3

「……なにこれ?」


 そこには、少し落ち窪んだ岩にスッポリと収まるようにして、謎の物体が鎮座していた。

 非常に透明で、太陽光が反射している様は一見そこに水溜りがあると勘違いしそうになるが、ソレが若干の膨らみを持っている事から固形物であると気付く。

 お尻で感じた感触からとても軟らかいモノであるみたいだけど、叩いた箇所に付着していない事から凝固はしている様だ。


 透明度は雲泥の差があるが、ソレをみて第一に思い浮かんだのは「浜に打ち上げられたクラゲみたい」だった。まぁ、海を感じる物など辺りに全くないので、クラゲではないのだろうけど。


 それにしても、押し潰してしまわなくてよかった。

 こんなよくわからない状況下で、よくわからない物体で衣服を汚すとか、気力が削がれるとか言うレベルではない。何もかもを放り投げたくなるわ。


「まったく、座りやすそうな岩の上にとんだ罠だわ」


 悪態を零しながら、傘の先端でゼリー物体を突いてみる。すると、プルンと軟らかそうに揺れるではないか。

 踏み潰しかけた時は硬めな感触だったが、なかなかどうして軟らかそうだ。

 その軟らかさに少し突き続けたくもなるが、それで傘が刺さって汚れるのもどうかと思い、先を引っ込めようとした時──。


 ──にゅるん。と、ゼリー物体が傘の先端に纏わりついた。


「へ?」


 予想外の出来事に驚き、間の抜けた声を上げる。

 いや、無理ない事でしょ。先端に引っ掛かって付いたとかじゃなく、明らかゼリー物体から動いたよ? ごく自然な感じにくるりと巻き付きましたよ?


「って! なんだこれ!?」


 正気に戻った私は声を上げて、傘を両手で持ち突きを放ったかのような格好をとった。ゼリー物体から、今できる最大限に距離が取れる構えだ。

 傘投げ捨てろよ、と変に冷静な声が頭の片隅に浮かんだが、自分の傘ではないという部分で無意識に切り捨てた選択だったのかもしれない。

 ともかく、そんな構えを決めた私は、先端に纏わり付いたゼリー物体を注視する。


 ゼリー物体は纏わりついた先端から動く気配はないが、傘を完全に持ち上げた状態でも重力に引っ張られない様子から、完全に引っ付いて──引っ付いて……ない。

 ジワジワと重力に負ける様に下膨れしていき、やがて力尽きたようにペシャンと地面に落下した。

 無言のまま、突いた構えのまま数秒固まる。先ほどの私の焦りはなんだったのだろうか。


 とりあえず、危機から脱出できた安心と遣る瀬無い呆れからのため息をついて構えを解く。

 でだ。先程のは一体なんだっのかと、落下して潰れたゼリー物体を見やる。


「うわっ、動いてるし……」


 落下した際に潰れたように見えたが、再び半球の形をとったゼリー物体はノロノロと岩陰に移動していた。どうやら動いた事は見間違えではなかったようだ。

 いやいやいや、まてまてまて。ゼリー状で動く物体って何だ。

 水生生物ならまだ「そんな生き物もいるんだー」って可能性がゼロじゃないかもしれないけど、ココ陸地。しかも近くに水場無し。


 ゼリー物体の正体が分からず、恐る恐る傘で再び突っついてみる。すると嫌がるように身をくねらせ、岩陰に隠れようとする動きを早めた。

 なんかごめんよ、と少しばかし罪悪感。


 しかし本当になんなのだろうか。非常に透明度が高く、今でさえも注視して太陽光の反射に気付かなければ見失いそうなゼリー体。いや、正確にはゼラチン質か? ともかく、その透明度で見落としていたけど、生物として必要そうな器官が何一つとして見つけられない。

 大きさは野球──いや、ソフトボールの半球ほど。動きは遅くて、全身ゼラチン質っぽく関節や軟骨といった行動制約は無さそう。そして中にそれらしい器官は無し。


「……なんなんだコイツ」


 意味の分からなさ加減に思わず傘で突きまくる。それに対し嫌々と身を震わせて、なんとか岩陰に逃げようとするゼリー物体。

 しかし、岩陰に逃げ切る前に力尽きたのか、半球の形をとっていたゼリー物体がびろーんと広がってしまった。


「ぁ、やば。どうしよ」


 私自身としては何もやばくはないのだけど、なんかよくわからないなりに生きていたモノを、なんかよくわからないまま殺してしまうのは気が引ける。

 とはいえどうしたものか。


「水を与えたら復活しないかな……」


 ゼリー物体はゼラチン質? ならクラゲと一緒? という事は水生かもしれないから水分でいいんじゃね? という適当理論である。

 まぁ、他に出来そうな事も無いので、カバンの中からスポーツドリンクを取り出す。

 ……水攻めで止めにならんといいけど。

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