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プロローグ

 踏み抜いた足の裏から伝わってくる確かな感触。そして今までの騒がしさが嘘の様に、静かに、それでいて確かな音が響き渡り静寂がおとずれた。それと同時に、身の内を焦がす様な気持ちも冷めていく。

 そんな静寂の中、私は溜め込んだ何かを吐き出す様に一度深く深呼吸をして、ソレから足を退ける。わざわざ確認する事もなくソレは息絶えていた。

 それも当然だ。首の骨を踏み砕かれて生きている生物など、普通は早々いない。そう、普通ならいないはずなのだ、普通ならば。


 緑色の体色に、子供の体格。手足は妙にやせ細り、その癖に腹が出ている。ここまでで既にアンバランスだというのに、それに拍車をかける様に大きな頭部。顔の各パーツが異様にでかく、耳は尖っており、頭部は禿げている。

 どう見ても、普通の生物ではなかった。日本──否、地球には存在しない生物だ。


 薄々は頭の中で理解していたけど、認めたく無かった。だが、コイツらに会った事がどうしようもない程に決定打になった。


「……もう、いないよね」


 緩慢な動きで辺りを見渡し、動いているモノがいないか、何か隠れていそうな気配は無いか確認をする。

 まぁ、確認をするも気配などわかる訳でもないし、正直な気持ちを言えば、わかった所でもう動きたくない。体力的な限界というより、精神的にもう一杯一杯だった。

 それでも辺りの安全を確認しつつ、右手にもった傘を引き摺ってのろのろと砂利道へと戻っていく。その途中でヤツらが持っていた錆び付いたナイフが目に留まるも、拾う事なくそのまま通り過ぎた。


 あんな錆びたナイフでどうしろというのか。そもそもあのナイフがあれば大丈夫などと、安心して慢心したりしてしまえば、私が返り討ちにしたコイツらと同じではないか。

 もっと本音を言うなら、刃物を使ったりなんかして流血とか見たくない。刺すとか切るとか、感触が体にこびり付いて忘れなくなりそうで嫌だ。


「何言ってんだが……」


 ナイフを見て浮かんだ気持ちに、思わず自分自身で鼻で笑ってしまった。もう既に、体にはこびり付いて剥がれない感触が残ってしまっているというのに。


 砂利道に戻ってきた私は、道外れにあるのとは別の2体に目を向ける。砂利道に身を横たえている2体とも、その首は本来ではありえない方向に歪んでいた。

 2体とも、私がやった事だ。右手に持っている傘で、私が、叩き折った。


 ゆっくりと空を見上げる。とても澄んだ綺麗な青空だ。雲一つ無いとは言えないが、悪天候になりそうな気配はまったく無いと言える程には晴天だ。

 そんな晴天を見上げながら、私はその場にへたり込んだ。


「なにしてんだろ……私……」


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